医療の世界は色んな職種の人達がいます。

 

しかも、同じ職種でも、専門が違えば何もかもが全く異なります。

 

例えば、私はリウマチ膠原病内科医なのですが、その特徴は、慌ただしく動く「急性期」よりは、むしろ「慢性期」を専門とし、考えるより手が先に動くタイプではなく、時間をかけてじっくり考えることを得意としております。

 

しかし、リウマチ膠原病内科でも時折重症の患者さんが救急搬送されたり、病棟で急変したりするため、「急性期」の対応をしなければならないことがあります。

 

また、比較的生命を脅かすような重症は少ない傾向にありますが、その一方で集中治療室で非常に難しい全身管理を要しなければならない場合もあります。

 

ただ、このような「急性期」の対応や、集中治療室での重症管理は、内科全体に見ても、あまり得意な方ではありません。

 

今、日本ではコードブルーというドラマをやっているようですが、観てはいないので何とも言えないものの、多分あの世界とは全く異なり、結構まったりのんびりしています。

 

そんなのんびりしたリウマチ膠原病内科ということもあり、どうやら急性期や重症を多く診る診療科からは、あまりよく思われていないようです。

 

 

私が研修医の時。

 

早い段階からリウマチ膠原病内科に進むことをほとんど決めておりました。

 

しかし、自分の志望について他の科の先生方に話すと、結構リウマチ膠原病科の悪口を言ってきました。

 

要は、中心静脈カテーテル挿入や気管内挿管のような、重症患者さんを診療するのに必須となる手技が下手であったり、急変しても何も出来なかったり、人工呼吸器の使い方もよく分からなかったり、そう言ったことに対して色々と言っていました。

 

そして、こういうことをネタにして、「あんな所に言ったら何も出来ない医者になるからやめておけ」と言って、自分の科を勧めてくるという魂胆です。

 

実は恥ずかしながら、当時の私はそういうことを聞いて、ムカついた反面、不安もありました。

 

というのは、上に挙げたような急性期対応が出来る医者の方が、格好良く見えたのは事実です。

 

多分それは、多くの研修医にとってそうなのだと思います。

 

リウマチ膠原病科は非常に地味な診療科です。

 

リウマチ膠原病科を扱うドラマを観たことがないことが、全てを物語っています。

 

 

そんな想いもあったので、リウマチ膠原病科に入局してしばらくは、ちょっとムキになって、内科の中でもこれらの手技や診療技術について、他の急性期の科に負けないように、そして研修医になめられないように、色々と経験を積んで実践してきました。

 

ただ、ある程度経験を積んだ後に、自分は自分の専門があり、そこに自信を持って突き進めばいいと感じるようになりました。

 

確かに他の科に関連したことについては、他の科の先生の方が出来るのは当然であり、色んな先生と協力しながら診療する訳です。

 

しかし、リウマチ膠原病の患者さん自体は、私達リウマチ膠原病内科医でないと、診ることは出来ないのです。

 

結局、全ての医者は、得意なことと苦手なこと、知っていることと知らないこと、出来ることと出来ないことがあるのです。

 

だから、他の科の先生の不得意な所を、批判したり、ましてや馬鹿にしたりするのではなく、専門家はお互い尊重し合える関係であるべきです。

 

これは、医者同士に限ったことではなく、医者と看護師に関しても同じこと。

 

例えば救急や集中治療室の看護師さんは、自分よりも救急患者さんや重症患者さんの対応を熟知していることがあります。

 

そういう時に、たまに救急や集中治療室の看護師さんで、自分が人よりも出来る看護師であると勘違いしているとしか思えない態度の人を見かけます。

 

要は上から目線というか、こういうことに慣れていない私達を明らかに下に見て、心の中では馬鹿にしているんだろうなと感じることがあります。

 

これでは絶対にいけない訳です。

 

私達もそういう看護師さんから学ぼうとする姿勢は大事だと思いますし、同時に看護師さんもリウマチ膠原病ならではの特徴を知る機会でもあるし、医者としての経験や慢性期ならではの考え方など、色んな面でお互い尊重し合うことが重要なのだと思います。

 

 

結局そういう関係がなければ、チーム医療は成り立たない訳です。

 

私が帰国したら、「お互いを尊重し合うチーム医療」を徹底していきたいと思っています。