友人でもある私の作品のコレクターが「地震鬱」になってしまった。

関東は怖いから引き払って引っ越す、そして私の繊細な作品は個人で管理する自信がない、元々自分が独り占めしてはいけないと思っていたので何処か美術館に寄託したい。と。

自分は鬱だから事務的なことは何もできない、私に美術館と交渉してくれ、と作品が宅急便で送られてきた。
春のことだった。

私自身も体調が不安定で、気にしていたがなかなか動けないままに秋になってしまった。
ふと、そろそろかかわり合いのある美術館とコンタクトとるか、と思った。
すると都合良く前に個展をさせていただいた美術館の学芸員さんから電話が。(笑)
寄託の件を話してみたら、明日会議があるから話をしましょう、となった。
で、今急いで作品の画像付きのデータをつくっている。

多分、寄託はうけてもらえるだろう。

物には魂というか、意志があるのではないか。
自分の作品の動きを見ていると時々そう思う。
ある作品が売約取り置きになったのに、相手の都合でキャンセル。
その時はがっかりだが、後でもっと良い買い手がつくことがある。
その作品の良さをもっと解ってくれる人が買ったり、規模の大きな展覧会にその作品が使われたり。
質の良い作品がそうなることが多い。

作品は自分で行き先を選ぶのではないか。

今回寄託を頼まれた作品は、私がまだ定職もなく派遣のバイトを繰り返していた時で、「これが売れなきゃ私は生きていけない」というときに売れた2つ。
その時どれだけ助かったことか!
そして今度は持ち主が本当に作品に心をかけられなくなったら、私のところに出戻ってきた。

孝行娘の2作品、うまのあう学芸員さんのいるあの美術館にうまく縁付いてほしいものだ。