例のようにカメさんペースで本当にご無沙汰ですが、実は今度の金曜日に研究会発表を行うことがつい最近急に決まり、スライド作りなど色々忙しかったです。

 

ようやくスライドも一段落しましたので、これで一安心と思いきや、7月半ばにまた発表があります。

 

それが終われば安心かどうかは、その時になってみないと分かりません。

 

何せ、人手不足ということもありますが、最近は大きな仕事は必ず私に頼まれますから。

 

まあ、それだけ実力を評価していただいているということで、私としてはありがたく思っているのですが、今私が倒れる訳にはいかないので、健康だけは十分に気をつけたいと思っております。

 

 

さて、前回の記事についてですが、その患者さんは無事治療も始まり、かなり元気になりました。

 

本人もとても喜んでいます。

 

何とか救うことが出来てよかったです。

 

もっとも、私がどうだということではなく、こういう風に患者さんをよくすることが出来るのも、医学が進歩した結果なのです。

 

この患者さんについては、比較的昔の医療技術でも診断治療は可能だったかもしれませんが、治療薬のみならず、診断に至る考え方など、私達の世界では日進月歩で進化し、経験を蓄積させており、そういうことも含めて医学の進歩ということです。

 

 

ただ、その患者さんとは別に、また非常に考えさせられる患者さんに出会いました。

 

今から約20年前。

 

その患者さんは当時原因不明で診断がつかなかったのだが、「膠原病」とだけは分かっていたようです。

 

そのくらいの時代は、リウマチにしても膠原病にしても「不治の病」というイメージが根強かったです。

 

だから、当時の医者から「治らない」と言われたようです。

 

その患者さんは最初の数年間は非常に消極的な医療のみで経過され、本人も「治らないもの」と認識しておりました。

 

しかし、その方はそれを受け入れるのではなく、感じていたのはただの「絶望」と「諦め」。

 

その最初の数年の間に、その「絶望」と「諦め」は修復不能な状態まで陥っていたのです。

 

その後、現在の主治医が担当となったのは約10年前。

 

患者さん自身、前任医に対する不信感から、医療不信が強かったようです。

 

ただ、現在の主治医は私もよく知っている先生でとても優秀な先生であり、治療の手立てはあることは知っていました。

 

もっとも、その当時からその患者さんの診断や治療に至るノウハウは、かなり確立されていたのですが、時すでに遅し。

 

患者さんの中に強く根付いている「絶望」と「諦め」は変わることはなく、病院にもほとんど受診することはなかったようです。

 

そして、私が当直の時に救急搬送されました。

 

そこからのことは詳細は話しませんが、正直私でもその患者さんの気持ちを変えてあげて、なおかつ病気をいい方向に持って行くことは出来ませんでした。

 

ただ、私のことは信頼していたし、感謝もしていたようです。それだけは救いだったですが。

 

せめて病初期にもっと当時の担当医が前向きな気持ちにさせるような対応をしていれば、きっとその人の人生は変わったのだろうなと、とても複雑に思いました。

 

 

リウマチに関して言えば、ご存じのように、この10数年で画期的な治療薬が多く出現し、本当の意味での治癒ではないものの、劇的によくすることが出来るようになってきました。

 

早期に診断することも可能となり、早期から適切な治療を行えば、手指が変形して寝たきりになることは、ほとんどないところまで行きました。

 

膠原病についても、最近になり全身性エリテマトーデスについては新しい治療薬がいくつか日本でも使用出来るようになり、他の膠原病については、新しい治療薬はあまりないものの、薬の使い方や診断技術、副作用対策など、これらについても私が医者になった当時と比べても劇的な進化を遂げています。

 

また、リウマチ膠原病以外でも、例えばC型肝炎については非常に高額な医療費が問題にはなっているものの、それでも私が医者になった時には存在しなかった、事実上の特効薬が出現した訳です。

 

私が医者になったころは、C型肝炎はワクチンもなく、治療薬もインターフェロンとかはありますが、副作用が強かったりして、非常に大変な病気という状態でした。

 

他にも、身近な病気では糖尿病については、もう私が覚えきれないくらい大量の新しい薬が出現し、治療のみならず検診などによる早期診断治療のノウハウもかなり確立されてきています。

 

 

このように、医学は本当に進歩しているのです。

 

まだまだ進んでいない領域もありますが、それでも新しいことはどんどん分かっているのです。

 

実際に30年前どころか20年前でさえも、リウマチがこんなによくなるなんて、誰も夢にも思っていなかったと思います。

 

だから、たとえ今目の前にいる患者さんが、現在の医療ではよく出来ない状態であったとしても、安易に患者さんを諦めさせるようなことを言うべきではないです。

 

そういう患者さんに対しては、私の場合はよくリウマチを例に挙げます。

 

安易に期待を持たせることがよくないこともありますが、いかなる場合でも患者さんをただ単に絶望に陥れることがいいはずがありません。

 

たとえ今治せなくても、いつか治せる可能性は医療には常にあるのです。

 

それを私達も患者さんと接する時には常に心がけるべきであり、皆さんもそう思っていただきたいと思っています。