最近、もっぱら医者の労働環境に関することが、世間では話題になっています。
 
そのことについては、非常に多く言いたいことがありますし、同時に解決策もあると思っておりますので、しばらくはこの話題を中心に記事を書いていきたいと思っています。
 
 
医者は基本的にとても激務です。
 
前のブログで、私が日本にいた頃のエピソードを知っている方もいらっしゃると思いますが、とにかく悲惨です。
 
ところで、医者が何でこんなに忙しくなるか、皆さんご存じですか?
 
急患が沢山来るから?
 
まあ、外科系とかはそれもあることでしょう。
 
しかし、確かに急患も来ますし、急変もありますが、実は本当に凄まじい状態でない限り、本来であれば、一人の患者さんにそれほど時間を取られることはありません。
 
患者さんの診察は数分で終わりますし、後は検査して、治療方針を決めて、指示を出して処方して。
 
処置も中心静脈カテーテル挿入とかだと、手こずるとそれなりに時間はかかりますが、それでもトータルでせいぜい1時間程度です。
 
当科の場合は、一人の患者さんにそれを超える時間を要する処置は、あまりありません。
 
大学病院の場合は、一人一人の患者さんはそれなりに難しい方ばかりですが、診察して治療方針を決めるだけであれば、全然大変ではありません。
 
では、何でこんなに医者の仕事が忙しくなるのでしょうか?
 
実はそれは、私達医療関係者からしてみると常識なのですが、一般市民にはとても意外な理由です。
 
それについて、こちらは現在進行形で結構リツイートされている、その原因を書いたツイートです。
 
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そう。「使いにくい電子カルテ」です。

 

このツイートが現在伸びていることから、それについて共感している医療関係者が多いということです。

 

実は少し前に、電子カルテをApple社に作らせたら使いやすい物になるんじゃないか、というようなツイートをしたら、それも結構反響を呼びました。

 

 

実はこれは非常に重要な問題です。

 

ここ10年数年、ちょうど私が医者になる少し前を境に、医療機関で急速に電子カルテが普及しました。

 

実はこの電子カルテ、非常に多くの問題が生じています。

 

それは、多分患者さん自身がとてもよく実感しているのではないかと思います。

 

患者さんからのクレームで、「医者が患者さんの方を見ずに、パソコンの画面ばかり見ている」というものは、結構あります。

 

これですが、決してかばう訳ではありませんが、少しだけ同情します。

 

私自身、実はタイピングは結構得意で、パソコン自体は大学に入ってから始めたのですが、学生時代に猛練習したので、タイピングのスピードと正確さについては、かなり自信はあります。

 

それでも、患者さんの方を見て、患者さんの訴えや経過について、ブラインドタッチでしかも電子カルテの画面よりも患者さんの方を優先してタイピングすることは、相当難しいことです。

 

患者さんの方を見ながら、紙カルテで汚い字でブラインドで書いていた年配の先生にとっては、私のようにタイピングのトレーニングをする時間もなかったことでしょうし、少し可愛そうだと思っています。

 

これも、電子カルテが生んだ重大な弊害です。

 

ただ、問題はそこではありません。

 

例えば外来で、検査と次回の予約のオーダーを入れる姿をご覧になると、結構めんどくさそうに見えませんか?

 

そう。とても面倒くさいのです。

 

紙に書けば数秒で終わることを、数分または数十分かかります。

 

それだけではない。

 

入院となれば、検査や点滴のオーダーだけでなく、指示簿の記載など、これらについては、非常に煩雑な作業を要求されます。

 

私の印象ですと、医者の仕事の9割は電子カルテの操作に取られます。

 

労働負担については、昔のように紙に書いてで全てやることの数倍以上だと思います。

 

カルテを書く作業は、私の場合は電子カルテの方が楽ですが、それ以外の操作は、明らかに紙の方が楽です。

 

私はこれについては、早急に解決しなければならない問題だと思うのですが、これだけ電子カルテが進んでしまった以上、それを根本的に変えるのは困難なのが現状だと思います。

 

 

ここで、私の意見なのですが、この問題を解決する最も現実的な方法があります。

 

それは、「代わりにやってくれる人を増やすこと」です。

 

「代わりにやってくれる人」とは誰でしょうか?

 

それは、メディカルアシスタントと呼ばれる事務の方です。

 

最近では、多くの病棟にて配置されるようになり、当科病棟では、文書のスキャナだけはやってもらえます。

 

しかし、それが精一杯です。

 

電子端末で、こちらが指示した内容を入力することの多くは、事務の方でもやることが可能な内容です。

 

実は、何でこの電子カルテが普及したかというのは、事務方の事情が相当あります。

 

電子カルテというのは、レセプト処理を支援することが、大きな目的です。

 

これは、完全に事務方の事情です。

 

そのために、医者の労働負担が増えて、しかも煩雑で使い勝手が悪い電子カルテが原因と思われる医療事故も、実際に存在しているものと思います。

 

つまり、事務方が電子カルテによって恩恵を被っているのであれば、私達のオーダー入力などを手伝ってくれる事務の方を増やせばいいのです。

 

医者を増やすより安上がりだし、雇用の機会もあるでしょうから、こちらの方が現実的です。

 

 

ということで、医者の激務を問題視するのであれば、この「使いにくい電子カルテ問題」は絶対に解決しなければならないことだと思います。

 

その話題が上がることは、世間ではほとんどありませんので、現場を知る人間として、これについては声を大にして主張したいと思います。