皆様
明けましておめでとうございます。
本当に本当に久々の更新となってしまいました。
ツイッターはほぼ毎日何かしらのつぶやきをしていたり、最近は質問コーナーみたいなこともやっておりましたが、実は年末まで凄まじく多忙でした。
ただ、やっと色んな仕事も落ち着き、きっとこれからまた新たな大きな仕事が舞い込んでくるものと思いますが、とりあえずはブログを書く余裕くらいはありそうなので、今年はもっともっとブログの方も書いていきたいと思います。
さて、実は私はこの年末年始は例のように当直ずくめでした。
大晦日の朝から1月1日の夕方までは近くの日赤で救急当直をやり、2日の夜は大学病院で救急をやりました。
ご存じのように、現在インフルエンザはもの凄く流行しております。
特に1日は午前だけでインフルエンザの患者さんを21人も診察しました。
3日間でおそらく40人くらい診察したのではないかと思います。
もっとも、インフルエンザは非常に高い熱が出るため、症状も辛く少しでも早くよくなりたいという気持ちは分かりますし、病院に受診して処方を受けることはある意味当然かもしれません。
しかし、その一方でインフルエンザに対する真実と世間の認識はかなりのズレを感じております。
今日はそのことについて書こうと思います。
まず、皆さんはインフルエンザをどのような病気だと捉えておりますでしょうか?
早く治療しないと怖い病気、という認識でしょうか?
これがまず一番の大きな誤解です。
実はインフルエンザは「基礎疾患のない」「若年者」はほとんど「無治療でも自然によくなる」のです。
驚かれたかもしれませんが、これが真実です。
ただ、インフルエンザは重篤な肺炎や脳症が怖いと世間では言われているかもしれません。
インフルエンザの薬、具体的にタミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザの5種類がありますが、これらの薬はインフルエンザ肺炎や脳症を抑えるという十分なエビデンスはないのです。
実際、私も内科医として10年以上診療を行い、もの凄く多くのインフルエンザ患者さんを診療してきましたが、基礎疾患のない若年者でインフルエンザ肺炎や脳症を発症した方は一人も経験したことがありません。
実際にはかなり稀な合併症と考えてよいと思います。
では、抗インフルエンザ薬はどういう効果があるのであろうか。
それは、発熱期間を平均約1日短縮させるというものです。
それでも意味があると考えられるかもしれません。
しかし、実際には市販の解熱鎮痛剤でも解熱効果は十分に得られるますので、どうしても体調が悪くてどうしようもないという状態でなければ、市販の解熱鎮痛剤で経過をみて家でゆっくり休む形でも、基本的には問題ありません。
残念ながら今の現状は病院に行くのも大変で来てもかなり待たされることがほとんどであり、さらに自分自身が回りに伝染させてしまう恐れもあります。
ということなので、もし何とかなりそうなら、インフルエンザが心配で受診するというのは避けた方がよいと思います。
そうなるとまた別の問題が出てきます。
最近は会社とかでインフルエンザの検査をしてくるようにと言われるらしいです。
だから病院に受診するということがあるようですが、この風潮も個人的にはどうかと思います。
なぜなら、インフルエンザの検査は特に発症早期は陰性になることも多いため、仮に検査で陰性だったとしても症状でインフルエンザと診断することもあるからです。
であれば、流行の拡散を防ぐ意味でも、病院に電話して症状を話してインフルエンザっぽければ自宅療養を指示し、病状が安定したら病院を受診して診断書を書けばよい話です。
しかし、これはあくまで絵に描いた餅であり、そんなことが今の世の中で通用するとは思えないので、難しい問題ではあることは理解しているのですが。
実はこういう風になったのは10年くらい前に新型インフルエンザが流行ったことでした。
今までは日本は抗インフルエンザ薬を大量に使用していたことから、耐性化が問題視されており、WHOからも批判されており、抗インフルエンザ薬の適正使用に向けての試みが行われようとしていたらしいです。
しかし、ちょうどそのタイミングで新型インフルエンザが流行し、抗インフルエンザ薬を積極的に使用しようという風潮になってしまい、インフルエンザは恐ろしい病気であり、抗インフルエンザ薬を使用することが当たり前となってしまっています。
かくいう私もこういう事情であるため、インフルエンザの検査を行い陽性の方には抗インフルエンザ薬を処方してきました。
ある程度仕方ないとは思いますが、その一方で真実と誤解については理解すべきかと思っております。
それがこの記事の主な目的です。
そこで、一つ絶対に理解していただきたいことがあります。
ここまでの内容はあくまで「基礎疾患のない」「若年者」の話です。
「高齢者」または「基礎疾患」、具体的には「肺疾患」や「ステロイドや免疫抑制剤を服用している方」は例外です。
これらの方についてはインフルエンザ自体で肺炎が悪化することもあり、実は私自身も重篤な肺疾患と免疫抑制剤を投与している方で、インフルエンザ発症をきっかけに呼吸不全になって亡くなられた方を経験したことがあります。
また、これらの方はインフルエンザであれば治療薬があるし、多くの場合はよくなるので、インフルエンザであればまだマシであり、本当に怖いのは、実はインフルエンザではなく別の重篤な感染症であったり、持病が悪化していたということなのです。
だから、こういう方については熱とかがあった場合は受診していただいてよいと思います。
だからこそ、病院内のインフルエンザの蔓延を少しでも防ぎ、確実に対応しなければならない方を少しでも早く対応するために、病院受診の適正化が必要なのです。
もっとも、この問題はかなり難しい問題であり、今すぐ解決出来る問題ではないと思います。
しかし、せめて真実と誤解については伝えることは出来ると思いますので、ここに書くこととしました。