最近、やっと仕事も落ち着いてきましたので、今後はブログも積極的に更新したいと思います。

 

ここまでの間に言いたいことは山ほどあったのですが、思いついたら随時話します。

 

 

新型コロナについてですが、感染者数が増えてきており、引き続き警戒が必要な状況となってきています。

 

その件について色々と話したいことはあるのですが、ちょっとここで少し変わった切り口で語ろうと思います。

 

 

表題の「新型コロナとインフルエンザは何か違うのか!?」について、皆様はどのくらい理解されておりますでしょうか?

 

この点については、医療従事者は少なからず現在の新型コロナに対する騒ぎ方に違和感を覚える要因になっているものと思います。

 

 

新型コロナとインフルエンザは感染様式は基本的にはともに飛沫感染ですので、だいたい同じです。

 

また、新型コロナは非常に重症化する例があることが問題となっておりますが、その点についても病態は異なるものの、死に至る病態となりうることについては、インフルエンザも同様です。

 

手洗いやマスク着用、そして新型コロナによって急に言われるようになった、三密を避けることや、ソーシャルディスタンスを保つことについては、インフルエンザにおいても同様です。

 

しかし、毎年必ずインフルエンザのに、何で今更こんなことを騒ぐようになったのか?

 

この疑問は多分多くの医療関係者は感じたものと思います。

 

 

そこで、新型コロナとインフルエンザの決定的な違いが3つあります。

 

それは、インフルエンザには「治療薬がある」ことと、「ワクチンがある」ことと、「迅速検査がどこでも行える」ことです。

 

確かにこれは重要な点ではありますが、実はこれについては考えれば考えるほどおかしなことに気づきます。

 

 

インフルエンザの治療薬が果たしてどれくらいの効果があるかご存じでしょうか?

 

よく言われていることは、「解熱期間を1日短縮させる」ということです。

 

そして、昔から言われていたのは、インフルエンザ脳症やインフルエンザ肺炎を予防するエビデンスがないということ。

 

一方で、抗インフルエンザ薬の耐性化も問題視されておりました。

 

しかしながら、こういう背景があるにも関わらず、かつては日本は世界的に群を抜いた抗インフルエンザ薬の処方数を誇っており、国際的に問題視されていたことがありました。

 

このことを、私が研修医時代にある先生から詳しく教わり、今後はインフルエンザ治療薬をむやみに出すべきではないということを教わりました。

 

そして、日本でも抗インフルエンザ薬の適正使用について呼びかける動きになっていたという話も聞きました。

 

しかし、その動きを大きく変えたのが新型インフルエンザが流行でした。

 

新型インフルエンザの流行に対して、日本は積極的に抗インフルエンザ薬を使用したことで良好な成績をあげたことから、抗インフルエンザ薬の積極的な使用を行う流れとなりました。

 

その背景については日本感染症学会のホームページに詳しく書かれています。

http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37

 

新型インフルエンザ流行前に議論されていたことは、今や全くもって過去のものとなり、感染症の先生方は警鐘を鳴らしつつも、今に至るまで抗インフルエンザ薬は積極的に使用することが当たり前となっている一方で、解熱効果が1日弱まるに過ぎない効果と、リスクの低い患者さんにおいての重症化抑制のエビデンスが乏しいことは今でも基本的には変わりません。

 

一方で、ハイリスクの患者さんにおいては入院死亡率を抑制させるという効果もあるため、抗インフルエンザ薬の存在自体は十分に価値のあるものです。

 

しかし、これはあくまでハイリスクの患者さんに対してです。

 

ただし、あくまで有効とは言いつつも、今でも国内でインフルエンザにより死亡する患者さんは決して稀ではありませんし、実際に私も経験があります。

 

そして、ワクチンについても、発症や流行を抑えるには有効なのでしょうが、ワクチンを接種しても発症する方はかなりいますし、ワクチンを接種していない方も多く、毎年とんでもない数の国民がインフルエンザを発症します。

 

さらに、迅速検査により白黒ハッキリつけやすいというのはいいのですが、その結果流行期には外来はパンク状態となり、待合はインフルエンザ患者さんで溢れかえり、インフルエンザ以外の患者さんを確実に感染させるような状況です。

 

 

結局何が言いたいかというと、インフルエンザは治療薬があり、ワクチンがあり、迅速検査が出来ても、膨大な数の感染者を毎年起こしており、死亡者も少なくはない現状はずっと続いているということ。

 

そしてインフルエンザの場合はリスクの少ない患者さんは通常は重症化しないため、入院ではなく自宅療養を勧める形です。

 

一応発症後5日または解熱後2日は通学通勤は禁止、ということにはなっておりますが、「自宅待機」については果たしてどれだけ守られているでしょうか?

 

 

私が今の新型コロナの対策についてそれほどかけ離れて間違えているとは思っていません。

 

もう少し緩和はしてもよいかもしれませんが、重症化の抑制や重症化した時の治療指針が確立されていない現状においては仕方ないことだと思います。

 

しかし、結局私が言いたかったことはこの一言。

 

「なんでインフルエンザ対策として三密やソーシャルディスタンスの確保、マスク着用や手洗いなどを強調してこなかったのか」ということ

 

言っていたかもしれませんが、全く国民には伝わっていないことは明らかです。

 

もう過去のことを言っても仕方ないのだが、ここでそのことを問題提起しないと、また人間は同じ過ちを繰り返します。

 

その背景にあるのは、治療薬やワクチンがあることによったのではないかと思います。

 

 

今年の冬はインフルエンザの流行と重なることも懸念されております。

 

本当に新型コロナの対策が出来れば、インフルエンザも抑えられるように思うのですが、どうでしょうか。