最近になり、新型コロナウイルスのワクチンについての質問が外来患者さんから多く聞かれます。

 

特にリウマチ膠原病の患者さんはステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤などを投与していることもあり、新型コロナウイルスが流行する前から感染症に対して気を配ってきました。

 

そういうこともあり、この1-2週間は外来毎に必ず数人はワクチンについての質問してきます。

 

そこで、日本リウマチ学会のホームページにて、ワクチンについての分かりやすい情報提供がなされていましたので、抜粋しながら解説していきたいと思います。

 

 

区別するために、抜粋した内容については太字+斜体で記載させていただきます。

 

 

Q1:関節リウマチや膠原病の患者はワクチンを接種すべきでしょうか?

A:ワクチンを接種するかどうかは、接種のリスクと感染のリスクを比較して決めることになります。

 

  ワクチンを接種すること
利点 重症化しにくくなる、もしくはしなくなる効果が認められていること
現在までに知られている変異にはすべて対応していること
弱毒生ワクチン(現在開発中)と違いすべての患者で投与が可能であること
欠点 ワクチンの種類が今までにないものであること
アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応や局所の強い反応が認められている
今後のウイルスの変異に対応できるかどうかがわからないこと

 新型コロナウイルス感染後、重症化しやすいリスクとしては高齢者、肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満があげられます。年齢ですが60歳代の重症化率は30歳代の25倍になると報告されています。
日本リウマチ学会としては新型インフルエンザワクチンと同様にステロイドをプレドニゾロン換算で5mg/日以上または免疫抑制剤、生物学的製剤、JAK阻害剤のいずれかを使用中の患者は他の人たちよりも優先して接種した方がよいとしています。
人によって重症化リスクは異なり、感染リスクも感染の流行によって変動するため、担当医とよく相談したうえで接種の可否を判断してください。

 

 

これらの重症化のリスクについてはすでに広く知られているため、ご存じの方が多いと思います。

 

実際に私が知っている重症化した症例はほとんどこれらのいずれかに該当しております。

 

一方でステロイドや免疫抑制薬、生物学的製剤などについてはどうかと言えば、これらについては以前私も自身の動画サイトで紹介し、こちらのホームページにも記載されていますが、現時点では重症化や感染リスク増加については明らかではありません。

 

しかし、それは恐らく普段から気をつけているからだと思いますので、やはり注意は必要だと思います。

 

よく患者さんから「優先的に接種した方がよいか?」という点についてはこちらにも書かれているように、優先的に投与する対象となるものと考えます。

 

 

Q2:ワクチンについて簡単に教えてください

 

A:新型コロナウイルスに対し使用されているワクチンは大きく分けると2種類になります。メッセンジャーRNAワクチンとウイルスベクターワクチンです。
メッセンジャーRNAワクチンはウイルスが作られるときの鋳型になるメッセンジャーRNAの一部(ウイルス表面のスパイク部分)を取り出し、化学的に合成したものです。体内に入るとウイルス蛋白の一部だけが作られ、免疫応答が起こります。
ウイルスベクターワクチンはウイルスのRNAの一部をアデノウイルスベクターに組み込んで化学的に合成したものです。ベクターは細胞内にウイルスRNAを運びウイルス蛋白を産生させ、免疫応答が生じます。
これらのワクチンはいずれも全ウイルスの形では体内に入らないため新型コロナウイルス感染の原因になることはありません。

 

これは少し難しい内容です。

 

インフルエンザワクチンなどのワクチンは、ウイルスの一部のタンパク質を投与して免疫反応を起こすことに対して、新型コロナウイルスのワクチンは遺伝子の一部を使用するというものです。

 

新しいタイプのワクチンということですが、何となく「遺伝子を投与する」という点で「自分の遺伝子に影響を及ぼすのでは?」と心配されるかもしれませんが、理論的にそれはあり得ないことだと思いますので、その心配はいらないものと考えます。

 

 

Q3:ワクチン投与の自己免疫疾患への影響は?

 

A:現在接種されているワクチンがもともとの病気を悪化させるかどうかはわかっていません。一方でもともとの病気が落ち着いていない時のワクチン接種は推奨できないとされています。接種するならば疾患活動性が安定してからが望ましいと考えます。

 

これは全くもって未知数のことです。

 

なぜなら、自己免疫疾患は何かしらの引き金があって発症するということがありますので。

 

ワクチン自体が自己免疫疾患を引き起こす引き金となるという点については明らかではないものの、免疫疾患ということもありますので、病状が落ち着いた状態での接種ということが望ましいという推奨となっています。

 

一方で、免疫抑制薬などによる新型コロナのリスクを考慮すれば、投与する方がメリットが大きい可能性があります。

 

海外で多くの方に投与されておりますが、私達が投与するころには、自己免疫疾患への影響についての報告がなされる可能性が高いものと考えますので、今後の動向に注目すべきだと思います。

 

 

Q4:ワクチン接種前後で免疫抑制剤やステロイドは継続すべきですか?

 

A:現時点でステロイドや免疫抑制剤がこのワクチンにあたえる影響はわかっていません。通常のワクチン接種の場合、免疫抑制剤やステロイドを中止・減量することはありません。よって基本的には接種前後で免疫抑制剤やステロイドは変更せず継続すべきと考えます。具体的にどうするかについては、担当医とご相談ください。

 

これについては私もそのまま継続という形でよいと思います。

 

ワクチンの性質上、免疫抑制薬投与により、少なくとも新型コロナウイルスに感染することはあり得ないものと思われます。

 

効果減弱については、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの既存のワクチンにおいては、それほど問題はないものと考えられていました。

 

新型コロナウイルスワクチンについてもそうだと思いますが、これについてももうしばらくすればさらに情報が入るものと思われます。

 

一方で、免疫抑制薬やステロイドを中止・減量することにより、原病に大きな影響を与える可能性があることは、必ず周知すべきことです。

 

Q5:ワクチンを接種すれば完璧に感染から身を守ることができるのでしょうか?

 

A:現在販売されているワクチンで完全に新型コロナウイルスの感染を防ぐことはできません。

 

感染の予防効果
ワクチンを接種した人では投与後数か月の間、ワクチンを投与していない方の5-10%程度まで感染する確率が低下することが報告されています。

重症化リスク
ワクチン投与によって感染後に重症化しにくくなることが分かっています。

 

これはもしかしたら意外かもしれないし、もしかしたら期待外れかもしれません。

 

要は確率を下げるという程度に留まるというものとです。

 

それでも価値はあるものと思われますが、やはりまだ万能とまでは言えないため、当面は引き続き十分な感染対策は必要だということです。

 

Q6:ワクチンの副作用について教えてください

 

A:注射を打った場所の変化(局所反応)と全身的な変化(全身反応)に分けられます

 

局所反応
80%近い方で痛みが出現します。一部の方では腫れたり赤くなったりしますが、症状は1週間以内にほとんどが消失します。

全身反応
頭痛・全身倦怠感・筋痛・関節痛・悪寒などの症状が3-80%の方で出現しています。若年者で副作用が多い傾向がありました。

アナフィラキシー
緊急認可後のアメリカで接種をおこなったところ、強いアレルギー反応のひとつであるアナフィラキシーが21例出現しました。現時点での発生頻度は100万接種あたり11.1件です。症状は接種後15分以内に出現することが多いため、注意が必要です。
特にアレルギーやアナフィラキシーの既往歴があるかたは担当医とあらかじめご相談ください

 

 

軽度の副反応はかなりの頻度で生じるようです。

 

ただ、これらについては新型コロナウイルスに感染した時よりは軽い場合が多いのではないかと思われます。

 

一方で重篤な副反応であるアナフィラキシーは、こちらでは約10万人に1人で、他のワクチンでは40万人に1人と言われています。

 

実際に生じる頻度で言えば相当稀な部類になるものと思います。

 

一方で全員が回復し、アレルギー歴が強く関与しているということがあることから、アレルギー歴のある方は30分程度経過観察することが推奨されているようです。

 

 

 

以上が日本リウマチ学会のホームページに紹介されていた内容です。

 

参考になれば幸いです。

 

またアップデートされる可能性が高いと思いますので、その時はまた更新いたします。