☆☆▽☆▽▽▽☆▽▽☆☆▽▽☆☆☆☆


猫と 散歩と 少しのパンさえあれば


☆☆▽☆▽▽▽☆▽▽☆☆▽▽☆☆☆☆







わたしは 生きていける。














照れた笑顔で左肩を上げると

そこに顎をのせるようにして

言いながら

山口氏は絹本さんを見つめた。


「ハハッ、あたしの方が

 お礼を言いたいわ、、


 ただ声をかけただけなのに

 信じてついて来てくれたんだからね、、


 おまけにアジちゃんと

 仲良く暮らしてくれているなんて、、


 あたしからしたら

 感謝しかないわね、、」


「ある意味

 猫のお仲人さんだ、絹本さんは、、

 アハハハッ、、」


部屋中に響く声で豪快に笑いながら

渡辺さんが言った。


すると

青柳さんと殆ど話さない磯崎さんが

怪訝な顔で


「おなこうどさん?、、」


「おなこうどさんって、なんですか?」


と言ったので、わたしも


「何かで耳にしたことが

 あったかも知れませんが、、

 確か結婚に関してですよね?、、」


「エーッ⁈

 あんたたち

 “お仲人”を知らないのぉ!?」


またもや渡辺さんの大声が響き 


「はい、聞いたことないです、、」


「ワタシも、、」


「あんまり、、って言うよりも

 よくは知らないです、、」


「へぇー、おっどろいたぁー、、


 そっかぁ、、

 今の若い人は知らないんだぁ、

 お仲人さん、、


 そっかぁ、そうなんだぁ、、」


山口氏も驚いた表情を見せたものの

落ち着いた声で


「そうよねぇ、、


 今の時代だと

 知らなくても当然よねぇ、、


 人と人よりも、わたしもそうだけど 

 SNSの時代でしょう?、、」


「もしかしたら

 なにかを仲裁する人ですか?、、」


青柳さんの問いに

渡辺さんは相変わらず豪快に笑いながら


「アハハハッ、仲裁ね、、


 別に

 もめてる人を相手にしてないからさー、、


 簡単にいうと仲人って


 結婚するふたりやその家同士を

 とりもつ人のことなんだけどさー、、」


そこまで言った時

山口氏が割って入り


「でもねえ、、


 今どきわたし達、

 わたし達って言っていいのかしら?、、


 クフッ、わたし達庶民は

 家同士の結婚はないわよねぇ、、」


渡辺さんも大きく頷きながら


「それにさー、

 今じゃ芸能人も紙切れ一枚の結婚が

 多いじゃない?、、」


「たしかに、、」


「地味ですよね、、」


「アタシが思うにさぁ、、


 あとで別れたりいろいろあっても

 お互いに嫌な思い出に

 ならないためかも知れないよ?、、」


絹本さんが

小さなキャンディの包みを手に取ると

それを開けながら


「そうねぇ、、


 橋渡しや仲立ちに

 似ているかも知れないね、

 あたしのやっていることは、、


 それこそ

 山口くんの代理店じゃないけど、、


 斡旋とか保護猫云々って

 言われるよりも

 こっちの言い方のほうが 

 しっくりくるかな、、


 でもまぁ、あたしは何て呼ばれても

 うまくいってくれさえすれば

 嬉しいんだけど、、


 ただ保護猫云々はあたしには

 ちょっと重くて、、


 正直、

 自分の生活を一番だいじにしないと、、


 この子たち(7匹の猫)いるから

 倒れられない、、」



山口氏も優しく笑いながら


「うんうん、、

 自称でいいんじゃない?


 だってお絹さん、

 全くのボランティアで

 正真正銘の自腹で活動しているんだもの、

 好きに名乗って

 いいんじゃないかしら?、、」


すると絹本さんは感慨深げに


「それにしても仲人さんじゃなく 

 マッチングアプリの時代でしょう?


 時代と共にいろんな事が

 変わっていくんだねぇ、、」


「だいたいさぁー!


 マッチだか何だか知らないけどさぁー、

 新しいことばを作るなら

 日本語で作って欲しいわー、、


 いくら日本語のカタカナでも

 意味ワカランから、、」


わたし達はくすくす笑い、

絹本さんが


「なんでもかんでもカタカナが

 多いわね、、


 猫用品でもおんなじ、

 カタカナだらけ、、」


「ほーんと、、


 アタシなんて写真でも見なけりゃ

 なんのことだかわかんないよ、、」


そう言うと渡辺さんは

個装になっている小さなクッキーを

パクっと食べて、


「カタカナの商品名、多すぎだよ、、」


「きっと日本語で表現しにくいのかも

 知れませんね」


と、わたしが言うと


「だとしてもだよ?、、


 アタシみたいな人は

 ゴマンといる訳だからさー、、


 前なんて、フードボールってあるから

 米菓子みたいに丸めた食べ物かと

 思ったらさー、


 猫のエサいれじゃない⁈

 ややこしいったら、ありゃしない、、」


「ふふっ、、

 おにぎりはライスボールです、、


 渡辺さんの発音はたぶん

 “ボール”ではなくて

 “ボウル”だと思います、、」


と、青柳さんが

渡辺さんを気遣うように言ったのだが


「説明してもらって

 ありがたいんだけどさー、


 日本語しゃべってんのに

 ぜんぜんワカラン、、」


そう言うと

渡辺さんはケラケラと笑い

わたし達もつられて笑った。


「それにしても

 仲人を知らないって

 今はそんな時代なんだねぇ、、


 時代がそうさせちゃったのかなぁ、、」


感慨深げに絹本さんが言うと、

青柳さんが真面目な顔で

星型のペンダントをいじりながら


「時代がことばを

 作っていくのですね、きっと、、


 人が時代を作り、

 時代がことばを変化させていく、、」


「たしかにねぇ、、」 


「なるほど、、」


「うん、、」


「あー、なるほど、、」


わたしが大きく頷きながら


「言われてみれば 

 そうかもしれないですね、、」


青柳さんは


「なんだか大玉転がしをやっているのと

 同じ感覚になりませんか?、、」


「大玉転がし?、、」

「、、?、、」

「?」、、


「こう、、なんて言うか、、

 

 時代という大玉をわたし達が

 転がしていくような、、」


「あー、、」


「ぅん、ぅん、、」、、


「まぁさー、アタシは昔っから

 背が低かったからさぁ、

 大玉にさわったことなかったからさー、

 

 一体誰が転がしてたんだか

 なんだけどさー、アハハハッ、、」


「フフフッ、、」


「わたしもそう言えば

 触った記憶ないです!、、」


「フフッ、体育館に置かれていたのを

 休み時間とかに見かけて

 さわりませんでした?、、」


「した、した!、、ウフフッ、、」


「まぁさー、アタシは背が低くても

 横に場所はとってたけどさー、、


 今もだけど、アーッハッハッハ、、」


渡辺さんはそう言って

ゲラゲラと笑い、


ペットボトルのオレンジジュースを

ゴクゴク飲むと


「結局、あたしなんて 

 時代を動かすことにも

 関係してないけどさー、、」


「わたし達みんな

 時代に直接関係してないかも

 知れませんが、、


 でも確かなことは

 たぶん、、


 一人ひとりが

 猫の人生を変える力を持っていて、、


 もちろん

 まだまだ過渡期かも知れませんが、、」


この青柳さんの言ったことに

わたしも刺激されて


「明らかに路上から

 猫が減ってきていますよね、、


 おこがましいかも知れませんが

 そういう時代を作っているとも

 言えませんか?」


「たしかに、、」


「いいねぇ、その考え方、、」


「でもどこかで

 人知れず消えていく命も

 まだまだあるので、、


 助けてあげられるような法律が

 あれば、、


 もっとスピードアップがあれば、、」


「、、なかなかねぇ、、」


と、山口氏のため息と共に

沈黙が訪れた。


誰にも答えはわからず、

分かるわけもなく、、


わたし達が

しょげた空気に包まれていると


渡辺さんが


「ホントだよねー、

 SNSなんてのがあんのにさー、、


 そう言えば、お絹さんは

 やってないよね?

 SNSってのを、、」


「あっ!ホントですね、、」


「あれ?、、」

「?」

「?」、、


「みんな誰かしらのツテで?、、」


すると絹本さんは


「、、さっきも言ったけど

 じぶんの生活を一番にしたいから、、


 ホラ、あたしが倒れたら

 この子たち大変でしょう?、、


 無理して倒れちゃったら

 元も子もないから、、」


「そりゃそうだ、、」


「元気でいるのも

 立派なご奉仕よねえ、、」


「我が子ですから、、」


「ほんと、ほんと、、」


「、、でも昔は夢があってね、、


 大家族になって

 家族総出で猫たちの為にって、、


 フフッ、笑っちゃうよね、

 パートナーすら見つからないくせに、、」


「そんなことないわよぉー、

 世の男どもがばかなのよー!、、


 わたしはお絹さん好きだけど、、


 ごめんね、今は

 アジとかまぼこに夢中だから

 クフッ、、」


「そうそう、

 それは言いっこなしですよ、、」


「結婚イコール幸せでは

 ありませんから!、、」


「ゼッタイ違いますよー、

 だってわたし全く憧れてませんから!

 結婚に、、」


「結婚は不幸の始まりっていうことばを

 作れそうな時代ですからね、、」


「アハハハ、、ホント、

 いい事言うねー!

 結構まわりにいるよねー、

 結婚したから逆に揉めてる人たち、、


 それにしてもお絹さん、欲張りだー!


 人は見かけによらないってホントだ!

 アーッハッハッハ、、」


渡辺さんのことばに

正直、わたし達は救われ、

 

それは絹本さんも同じなのか

安心したように、


「あと、うーん、、


 、、卑怯かも知れないけど、

 もうなるべくドキドキしたくなくて、、」


「!?」

「、、?、、」

「⁇」

「どきどき?、、」、、


「、、うん、ドキドキ、、

 ときめきのドキドキじゃなくて、、


 あっ!

 心臓バクバクのほう、、」


「あー、そっちですか、、」


「たしかにそういう覚悟はいりますね、、」


「、、そうですね、残念ながら

 保護猫あるあるですね、、」


「哀しいけど

 保護した猫みんなが

 助かるわけではないですから、、」


「、、」

「、、、」

「、、、、」、、


「だからね、

 あたしほんとに尊敬しているの、、


 保護猫団体の方って

 保護する猫の数もすごいけど


 それだけたくさんの猫を

 保護したあとで、、


 たくさん、たくさん、たくさん、、


 悲しい、哀しい、かなしい、、


 だからアタシにはできないんだ、、

 悪いけど、、」


「なーんにもわるくないわよぉ、

 お絹さん、、」


「そーですよ、助けてるんですから、、」


「わたしなんて一匹でもたいへんで、、」


と、わたしがいうと


「とにかくみんな保護すればいいじゃなく

 保護猫団体に引き渡せばいいじゃなく

 そのあとのことを考えないと、、


 保護猫団体に任せて

 ハイッ、終わり!


 じゃなくて、、


 結局多頭飼育崩壊みたいに

 多頭保護猫崩壊になったら

 猫たちは悲惨な人生になるし

 助けている人たちだってゼッタイ

 傷ついちゃうから、、」


「それを考えると

 保護猫団体ってすごい!、、」


「すごすぎるし、命を助けてるんだから

 サポートして欲しいです、国に、、」


「あの人たちはさー、

 悲しみもどんだけあるか、、

 桁違いだよ、きっと、、」


「一匹でも辛いのに、、」


「毎日、毎日ですね、、」


「だから本当に

 残念なことかも知れないですが

 “産む”という事をなんとかしないと、、」


「となると、法整備です、、」


「政治家は動かないからなぁ、、


 利益が出ない事には

 反応鈍いですから、、」




つづく






ここまでお読みいただき

ありがとうございます



ペコリ

↑おじきです




この話は順不同にでるとおもいます

ご了承いただけますと幸いでふ

*文と写真の時期は一致しておりません


ときどき、

もしかすると

しょっちゅう文を変えることが

あるかも知れません、、

お耳、お眼、癇にさわるようでしたら

すみません💦