さて、その後漢字の筆談やシンプルな英語やジェスチャーやネットの翻訳サイトを駆使してケン君・私・アリーナでケン君おすすめの配達のお弁当でお昼を食べる。
ケン君の英語力っていうのはその位いろいろ総動員しないとコミュニケーションができにくいレベルなのだ。
そもそもは「みんなでご飯を食べよう・ケンのおすすめのレストランがあったらみんなで行こう」だったのが紆余曲折を経てそうなったわけだが、私達3人はどうにかコミュニケーションがとれて大満足だった。
大満足ついでにアリーナが「キョウコ、ケンに『この荷物はいくらで送れますか?』って中国語で書いてもらって」と言う。
ちょっと時間があるし、アリーナは自分で荷物を郵便局まで出しに行ってみたいと思ったらしいのだ。
アリーナと2人、シンプル英語と漢字の筆談でなんとか伝えてみたら、「おおお~オケーオケー」とケン君はやおらネットで検索を始めた。
?????ノートに中国語を書けって言ってるんだけど??
どうやら変な伝わり方をしたようで、ケン君は必死に台湾からルーマニアまでの小包料金を調べているらしい。
「変なことになっちゃったけど、一生懸命調べてくれているから様子を見よう」ということになった。

私は作業に戻る、アリーナは困惑しつつケン君を見守る。
アリーナが我慢しきれなくなって「もういいから自分で郵便局に行く!」というので私が自分のパソコンで翻訳サイトを使って元々欲しかった中国語を調べてノートにでかでかと書いてアリーナに渡す。

そんなことをしていたらイヴァン登場。

何をやっているんだ、なんで君はポストオフィスに電話しないんだ、英語ができる奴だっているだろう、俺がケンに電話させる!!

やおらイヴァンはイヴァンのやり方でケン君にストレートな「命令」を下す。
「町の名前じゃなくて、こういう時大事なのはジップ・コードなんだ!ケン、ここのジップコードは何だ?名刺を出せ!よーし、後は箱のサイズだ!・・・・・」
正直、英語のあまりわからないケン君には「お願い」じゃなくて「命令」のがうまく伝わることがあるのも確かで、この場合はそうなってしまった。
イヴァンはケン君に伝わるように単純化して話しているから「命令」になるともいえるが、これがアリーナには前々から嫌でたまらない。
アリーナが不愉快そうな顔をしている横でイヴァンはどんどんケン君に命令して郵便局に電話を掛けさせて台湾からマイアミまでの小包料金を明確にしていく。

「アリーナ、君は石膏型をルーマニアじゃなくてフィラデルフィアに送るんだよな?ジップコードは解ってるのか?」
このあたりでアリーナがキレたらしく、凄い言い争いが始まった。(笑)

あまりにもすごい勢いと大きい声でのどなり合いだったので全部は把握できなかったけど、イヴァンが雷のような大声で「もうこの罵り合いは終わりにするんだ!君のやりたいようにやれっ!!」と叫んだところで、アリーナが出て行って罵り合い終了。
前に窯焚きのスケジュールでイヴァンが無理やりアリーナの窯を取ろうとした時よりも激しいどなり合いだった。
うひゃ~、横で聞いているこっちの身にもなってくれよ。

でも、今回ばかりはちょっとイヴァンが可哀想だった。
イヴァンは万事にそつがなくて手回しが良く、しかもできるだけ人を使って効率よく物事を進める。
アリーナはその場で出た所勝負で、他人とのやりとりや紆余曲折を楽しみながら自分で何とかしようとするタイプ。
アリーナは先日自分一人で基隆(チーロン)に小旅行に行って、ちょっと自信がついて自分でなんでもやってみたかった。
イヴァンはそんなまどろっこしい事しないで、俺がもっと簡単に解決してやる!と良い気持ちで助けたつもりだったのだ。
どっちも間違っちゃいないんだけど、こじれた。

あれ、これは。
朝にアリーナが私をウンザリさせた「求められていない好意」のバージョンアップ版を今度はアリーナが思いっきり経験しているではないか。
アリーナ、学んだ?それともただイヴァンを怒ってる??
そこは私には知りようもないけど、なんだかすごい学びの場に居合わせているような気だけは、した。


さらに続きますです。