2月22日(土)パルコ劇場18時開演の

「国民の映画」を観に行きました。

ネタバレがありますので、これから観に行かれる方は

お気を付け下さい。





<タイムテーブル>




作・演出 : 三谷幸喜
出  演 : 小日向文世 段田安則 渡辺徹 吉田羊
        シルビア・グラブ 新妻聖子 今井朋彦 小林隆
        平岳大 秋元才加 小林勝也 風間杜夫

<配役>


■ナチス高官
宣伝大臣 ヨゼフ・ゲッベルズ‥‥小日向文世
親衛隊隊長 ハインリヒ・ヒムラー‥‥段田安則
空軍元帥 ヘルマン・ゲーリング‥‥渡辺徹
ゲッベルスの妻 マグダ・ゲッベルズ‥‥吉田羊 
ゲッベルスの従僕 フリッツ ‥‥小林隆


■映画人たち
ナチスと手を結んだ男エミール・ヤニングス 映画監督:風間杜夫
ナチスと敵対した男 グスタフ・グリュントゲンス演出家・俳優:小林勝也
ナチスに恐れられた男エーリヒ・ケストナー 国民的作家:今井朋彦 
ナチスに嫌われた男 グスタフ・フレーリヒ 二枚目俳優:平岳大   
ナチスに利用された女ツァラ・レアンダー 大女優:シルビア・グラブ
ナチスに愛された女レニ・リーフェンシュタール若き女性監督:新妻聖子  
ナチスを利用した女エルザ・フェーゼンマイヤー 新進女優:秋元才加




<あらすじ>


舞台は1940年代のドイツ・ベルリン。ヒトラー内閣が

プロパガンダの為に作った宣伝省の初代大臣ヨゼフ・ゲッベルズ。

彼はすべての芸術とメディアを監視検閲する権利を与えられていた。

ある日ゲッベルズは映画関係者たちを呼んでホーム・パーティを開く。

パーティにやってきた映画人たちの前でゲッベルズは彼らを招いた

本当の理由を発表する。彼は最高のスタッフとキャストを使い、

自分の理想の映画を作ろうと考えていたのだ。

全ドイツ国民が誇れる映画、「国民の映画」を。
ナチス高官たちと映画人たち、彼らが一堂に介したその夜、

虚飾と陰謀に満ちた、狂乱の一夜が始まろうとしていた…。


公演プログラムは1500円。






ナチスドイツや、政治的弾圧等という内容なので、

身構えて行ったら、笑えるところがたくさんあった。

設定は、小日向文世さん演じる宣伝大臣、

ヨゼフ・ゲッベルズの邸宅の一室で繰り広げられる話。

ゲッベルズ邸で働く執事は架空の人物で、

若手女優エルザはリザというモデルとなった女性がいた

という以外は全員実在の人物との事。





親衛隊隊長、ハインリヒ・ヒムラー役の段田安則さんの鼻の下の

チョビ髭がおかしかった。登場シーンが玄関からでなく、

部屋の奥からだし、猫舌で、出された飲み物をいつまでたっても

飲めないし、映画関係者が集まるパーティーなのに、

一人だけ全く映画に興味がなく、空気の読めないコメントを連発。

「たいこたたいて笛ふいて」の警察官、山崎一さんと同じように

周りにけむたがられるが、何を言いわれても職務を遂行。

映画の撮り方レクチャーでは、映画の主人公役をやらされ、

ゲスト達に注目され、その気になってしまうところが面白かった。





大女優役のシルビアグラブさんは本当にお綺麗。

ものすごいハイテンションで、「パーティーの主賓は

後から登場するものでしょ」と言って、せっかく来たのに、

寒い中わざわざ外で時間をつぶしてから、再登場(笑)

シルビアさんを見ていて「サンセット大通り」の

ノーマ役を見たいと思った。ジョーは柿澤勇人。

強気のシルビアさんが、ジョーに夢中になって

気弱になっていく様子、そして次第にジゴロっぽくになっていく

かっきーが見ごたえありそうなんだけどな~…

と舞台を見ながら勝手にキャスティング妄想 (´∀`)





ナチスと敵対した男、グスタフ・グリュントゲンス役の小林勝也さん、

暖炉の前に座って暖まっていたら、コートに火がついて煙モクモク。

代わりに出してくれたコートがムーランルージュみたいな

薄いワイン色の派手なコートだった (≧▽≦)

新人女優役の秋元才加さんの、ゲッベルズへの近づき方が

あからさま。ドレスの裾をめくっての色仕掛けがかわいかった。

女性監督が男装の麗人のようにカッコ良くて、新妻聖子さんだと

気づくまで時間がかかった。新妻さんは、シルビアさんとデュエットする

シーンがあったけれど、歌がもっと聴きたかった。





渡辺徹さん、カーネルサンダースみたいな体格ですが、

あれは何か詰め物をしているのでしょうか?

小さいステッキを持ちながら、ディナー会場に行き、出てきたら、

ステッキの代わりがフランスパンになっていて笑った。

二枚目俳優の平岳大さん、映画の撮り方のレクチャーシーンでは、

座るときに関節がポキッと鳴り、音声に入るからと監督に怒られる。

お前何歳なんだ?とつっこまれ、年齢をサバ読みしていた事がバレる。

その後のシーンでも、動くたびに関節の効果音が入って大爆笑。





小日向文世さんて、私の中ではあまり笑わない役者さんという

イメージなのですが、今回も、無表情でたんたんと話していましたが、

映画の話をするときに見せる笑顔が本当に嬉しそうに見えた。

「国民の映画」についての持論を展開する場面では、

あまりの説得力に、キャストと共に拍手しそうになってしまった。

ゲッベルスの従僕、フリッツ役の小林隆さん、良かった~

立ち居振る舞いや、言葉遣い、お客さんへの配慮といい、

こんな執事がいたら最高だろうな、と思った。





フリッツがユダヤ人という事がばれて、連行される前夜、

ゲッベルズと親衛隊隊長、ヒムラーが話すユダヤ人抹殺計画。

「新しいガスの開発により、1時間で2000人を処理出来るようになる」

と言い、二人で喜び合う。何度も「処理」という言葉が出てきて、

聞くのがつらかった。その場にいた、パーティーの参加者達も、

「人間のする事じゃない。狂気の沙汰だ」と

「国民の映画」への参加を断り次々と屋敷を後にする。

女性監督、レ二だけが残るが、ゲッベルズに

「お前だけでは作れない」と言われ、出て行く。

部屋にはフリッツとゲッベルズだけが残る。

最後に二人で、室内に映し出された映画を観終わると、

フリッツが、出演者達のその後を語るストーリーテラーとなる。

「私は、2000人の仲間と共にガス室で死にました」

というのを聞いて、悲しくてやりきれなくなった。

各キャストの晩年の様子、没年齢の説明と共に、

それぞれのキャストが階段に並ぶラストシーンは、

映画のエンドロールを見ているようで、余韻が残るエンディング。





舞台「たいこたたいて笛ふいて」でも思ったけれど、

戦争の真っただ中にあっても、何が正しくて、何が間違っているか、

頭では分かってはいても、自分の身のかわいさから

流されるままになり、なかなか反論出来ない事も多いが、

そんな中でも正義をつらぬける人ってすごいな、と思う。

よく信念を曲げる位なら、死んだ方がマシと言って、

投獄されても、監禁されても、拷問されても

メッセージを発信し続ける人もいるけれど、私には出来そうにない。

戦争が人を変える、というけれど、そうではなくて、

戦争という狂気の中に置かれると、その人の持っている

本質が浮き彫りになるだけなのでは、と思った。

自分だったら、どんな行動をとるのだろうか…と自問自答した一日だった