お久しぶりです!

相変わらず忙しい日々を送っておりますが、本の執筆もひと段落し、他の多くの仕事も結構片付き、あとは11月29日に熊谷、12月6日に秩父で講演し、それが終われば少し余裕が出来ます。

とは言っても次から次へと仕事が増えていますので、当分楽はさせてもらえなさそうです(笑)


さて、今回ですが、私達の世界でもリウマチ患者さんにおいても、とても大きなニュースが舞い込んできました

それがこちらです

ゼルヤンツというリウマチ治療薬で治療された患者さんが、末期の肺癌になり、癌発生の報告があるとされるゼルヤンツを服用するにあたりその説明がなかったことと、製薬会社の注意喚起が不十分として、病院と製薬会社を訴えた、というニュースです

ゼルヤンツは近年使用頻度が増えておりますので、報道を知った患者さんや家族はきっと不安だと思います

しかし、この問題は実は決して簡単な問題ではないことと、正しく理解しないととんでもない誤解を招く恐れがあるため、今回解説させていただきました。

本来であれば参考文献など学術的な内容も折り込むべきなのは承知しておりますが、ちょっと準備が必要なので、今回は事実のみの内容とし、より掘り下げた内容は折を見て動画などで紹介したいと思っています



ゼルヤンツは、私の動画でも簡単に取り上げました



私自身、この動画でも癌については触れていません

近年の多くの研究で、JAK阻害薬により発癌リスクを上げないという流れになってきていたからです

実はJAK阻害薬はその作用機序から、発癌リスクが上がるのではないかということは、とても懸念されていました

国内でもつい最近まで全例調査が行われ、国内でゼルヤンツが投与されて患者さんは、全例悪性腫瘍を含めた有害事象の有無を調査研究しておりました

実は確かに悪性腫瘍の発生の報告はありました

ただ、難しいのは因果関係です

恐らく身近な方でも癌を患った方はいらっしゃると思います

癌は非常に一般的で頻度の高い病気であり、例えばゼルヤンツを服用していなくても、癌になる可能性はある訳です

そうなると、疫学研究から癌の発生リスクが上がるかどうかの判断となる訳ですが、かなり大きな疫学研究からも発生リスクは上げないとここまでされてきています

では本当にゼルヤンツは癌との関係がシロかというと、それがまた難しい問題なのです

今回の件は分かりませんが、実際にゼルヤンツ使用後に悪性腫瘍が発覚した例があり、それが本当に関連がないということも証明が難しいのです

実際に作用機序から癌の発生や進行に注意が必要と考えられていた経緯があり、さらに販売されたのは2013年ということから、まだ10年以上の経過でどうなるかは分かっていないという問題もあります

私自身、留学したのは2016年だったのですが、癌や長期安全性の懸念もあり、実は一例も使用せず、当科医局でもかなり慎重な姿勢でいました

最近は長期的なデータも出てきたので、私も少しずつ使用する患者さんが増えてきました

現時点ではゼルヤンツにより癌を発生させるという強固なエビデンスがない以上、患者さんへの説明や製薬会社の注意喚起も現状では致し方ないとは思いますが、こういう事例が生じた以上、患者さんにどう説明すべきかは対策は必要と考えています

もちろん、癌以外に感染のリスクはありますし、例えば肺癌であれば投与する前にレントゲンなどで肺癌がないかは最低限確認すべきことですし、こういう薬剤だからこそ適正使用が大事で、必要な症例に限り使用すべき薬剤というスタンスはとても重要だと思います

この問題はとても難しいが、重要な問題であり、私自身もこれからの診療においてよく考えていきたいとおまっています