津での旅ランはホテルより護国神社・偕楽園公園・県立美術館をまわるコース。
県立美術館が徒歩で行ける程度の場所なのか、無理ならバスはあるのか、その本数は?などの下見を兼ねて。
坂道が多くて山梨並みにキツかったが、観光地らしく早朝からみんなが落ち葉掃きをしていてすがすがしいところを走らせていただいた。

開館5分前に無事に徒歩で三重県立美術館に到着。
私を津まで引っ張ってきた平櫛田中(ひらくし・でんちゅう)先生の作品にご対面。

田中については故郷岡山の井原市田中美術館のサイトがよくまとまっているので、下にリンク。(このリンクがうまくいかなくて、昨日3回も(今日も一度)書いたものが消えてしまったのだ)

田中について

http://www.city.ibara.okayama.jp/denchu_museum/about_denchu/about_denchu.html


田中こぼれ話

http://www.city.ibara.okayama.jp/denchu_museum/about_denchu/denchu_side_story.html

田中の作品 特に 「鏡獅子試作」「鏡獅子試作裸形」「鏡獅子試作頭」「烏有先生」「国技」は必見。

http://www.city.ibara.okayama.jp/denchu_museum/denchu_works/denchu_works.html

人形師に弟子入りして木彫を学び、岡倉天心・高村光雲の薫陶を受けた人。
仏像でなくて禅話の登場人物や仙人みたいな爺さんを多く作った人だけど、最後の仏師という風情の人だ。

力士・爺さん・笑う禅僧・名家のお婆さん・衣装を着けて踊る歌舞伎俳優。
今の彫刻界では全くお呼びがないような主題ばかり。
東洋の・日本の男(オヤジと爺さん)の品格・色気・神気を彫刻に出来た最初で最後の人だと思う。
上のサイトには見つからなかったけれど、引退した横綱が短髪・紋付き袴で立っているだけの彩色木像があったけど、圧倒的な品格だった。

リアルな具象彫刻ってね、基本キモチワルイもんなんだよ。
それが田中はかなりリアルな作風、時としてリアルな彩色までがなされるのに、まったく品が良い。
誰がお相撲さんをこんなに品よくキワモノでなく彫刻に出来るものか。
誰がパンツ一丁で踊りの稽古をしている太った歌舞伎役者の像をこんな美に再現できるのか。

この時代の人の品、や佇まいの力を想い、また貧しい車夫のジイサンをモデルにして高僧のような「烏有先生」を作ってしまう田中の、品の本質、存在の神気を感知する目と再現する能力に頭を垂れ感動して観て回りました。

午後にはお伊勢様に行かなければいけないので、あまりいつまでも居るわけにはいかないと自分のお尻を叩いて展示会場を出ようとしたときに、ふと「田中先生、またいつかどこかでお会いしましょう!!」と思ったら なんだか涙がポトポト出てきて困ってしまった。

出て美術館ロビーの映像で田中が「畢竟の大作」である「鏡獅子」をつくるまでのドキュメンタリーを流していて、それだけは見逃せなくて座って観た。
古いフィルムでモデルとなった六世尾上菊五郎の踊る鏡獅子も白黒の映像で出てきて、感慨深く見ていた。

美術館を出て、一息ついて駅で携帯でニュースサイトをチェックしたら 18世中村勘三郎の訃報が入っていた。
六世菊五郎の孫で、自身も鏡獅子を良く演じた役者さんだ。
何とも言えないせつない気持ちになった。

皆さんお待ちかねのお伊勢様レポは明日以降に。