新型コロナの治療薬として、先日レムデシビル(商品名ベクルリー)が保険適用となりました。そして、それほど遠くない時期に、世間で注目されているファビピラビル(商品名アビガン)も保険適用となる見込みです。
これらの治療薬はレムデシビルはエボラウイルス、アビガンはインフルエンザウイルスに対する治療薬でしたが、RNAウイルス全般で有効である可能性があり、コロナウイルスに対しても有効性が期待されております。
これについては、実際には有効性について示す高いエビデンスを示す臨床研究の結果が出ていない状態ですので、今の時点で「特効薬」という位置づけと言ってよいかは、まだ判断出来ない状況だと思います。
ですので、「有効な治療薬がない」とは言いませんが、「確立された特効薬」はまだないのではないかと思います。
そのことですが、私はここまで医療関係者の意見などについて違和感を持っていたことがあります。
それは、「有効な治療薬がないから早期診断は無意味」という意味合いの意見です。
新型コロナのPCR検査については未だ議論があるようです。
PCR検査を行って診断出来れば当然メリットが大きいと考えるのは自然の発想です。
しかし、「有効な治療薬がないから検査で陽性を示しても意味がない」という論調もありました。
果たしてそうでしょうか?
私は違うと思います。
まだ症状が軽い状態で新型コロナの診断がついていた場合、重症化した時に診断がついているかついていないかで、対応の早さが全然違います。
ただ、「治療薬がないのに何が出来るのか?」という意見もあるようです。
当たり前のことですが、呼吸状態が悪ければ酸素投与を行い、食事水分が摂取出来なければ点滴を行うことです。
重症になった場合は人工呼吸器管理を行い、全身状態が悪化することによってバイタルの変動に対して対処し、多臓器不全を防ぐべく全身管理を行います。
特に最近は新型コロナウイルスは血栓を形成するということも分かっていますので、必要なタイミングで抗凝固療法を行うことも重要なことです。
これらによって予後が改善するというエビデンスがあるのか?という風に言う意見もあるようですが、実際に回復する例も多いことから、その間に全身状態悪化を防ぐことは立派な治療だと思います。
だから、有効な治療薬がないから検査で陽性を示しても意味がないということはなく、対症療法であっても意味があり、重症化したら尚更であり、さらには状態を医療の立場で管理を受けるということは、十分に意味があることです。
もちろん、防護具やマンパワーの不足があり、特に重症管理は多大な労力を要するため、有効な抗ウイルス薬やワクチンの開発は望まれることは言うまでもありません。