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猫と 散歩と 少しのパンさえあれば


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わたしは 生きていける。


















わたしは

気になっていることを訊いてみた。


「絹本さんはどうして

 このような保護猫ちゃんの活動、

 お仲人さんを始められたのですか?」


「あたし?、、」


山口氏も


「そう言えば

 お絹さんってあまり、、


 うーうん、全然といっていい位

 自分のことは話さないわよねぇ?、、」


渡辺さんは

またクッキーを手に取り

袋を破りながら


「お絹さんと付き合い始めて

 かれこれ4、5年経つけどさー、

 はなしはいつも猫中心だったから、、


 あたしも是非訊きたいわー、、」


「わたしも知りたいです、、


 絹本さんのその活動のパワーは

 どこから湧いてくるんですか?、、」


青柳さんが真剣な表情で

問いかけると

突然絹本さんは

口の中のキャンディを

ギャリギャリと噛み砕いて飲み込んだ。


柔和な表情のままなので

そんな問いかけに対して

なにか

気を悪くしたわけでもないらしいが、


少しばかり

気もちの切り替えでも

必要だったのだろうか、、




その時、なぜだかわからないが

わたしの脳裏には

古ぼけた焦げ茶色の和ダンスが

浮かんできた。


それは実家の一階の奥の部屋にあり、

母が嫁入り道具として持って来た

和ダンスだった。


そして

その和ダンスのいくつかの引き出しのうち

わたしはもちろんのこと、

母も滅多に開けることのない

引き出しが一段だけあり、

それは下から二段目だったと

記憶している。


引き出しの中には

子供心に特別に見える物が

入っていて、


上品な刺繍のついた

大人が使うようなハンカチーフや

タオル類、ブランド品のスカーフなどが

丁寧にたたまれた状態で

美しく収められていた。


わたしの知る限り、母は

そのような類を買う人ではなかったので

たぶん、どれもが頂き物だったに違いない。


確かわたしが中学生になって

はじめての修学旅行に行く

前日の夕方だったと思う。


パートから帰宅した母と二人で

その引き出しを開けて

かわいらしいハンカチや

フワフワとした新しいタオルを

取り出した思い出がある。


引き出しの中から

ハンカチやタオルを選び出しながら

やっと自分の成長を認めてもらえたような

そんな気分になったのを覚えている。


それらは決して全てが新品ではなく

ただの「普段使わないタオル」という物も

混じっていた。


その為

修学旅行から帰ってくると

その引き出しから出してきた物は

きれいに洗って、またその場所へ

戻されるのであった。


そのせいなのか、

その引き出しには

ワクワクとした感情を持ったものの

特に親しみを感じることはなく、

今なぜそんなことを思い出したのだろう、、

 

10年以上も前のことなど、

いや、きのうのことでさえも

特に必要でもなければ

何のキッカケでもなければ、


きっとわたし達は

思い出すことなんてないのだろう。


母との会話にすら出てくることのない

引き出しを想いながら

わたしはアイスティーで喉を潤した。


いつかまた、あの引き出しを

思い出す時はくるのだろうか、、


それとも

きょうを最後に

たいていの過去の記憶や思い出のように、

そっと消えてしまったり

その消えたことすら気づかずに

わたしは生きていくのだろうか、、


記憶や思い出を選別することすらできない

わたし達は


「一生忘れない」


などと言ってはみるものの

実際にそうであるかどうかは

別なものに違いない。


「好きなものに囲まれて生きていきたい」


と願うように


「好きな思い出に囲まれていたい」


などどいうものは、

よほどの進化、脳の進化でもない限り

不可能なのかも知れない。


わたしの脳であるにもかかわらず、

わたしにはそれをコントロールする術が

ないことに気づくと、


わたしはわたしである

にもかかわらず、


やはり

わたしはわたしの身体を

ただ借りているだけなのだと

改めて思い知るしかなかった。





「その神社のツツジ、、


 ひどく曇っていたせいなのかも

 知れないけど

 ツツジの色もくすんでいてね、、


 なんだか知らないけれど

 身構えないでいいから

 ほっとしてたの、、」




じっと何かを考えていたのか、

少しの間を置いてから

絹本さんは唐突に話し出した。


その眼はどこか遠くを見ているようで、

口元からは

やけにハッキリとイチゴの香りが

漂ってくる。


絹本さんの話し方は

説明したり、誰かに聞いてもらう為

というよりは、


当時のその場所に

再び自分を

「はめ込もうとしている」

かのように見えた。








つづく




ここまでお読みいただき

ありがとうございます



ペコリ

↑おじきです




この話は順不同にでるとおもいます

ご了承いただけますと幸いでふ

*文と写真の時期は一致しておりません




ときどき、、、

もしかすると

しょっちゅう文を変えることが

あるかも知れません、、

お眼めに、お気に、癇にさわるようでしたら

すみません💦