妻ナナエの足取りは軽かった

その速さになんとかついて行きながら
ハヤトの方がヘロヘロになっている 

(14も歳が違うとこんなにも
差が出るのか、、



ハヤトの双子の娘たちは成長して、
気がつけば
来年から幼稚園の予定だ

ナナエの母親は
もうハヤト達と同居はしていないが、
ゴールデンウィークを利用して
ナナエの妹と二人で泊まりに来ている

ハヤトとナナエが二泊旅行のあいだ、
双子の娘たちと一緒に
留守番をしてくれる事になり、

ナナエはもちろんの事、
ハヤトも指折り数えながら
今日を迎えた

チェックイン前の旅館に
荷物を預けるや否や、
ハヤトはナナエを誘って
あの山に戻ってきた

途中までは人とすれ違ったが
奥に行くにつれて
なかなか行き交う人には
会うことがなくなっていった

やたらとエネルギッシュな歩き方をする
ナナエと
今週は仕事で帰宅の遅い日が多かった
ハヤトの進む速度に
少しずつ違いが出てくると
二人の間の距離が広がり始めた

当然、会話をする時は
二人とも
やや大声にならざるを得ない



やがて大きな木の根や、
石がゴロゴロとした道は終わり、

ハヤトの眼に
見覚えのある景色が
飛び込んできてくれる筈だ

蔦だらけの看板があり、
学校が見える筈だ

ハヤトの胸の高鳴りは
歩き続けているせいではなく、
いよいよ始まるという
興奮からだった

ナナエが振り向きながら
とびっきりの笑顔で、

「あそこを曲がったらだよねー?
ゴールーでしょー?
何があるのー?、、


ハヤトは

「ゴールだよー!
ハァ、ハァ、、でもまだ、、ハァ、ハァ、
地面を、ハァ、ハァ、、掘らなきゃ、、

「えー?
聞こえなーい、、
先に行くよー、、

そう言うとナナエは
足を早め、ハヤトを置き去りにして
カーブを曲がって行ってしまった

途端にナナエの叫び声が聞こえた

ハヤトは驚いて全速力で走りながら
カーブを曲がると

そこには、見渡す限り、
ひまわりが太陽の光を浴びながら
立ち並んでいた

どのひまわりも堂々としていて
ハヤトに向かって

「探せるものなら探してごらん、、

とでも言うように、
やけに強気で咲き誇っている

(ひまわり、ひまわり、ひまわり、、

蔦だらけの看板も
学校はもちろんのこと、
あの小さな桜の木も見当たらない

ハヤトはお手上げだった

その横で
感極まったナナエが涙ぐんでいる

「これだったのねー、
ハヤトが見せたいものがあるって、、

こんなの初めてだよー、
ハヤトー、ありがとー、、


喜びに浸っているナナエの横で
ハヤトは思わず
ヘナヘナと地面に座り込んでしまったが

ハヤトの口からは

「、、良かったのかも知れない、、


そんな言葉がこぼれた

 

胸に巣食っていた忌まわしいとも言える
自分の過去の行いを清めて、

もう一度やり直すチャンスを
もらった様になり

ハヤトは
気持ちが一気に軽くなったのを
認めざるを得なかった









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ありがとうございます
ペコリ、おじぎです、、(*´-`)