新型コロナウイルス感染者が日に日に増えています。

 

感染者数自体は緊急事態宣言期間中の第1波よりもはるかに多い現状です。

 

しかし、にも関わらず感染者の多い東京都でさえも緊急事態宣言発令は行われず、自粛についても4月5月よりはかなり緩いです。

 

そのことについて、多くの方が不安に思っていると思います。

 

その理由としては、過度な制限により経済に多大なる影響を及ぼしていることによります。

 

そして、有識者の中でもウイルスと共存した新しいライフスタイル、いわゆる''with コロナ''を推進する動きになってきています。

 

 

これについては当然批判的な意見はあるものと思いますが、現状としてこのまま緊急事態宣言と同様の経済活動を継続することは、国を維持するためには困難という判断であり、仕方ない部分もあります。

 

 

しかし、もしどうしてもコロナと共存させるwithコロナを勧めていきたいのであれば、その前に現在の医療現場の現状をよく理解してほしいものと思います。

 

 

新型コロナに対する医療機関の対応は様々ですが、感染者が拡大している現状にあり、多くの医療機関で受け入れを行うようになってきています。

 

幸い当院の場合は、病院の中心部からかけ離れた場所にある隔離された病棟(どこかは言えません)がありますので、保健所経由に代表される外部からの入院に対しては病院内部はウイルスに汚染されません。

 

しかし、もともとこういう体制のなかった病院においては、病棟を1フロア潰してコロナ専門の病棟にすることを余儀なくされるところもあると聞いたことがあります。

 

また、結構厄介なのが「疑い例」です。

 

疑い例に対しては確定するまでは一般病棟で個室管理となる場合が多いです。

 

当院では感度は下がりますが迅速抗原検査もあり、PCR検査も自前でやっていますので、昼過ぎくらいまでに検体を採取すれば、その日のうちに結果が出ることが多いですが、そのようなことが可能な医療機関は極めて限られています。

 

そんな中で感染者が次々と増えたら、対応しなければならない患者さんが増えて、病院がパンクすることは言うまでもありません。

 

 

では何が問題でしょうか?

 

withコロナというには時期尚早と言ってしまえばそれまでですが、どうしてもwithコロナを進めていくのであれば、絶対に変えなければならないことがあります。

 

それは、「新型コロナの入院適応」「感染者の外出禁止徹底」「急変時の迅速な受け入れ態勢強化」です。

 

全国的に言えることだと思いますが、ここ最近の新型コロナによる入院患者さんは軽症者がほとんどです。

 

「ただの風邪」どころか無症状の方もいますので、下手すれば「ただの風邪」以下です。

 

この程度の患者さんに対して、潤沢とは言えない自己防護具を用いて、医療従事者は感染のリスクをおかしてまでして対応しています。

 

医療関係者が感染した場合、勤務している病棟は2週間にわたり完全にクローズとなり、緊急入院を含めて新規入院はとることが出来ず、スタッフや患者さん全員に検査を施行する形となり、病院に大きな打撃を与えます。

 

仮に私がコロナに感染したら、もちろん病棟は同じ扱いであり、医局員についても現在は接する時にはマスク着用とソーシャルディスタンスを保つことを徹底しているとは言え、いざその状況になったら、勤務してよいかについても問題となり、なによりも外の病院を含めた約500人の患者さんをどうするかという、非常にシャレにならない事態が訪れます。

 

「ただの風邪」に感染しただけでは、ここまで大ごとにはなりません。

 

そのため、インフルエンザと同様に、新型コロナも若年者で基礎疾患のない方は、やはり自宅待機またはホテルの利用が基本だと思います。

 

そして、最近にわかに問題となっているのが、感染者の無責任な行動です。

 

過去にホテルから脱走した例もあった訳ですが、外出禁止の法的拘束力はないようです。

 

これについては現状では厳しい罰則を設けてもよいものと思います。

 

ただ、以前より自宅待機者の急変が問題となっていました。

 

これについては、何度も言っているように、検査を行った後に患者さんの管理が保健所に切り替わるからこういうことになるのです。

 

陽性が発覚し、基礎疾患や全身状態、家庭環境などから入院適応を判断することについては、医者であれば日常的に行っていることです。

 

結局、コロナの対応に振り回され、本当に対応が必要な重症例や急変時の対応が難しくなっていることが問題なのです。

 

 

ニュースとかではもっぱら人工呼吸器やECMOなどが必要な重症患者さんの大変な状況ばかり報道されているようだが、実際に起こっている問題は、このように大多数の軽症患者さんに対して異常に振り回されているということにあるのです。

 

まだ第1波の時点ではよかったです。

 

しかし、今後withコロナと言って感染者が増えたら、到底まともに対応できませんし、下手すれば病院が潰れます。

 

 

''withコロナ''を語る前にこの医療現場の現状はぜひ知ってもらいたいと思います。