立秋が来て夏も後半になったら、随分蝉の死骸を見かけるようになった。

今日も通勤途中に見かけて、ふと
「気持ち良さそうに死んでるな」
と・思った。

7年土の中にいたのがこの夏羽化して、精一杯に鳴いて、ちゃんと子孫も作ったんだろう。
生ききって満足して、何の悔いもなく、すっかり空っぽになって解放されきって、せいせいと仰向けになっている。
何だか満足と達成感の凝縮みたいに感じられた。

子供の頃、蝉の死骸は大きいしやたらと目につく所に落ちているし、怖くて嫌だったんだけどな。

今は見かけると、「良かったな、全うしたかい?」なんて心の中で話かけて、ほわん、と情けを送ってしまう。

とうの立った「虫愛ずる姫君」の誕生である。