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駅前のカフェを入って右の中ほど

小さなまるいテーブル席に

二十歳前後の男女が

向かい合わせに座っている。


女性は赤いタートルネックセーターに

黒のタイトなスカート

黒のショートブーツ

胸元にシルバーのやや大きめなネックレス。


男性は毛玉が目立ち始めた茶色のセーター

同色のズボン

紺色のランニングシューズ。


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フミヤはカプチーノを飲みながら

ミカを見つめていた。


僕たちが別れの話をしているなんて

まわりの人は思わないんだろうなー、、


美しい花と書いてミカ、まさにその通りの

顔立ちのミカは壁を背に座り

テーブル越しに僕を見つめている。


ミカのような子が

なぜ僕と付き合ったのかは

とうとう別れの日、今この瞬間まで

分からずじまいだ。


信じられないことだが

僕がミカに別れを切り出している。


ミカは泣いたり驚くようすを見せず

僕への礼儀のためか

悲しそうな顔だけはしてくれているけど

きっとホッとしているのは

容易に想像できる。


僕たちはお世辞にもお似合いではない。


僕のルックスは普通かイマイチで中肉中背、

街を歩いていて異性に振り返られることは

まずない。


ミカは歩けば大抵の男がミカに目をやる。


そりゃそうだろう、

アイドルや女優になっても

十分にやっていける。


だがミカは親の後を継いで

医者まっしぐらだ。


ミカは全てのカードを持っている。


それに比べて

僕は一体何のカードを持っているのか、、


最初、お弁当の卵焼きのお詫びにといって

ミカが高級チョコレートを僕にくれた時

僕は正直困った、、


見に覚えがなかったからだ。

まったく気づいていなかった僕を

ミカはその時全力で笑った。


僕は笑えなかった、

あんなにもかわいい笑顔を見るのは

初めてだったからだ。


しかも僕だけのために

笑っているなんて、、


ミカはあの時はごめんねと言ったが

ごめんねもなにも僕は見ていなかったのだ。


たぶん僕はそのとき

家賃の工面のことで

頭がいっぱいだったのだ。


それとも横に置いてあった

ステンレスボトルのお湯で

インスタントコーヒーを

作っているときだったのかも知れなかった。


いずれにせよ僕は

ミカが僕のお弁当箱から

卵焼きをつまんで立ち去ったことに

気がつかなかった。


僕の仲の良い友人たちは

そういう僕だと分かってくれているが

大抵のひとはこんな僕を驚くだろう、、


でもこれが僕なのだ、、


ミカは半年前、

出会った頃は楽しげだったが

この頃はあくびをしたり

時には僕の横で居眠りをするようになった。


退屈なんだろうなー、

と思う、僕といても、、


ミカ、ごめんよ

そしてこんな僕にきょうまで

素敵な夢を見せてくれてありがとう。


そろそろ開放してあげるから

自由にしていいんだよ、ミカ、、


今の僕がミカにしてあげられる唯一の、、


贈り物。






つづく


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ここまで読んでいただき

ありがとうございます

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