⑤ゴーストが人を殺すと塵になる設定

原作にはないミュージカルオリジナル。

フローが絶望したら殺すとグレイはいうけれど、それは自分が塵になることと同義になってしまうのですけど…

この設定を加えた意図が私にはわかりませんでした。

デオンがフローを殺すための理由として設定した(「華々しく散りたい」)とXで考察されている方がいましたが、そのためなのであれば原作デオンとミュージカルデオンとは性質の違う存在なのだとあらためて感じました(後述します)。

 

⑥「芝居が観たい」が「芝居を書きたい」へ

ラスト、二人の別れの場面でのグレイの台詞が「まだ観たい芝居があるから」から「芝居を書きたいから」に変更に。

これで観客たちはグレイが書いたフローの人生の芝居を観ているという二重構造が出来上がるわけで、舞台のつくりとしてはわかりやすいのかなとは思いました。

 

ただ、グレイは書き手というより演者(になることに喜びを感じている)という思いはあり。

「我ら役者は影法師〜」だし。

文盲でもないですし(原作では若様から文字を教わっており、その若様に裏切られたことがグレイの大きな傷になっている)。

「戦争が終わったら口述筆記します」というフローの台詞にも、戦争が終わっても病人はずっと存在するからあなたに口述筆記する時間はなくてよ?とか思っていました。

ことごとく改変に文句を言う厄介ファンで申し訳ない…

ミュージカルはミュージカルとして楽しんだのも本当です…

 

⑦デオン・ド・ボーモンのキャラクターについて

男とも女ともしれない美貌の剣士。

実在の人物がモデルです。

スパイでもあったので時に応じて必要な性別になれるイメージ。

これがミュージカルにおいては本来女性だったけれど、男性としてふるまうことを強要されてきた生い立ちに変わっていまして。

自分の性にコンプレックスをかかえているという。

 

美貌かつ生前は地位も名誉もあり、剣士である自分にプライドがある。

少々退屈しており、強い相手を求めている。

快楽殺人的。

ホールについているのも殺したい奴が大勢いて趣味に合うから。

コンプレックスというより、すべてを見下している感じ。

 

最期はグレイと相打ちで塵になるのですが、その際原作でのグレイとのやりとりが粋でいいのです。

デオンを女性にしたものだからそのやりとりがなくなってしまいまして。

美貌の剣士ということで、女優さんが演じることになるんだろうなとは思ってましたけど(当初デオンが真瀬さんかと思ってました)、看板女優のお二方でしたね。

隣の席のお客様が明らかにデオン 岡村さんのファンで、拍手の熱量が違いました。

第一声から美しく強いキャラクターであることが伝わってさすがだなぁと。

かっこよかっただけに、そのコンプレックスいる?という気持ちはいまだにあります。

昨今の問題意識をとりいれましたよ!みたいな感じが私はあまり好きではないです。

キャラは思想とは離れて自由であってほしいので。

 

⑧フィッツジェラルドの変節

ジョン・ホールの部下で漫画においては最期までフローに敵対する人物ですが、ミュージカルでは最後はホールからフローを逃がそうとしてくれました。

そもそも登場からしてコメディー要員のような雰囲気があって、声もフィッツジェラルドのイメージじゃないのだが…と思ってたので変節には納得しました。

フローの味方になる人が削られてたから彼がその部分をになったのだろうと。

原作では彼の存在がフローのホール許すまじと思う気持ちを決定づけるところがあるので残念といえば残念ですけど、登場人物の人数をしぼるならそうなるかなと。

 

まだまだ続きます。