朝日がさんさんと入る部屋なので毎朝5時には目が覚めてしまう。

今日は朝早くスタジオに入って地下の石膏室で自分の胸の型取りに挑戦したが、時間的に焦って結局失敗。
石膏室は普段イヴァンが占領していて、自分の半裸を見られること以前に私が、他人が石膏室にいるのを見るとあからさまに不機嫌そうな顔をするイヴァンを無駄に刺激したくなくて作業を焦って失敗したのだった。
自分の場所に帰って、スタジオに来たアリーナに型取り失敗の話をしたら真剣にむっとした声で「なぜ私に頼まないのだ?」と言われる。
その通り、アリーナは人体の石膏取りが専門の作家なのだ。

いつもひとりでやっていることだし、私の作品のことで忙しそうなアリーナにそんな半端なことを頼むのが気が引けたからなんだけど、
「二人でやればあっという間なのに」「キョーコが裸を見られるのが嫌ならしょうがないけど、なんで頼まないのだ」と説得されているうちに
そうか、半端なこと―簡単なこと・だからこそ頼んでも良かったのか、と気が付く。
「じゃあ喜んでお願いしちゃおう。」ニッコリ。アリーナもニッコリ。

お昼から帰ってきたらスタジオ全館の水が出なくなっていた。
陶芸は結構水を使うのでちょっと困るが、私が来てからもう2回止まっている。
そんな建物なのだ、しょうがない。
アリーナがちょっとカリカリしてアシスタント君に大きなバットやバケツに水を他から汲んでこさせる。
アリーナでこんなにカリカリするんだからここに不満は絶対一人で抱えられない文句大王のイヴァンがいたら、、、とちょっと思ったが、彼は別館の釉薬部屋に一日籠りきりで、しかもすごく綺麗な釉薬のレシピを見つけたらしくて今日は終日ご機嫌。
「釉薬部屋に分厚いレシピ集があったんだ!1日中テストの釉薬を調合しちゃったぜ~♪」

「ものつくり」なんだなぁ。
「ものつくり」は作業がうまく行きさえすれば他のつまらないことなんて砂みたいになって消し飛んで行ってしまうんだよね。
この人ってなんかこう、やっぱり根は気のいい奴なんだよね。
反応が「生」なだけで、良くも悪くも。

イヴァンは私の作業の様子を見ていて地味に私を見直したらしい。
昨日はなにやらしみじみと「俺も作業は辛抱強い方だけど、キミも相当だな~」と言いに来た。
いいぞイヴァン、そのまま良い人でいておくれ。
君が幸せだとみんなが幸せだ。(笑)