もはや常識であるものと信じていますが、関節リウマチの治療は近年めざましく進歩しました。
 
その中でも特に際立っているのが「生物学的製剤」と呼ばれる治療です。
 
最近は早期診断が出来るようになり、生物学的製剤以外でもうまく治療をすれば、8割くらいの患者さんは痛みも腫れも少ない状態に持って行き、将来的な変形を抑えることが出来るようになっております。
 
しかし、それでも2割前後の患者さんは生物学的製剤を使用しなければ、常に痛みと戦わなければならず、仮に痛みはステロイドや鎮痛剤で抑えられたとしても、長期的には関節の破壊を引き起こしてしまう恐れがあります。
 
そういう患者さんに対して生物学的製剤を使うことで、感染症などがなく治療を行うことが出来れば(もちろん、うまく治療することが条件ではありますが)9割以上の関節リウマチの患者さんがよくなるようになってきました。
 
かつては生物学的製剤は強力な治療ということで感染症などの副作用が問題となっていましたが、最近はその辺の管理のノウハウも確立されてきましたので、かなり安全に使用出来るようになってきました。
 
 
しかし、そんな夢のような生物学的製剤には致命的な欠点があります。
 
それは「非常に高額な治療費」です。
 
生物学的製剤は2003年にレミケード、2005年にエンブレルが関節リウマチで日本で使えるようになり、その後ヒュミラ、アクテムラ、オレンシア、シンポニー、シムジア、ケブザラと次々と発売されるようになり、生物学的製剤とは少し異なるのですが、最近はゼルヤンツ、オルミエントという炎症に関わる分子をターゲットとした分子標的治療薬という内服薬も登場しました。
 
これらの治療費はいくらかかるかというと、製剤によって多少異なりますが、おおよその目安としては3割負担で1ヶ月に約3-4万円です。
 
最近ではインフリキシマブBSというレミケードのジェネリックみたいなものも出てきましたが、それでも万単位の金額がかかることには違いはありません。
 
1ヶ月に3-4万円です。
 
これをずっと続けなければなりません。
 
中には止められる方もいらっしゃるのですが、止められない方の方が実際は多いです。
 
ずっとずっと1ヶ月に3-4万円。
 
もちろん、これはあくまでこの治療だけの値段であり、その他の薬や受診料、検査料などを考えれば、月々の医療費はおそらく5万円以上になる場合が多いのではないでしょうか?
 
これはハッキリ言ってよほどのお金持ちでない限り、相当厳しい出費であるはずです。
 
関節リウマチは皮肉にも金銭面に余裕のない若い方に多いです。
 
実際に診療をしていて、どうしても生物学的製剤が必要な若い女性に対して、お金が払えないからどうしても出来ない姿を目の当たりすると、診療している私からしても、まだまだ先の長い人生で、今後どうなってしまうのか、非常に複雑な気持ちになります。
 
こんな状況で、国から補助は出ないのか?と思われるかもしれません。
 
それがこちらです。
 

 

 
これは補助というより、あくまで自己負担額の上限が定められているだけです。
 
住民税非課税の方でも69歳以下は24600円です。
 
これは裏を返せば月々24600円は払わないといけないということです。
 
働いている方は安くても44400円。
 
いずれにしても厳しいです。
 
生物学的製剤が世に出て約15年経ってもまだこんな状況です。
 
 
この状況、皆さんはご存じでしたでしょうか?
 
私の印象では、この問題についてあまりにも世間の認知度が低いことが問題なのではないかと思っています。
 
まずはこのような現状を世間が認知してもらうことからだと思っておりますので、今回この記事を書いた訳です。
 
これからもこの問題については引き続き声を上げていきたいと思っています。