40を超えたあたりから、体力も気力も明らかに落ちています。

 

外の病院の外来を終えると、疲労が半端なく、その日は何も出来なくなります。

 

当直の疲労も凄まじく、スタッフのことについてもイライラすることが多くなりました。

 

 

そんな時、こんなことがありました。

 

 

ある病院で救急当直に行った時のこと。

 

着いて早々に患者さんがすでに3人いました。

 

そのうち2人は遅番の先生が診てくれることになりましたが、1人は私が対応することとなりました。

 

屋外で長時間作業していてふらつきと発熱ということで救急搬送された方。

 

普通に考えれば熱中症です。

 

来て早々、私自身全く「テンションの上がっていない」状態で、熱中症だと思って「ボケーと」ではないのですが、表現するならば「頭を回転させることなく無意識に」患者さんのところに行き診察をしました。

 

とはいっても、どうせ熱中症くらいの軽い気持ちでいましたので、バイタル確認して点滴して採血するくらいにしか考えていませんでした。

 

しかし、そうは言ってもこの道ソコソコ経験があるため、何も考えなくても無意識のうちに必要なことはしていたように思います。

 

そんな時、ふと無意識に足元に目をやった時、足が赤くなっていたことに気づきました。

 

その時も全然ビックリすることなく、無意識に赤くなっている足をみて、足を触りました。

 

そうしたら足が熱かったのです。

 

熱中症だから当たり前だろうと思いがちですが、その後、何も考えずに無意識に反対側の足を触ってみたのです。

 

そうしたら全然熱くなかったのです。

 

そう。熱中症に見えて実は蜂窩織炎という足の皮下組織の感染だったのです。

 

血液検査では炎症反応が著明に上がっておりました。

 

 

この一連の流れ、私は何も考えずに完全に無意識にやったことです。

 

まあ、これくらいは基本中の基本ですので、どんな状況でも見落とすことはないのですが、あの時感じたことは、妙に視野が広く感じたことです。

 

多分もっとテンションが上がって集中している状況だったら、熱中症のことばかり考えて、血液検査で炎症が上がっていてもあれやこれや考えて鑑別診断が思いつかなかったかもしれません。

 

仮に気づいたとしても、こんなにスムーズに診療は出来なかったと思います。

 

 

それから私は気づいたのです。

 

いつも外来の時は気合いを入れすぎていて、そのためにスタミナが切れて疲労がたまり集中力が下がっていたことと、気合いのあまり視野が狭くなり、幅広い視点で物事を考えることが出来なくなっていたことを。

 

 

その後、私は「自然体」を意識し、カッとならずに本能のままに仕事をしてきました。

 

そうしたら全然疲れがたまらず、どんどんアイディアが思い浮かび、患者さんの診察しても何が起こっているか、どうすればいいかが面白いように分かるようになったのです。

 

これだと思いました。

 

 

若い間は自分のキャパシティを超えて頑張って、失敗も重ねて、時に限界も超えて、その結果技術を得ていくのは、成長において必須だと思います。

 

でも、ある時からその気力が追いつかず、頑張れば頑張る程うまくいかなくなる時が来ます。

 

その時は「自然体」を意識することが大事なのだと実感しました。

 

 

皆さんのお役に立てれば幸いです。