今日もまた医師の労働環境問題について。
実は、ツイッターをやっている方はご存じかもしれませんが、今日になって非常に反響を呼んでいる私のツイートがあるのですが、ちょっとデリケートな内容であることと、一部批判もあるので、それについてはもうちょっと議論が煮詰まってから、頃合いを見てそのことについても取り上げようと思います。
今日取り上げるのは、当直明けの労働実態です。
今の日本の医療機関において、当直明けにそのまま帰宅することが出来る所は、ほとんどありません。
当科に関しては、当直は病棟当直と内科救急当直がありますが、病棟当直は起こされる可能性は低いので、当直明けも通常勤務となり、内科救急当直に関しては、一応教授は患者さんを診て一通り仕事が終わったら、帰っていい、ということになっています。
しかし、そういう風に教授が言ってからもう数年経つのですが、(私が留学してからのことは分かりませんが)ここまで内科救急当直後に勤務時間内に帰宅した人は、私を含めて一人もいません。
なぜなら、その文化がないからです。
何だかんだ言って、人手不足なので、奥でうまく仮眠を取りつつも、いざとなればすぐに動けるように病院に待機しています。
さらに、ほとんどの先生は、救急外来明けにも関わらず、外来をやっています。
外科の先生の場合は、急患が来るのがほぼ必発であるにも関わらず、当直明けに予定手術を行ったりします。
そこに重症患者さんとかいると、2連直3連直は当たり前、ということになります。
それでも、大学病院はまだマシだと思います。
市中病院ですと、50歳以上の先生が普通に寝られない救急当直を行い、翌日外来や手術をしていたりします。
ちなみに私はといえば、実は最大で「9連直」したことがあります。
もっともそのうちの6泊くらいは寝当直の老人病院なのですが、まだ若くて体力があってお金が欲しかった時には、こんな凄まじいことをやったことがあります。
私の知っている先生で、1ヶ月で28日当直をした心臓外科の先生を知っています。
さらに、当科の場合は患者さんが「予期せぬ」急変をした場合を除いて、病院から私の携帯に電話がかかってきて呼ばれることはありませんが、現状として24時間365日オンコールで対応している医師は、相当数いるものと思います。
特に外科系の場合は、オンコール当番が輪番性であればまだいいのですが、先日の新潟の病院で若い先生が自殺した所のように、若手医師が率先して急患にオンコールで対応したり、手術に入ったりする医療現場は、未だ多く存在するものと思います。
もっと例を挙げようと思えば挙げられますが、これだけ聞いても、以下に当直明けに無理して仕事をさせられているかが、よく分かると思います。
かくいう私も、医者の世界はこれが常識だと思っていましたし、我慢してやっていました。
ただ、だいぶ前に救急当直明けにちょっとミスをしそうになったことがあり、それから少なくとも救急当直明けは、大事な判断が必要な検査を入れたり、複雑なオーダー入力をしたりするのは避けるようにしたり、翌日に外来や外勤を入れることも避けてもらうようにしていました。
幸いなことに、当科はその融通がかろうじて利くくらいの人手はありましたので、そこはわがままを聞いてもらえました。
しかし、多分ほとんどの職場はそれは無理だと思います。
実際に、医者の世界では、当直明けであろうとも、翌日にそのパフォーマンスを落とすのはプロ失格という、明らかな「根性論」が存在しています。
私も若い頃はそう思っていました。
そこで、最近このような記事を目にしました。
http://www.huffingtonpost.jp/mamoru-ichikawa/doctor-how-to-work_b_17301864.html
当直明けの状態は「酒酔い状態」と同じだということ。
これは非常に説得力があります。
確かに、実際に何時間寝られたかにもよりますが、少なからず全く起こされずに済んだ状態を除いたら、「酒酔い状態」と変わらないくらい、判断力が低下していると思いますし、一睡も出来なかった場合は、それ以下かもしれません。
人の命を預かる仕事です。
これがいい訳がありません。
しかし、そんなこと言っても仕方ないと、おそらくほとんどの病院や職場では言うと思います。
私はそうは思いません。
結局上層幹部の理解による部分が大きくあると思います。
本当はその気になれば、当直明けのバックアップ体制を整えることは、実は無理ではないのではないかと思います。
というより、そもそもそこを改善させようという意識が医者の世界に乏しいのが問題ではないかと思います。
これも患者さんのためです。
今ちょうど医者の労働環境について社会問題になっているので、是非そこは意識改革して欲しいと思っています。