昨日の夕方から今日の夕方まで、例の赤十字病院で当直をしてきました。
何と来週も土曜日の夕方から月曜日の朝までやってきます。
あそこの当直も帰国してから月3・4日のペースでコンスタントにやっているのだが、あそこで当直していると、本当に埼玉の医師不足を痛感させられます。
私が帰国してから、留学前よりもさらに埼玉の医師不足について考えるようになりました。
そんな中、同じ埼玉の病院でこのようなニュースが報道されたことをご存じの方も多いと思います。
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3324340.html
https://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00388040.html
これだけ見ると、婦人科手術後に死亡した患者さんがいたことから、不適切な手術が行われていたことが発覚し、調査を行っている、というような報道に聞こえます。
それはそうなのですが、実はこの件について調べてみると、結構深刻な問題が潜んでいそうです。
まだ調査中なので正式なことは分かりませんが、先月、このような報道がなされたそうです。
http://bunshun.jp/articles/-/6303
真偽の程は定かではないものの、この件とは別に、似たような事態は水面下で色んな医療機関で起こっている可能性は十分にあります。
市民からしてみればたまったものではありません。
なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。
その背景にあるのが、他でもない「医師不足」です。
その証拠に、時を同じくして、この病院ではこのような発表もされました。
http://www.sankei.com/politics/news/180217/plt1802170012-n1.html
少なくとも、この病院を含めたこの地域において、産婦人科医不足が深刻だったのは明らかです。
医師不足が深刻な地域と聞くと、いわゆる限界集落みたいなところや離島などを想像するかもしれませんが、実際にはかなりの都会であっても、明らかに人口あたりの医師数が少ない地域は、全国にたくさんあります。
特に、人口あたりの医師数がずっと全国最下位の埼玉では、これは本当に切実な問題です。
そこで、この問題について、先の文春の報道にあるように、医者の世界にも派遣会社みたいなものに登録している医者もいて、そういう医者を結構な待遇で雇用するのが、医師不足が深刻な多くの病院で行われていることです。
ただ、これは日本の医療の世界においては本来の流れではありません。
というのは、日本はもともと「医局制度」という、医者はどこかの大学病院の医局に所属し、そこから各病院に派遣されるという形式が古くから行われていたのですが、最近は必ずしも医局に属さなくても、仕事口が見つかる機会が増えてきているのです。
特に新研修医制度になり、研修の段階で大学に残らずに地域の病院で研修することが出来るようになってから、逆に大学の医局に所属する医者の数も減っているものと思われます。
そうなると、医局も関連病院に派遣させるマンパワーがなくなり、結果的には地域の病院の医師不足が加速するという訳です。
そこで、地域の病院も医師を確保するために、派遣会社経由に医師を探すということが行われるようになってきているところが増えているのです。
しかし、派遣会社は病院ではなく、医師の技量や人間性などについて評価することは出来ません。
なので、当たりもあるとは思いますが、それなりに外れもあるはずです。
色々と考えがあって非正規雇用という立場でいる医者もいますが、実際にはどこの病院でもうまくやっていけなくなって、非正規雇用となっている医者もそれなりにいます。
もっとも、優秀な医者は劣悪な環境や人間関係が悲惨な職場では働きたくもなければ、医局も派遣させられないです。
医学部に入る人は毎年一定数いて、医師国家試験の合格者数はむしろ増えているのに、なぜこんなに医師不足が加速する地域が増えるのか。
その答えは単純明快で、医師不足が深刻ではない地域があるからなのですが、結果的に医師不足は確実に医療の質を下げますし、医師数を確保しようとすればするほど、時として医療の質は下がるどころか、その結果大きな問題が発覚してしまうと、その損失は計り知れないのです。
埼玉の北や西の医療過疎地域に身を置く私にとって、これは本当に深刻な問題だと思います。
私が出来ることは、現場の声を発信することだけですので、医師不足が解消されることを願って、これからも発信していきたいと思います。