9月9日(水)シアターコクーン18:30開演の

「NINAGAWA マクベス」を観に行きました。
上演時間は2時間45分

(1部:80分 休憩:20分 2部:65分)






演出:蜷川幸雄
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:小田島雄志



<出演&配役>



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公演プログラムは1800円。


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35年も前から上演されているとの事でしたが、今回が初見でした。

劇場内に入ると、舞台が仏壇になっており、鐘が鳴ると

上手、下手、それぞれの客席通路から腰の曲がった老婆が

荷物を背負って登場。両サイドから舞台に上がり、真っ黒で

巨大な扉を開け、その後舞台の隅に座り、何かを食べ始めました。

海外公演では、老婆を観た観客が、一般客だと思い込み、

舞台に上がろうとする老婆を抑え込むというアクシデントがあったとか…

この老婆は、一幕半ばには食後に粉薬まで飲んでいた。

二幕では折り紙らしきものを折ったりと不思議で怪しげな光景だった。

苦手苦手と言いながらもいろいろな演出の「マクベス」を見ましたが、

これほどインパクトの強い「マクベス」は初めてでした。

紗幕ごしに見る満開の桜の花と桜吹雪が、身震いするほど美しく、

この世のものとは思えず、仏壇を隔てて、現世からあの世を

眺めているような不思議な感覚を覚えました。



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今まで「マクベス」というと遠い異国の地の物語、という感じで

観ていましたが、舞台設定は安土桃山時代。

衣裳もセットも和風で、名前だけが「マクベス」の

登場人物をそのまま使用。歌舞伎の要素も入っていて、

途中からこれがシェイクスピアだという事を忘れてしまいました。

魔女は巫女、マクベスの手下は忍者。赤と黒のコントラストが

印象的。キャストの豪華な衣装の数々が、

漆黒の闇のような仏壇セットに映えて美しかった。

橋本さとしさんは前回観たのが「十二夜」で、大爆笑の

役どころだったので、今回全くの別人で新鮮だった。

めちゃくちゃ通る美声をもっと聴きたかったのにバンクォー

一幕で殺されてしまうから残念だった。でも橋本さとしさん、

プログラム中で「亡霊役にあこがれていた」、とコメントしていました。

亡霊役でもいいから台詞が聞きたかったな~






鋼太郎さんのマクダフ、妻子を殺されたと聞いて、

マクベスへの怒りが爆発して、取り乱していましたが、

やがて膝から崩れ落ち、守ってあげられなかったと、

額を床につけ嗚咽。もらい泣きした (TωT)

マクベスとの対決シーンも迫力のある立ち回りだった。

田中裕子さんのマクベス夫人が、手についた赤いシミの

妄想にとらわれて、何度も手をぬぐうシーンが

妙に色気があり、日舞を踊っているように優雅だった。

舞台に映し出される血塗られたような毒々しい真っ赤な月が

終演後も脳裏に焼き付いてしばらく離れませんでした。





バーナムの森は、桜の木でした。

緑の森という固定観念にとらわれていましたが、

桜の森もありなんだ、と気づかされる。優雅で美しい森。

戦いが始まるというよりは、お花見が始まるかのよう。

マクベス夫人が亡くなったと聞いて、夫人が着ていた着物を

抱きしめて悲しむマクベスに、夫人への深い愛を感じて

マクベスが良い人に見えてしまいました。

一人で討伐軍に立ち向かうマクベスは、亡霊に

おびえていた姿が想像できないくらい凛々しくて

何かがのりうつっているかのように神がかっていた。

市村さんのマクベスは、なんだか憎めなくて

親しみやすいマクベスでした。






マクダフに倒されたあと、胎児のように丸くなり、

最後の時を迎えたマクベス。安らかな顔だった。

要所要所で流れるお経や、合唱、そして大きな月に

仏壇効果も加わって脳がプチ催眠状態になってしまったのか…

老婆がゆっくりと仏壇の扉を閉めるシーンを見て

急に我に返り、現実に引き戻された。

幽玄の美と、重厚な演技が素晴らしかった。

今回17年ぶりの再演との事。観に行けて良かった。