今やタバコは心筋梗塞や肺がんのみならず、非常に多くの病気を引き起こす、有害な生活習慣であることは、もはや常識過ぎることです。
また、それと同時に間接喫煙についても問題となっており、今や日本ではタバコを吸える場所は非常に限られ、タバコの値段も一昔前に比べればかなり上がっております。
実際に、今現在タバコを吸っている方の多くは、可能であれば禁煙したいと思っていると思います。
しかし、我慢して辞めることはそんなに簡単なことではありません。
おそらく多くの人は禁煙を試みようと思っても、すぐに挫折してしまう。
そんな自分に対して惨めに感じている人は、きっと多いと思います。
それに拍車をかけるように、世間では喫煙者に対する風当たりが厳しくなっている。
そんな想いをしている方は、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
そこで、私は前のブログも含めて、ブログで初めての告白をしようと思います。
実は私は元喫煙者です。
禁煙したのは、リウマチ科に入局してからです。
それまでは、非常に重度のニコチン依存症でした。
タバコを吸い始めたのは浪人時代から。
当時の悪友の勧めからです。
若気の至りからか、タバコを吸っている自分が格好良く思えた時期です。
銘柄は結構コロコロ変わっていましたが、医学部に入学した頃はタール15mgのエコーという非常に強いタバコで、1日に2箱は吸っていました。
医学部に入ってからは、さすがにもっと薄いのにしなければと思い、もっとタールの少ないタバコに切り替えたりして、最終的には1mgのタバコに変えることは出来たのですが、それでも1日1箱以上は必ず吸っていたし、朝起きたら一服、食後に一服、何かの休憩に一服と、典型的なニコチン中毒者でした。
医学部6年の時に、それをちょっと馬鹿にされたことに腹を立てたので、「禁煙セラピー」という本を熟読し、1ヶ月くらい禁煙が出来たと思いましたが、何かの切っ掛けですぐにダメになりました。
あの時、自分が禁煙宣言をしたにも関わらず挫折したことを知られたくなかったので、影でコソコソ吸いに言ったりして、余計に形見の狭い想いをしていました。
実は、ここが非常に大きなポイントです。
そこで、こちらの記事を読んでいただけると、これから私が言いたいことが、とてもよく理解出来るかと思います。
https://gunosy.com/articles/RPKLd
その後、研修医になってから、ストレスの方が強くて、とてもじゃないけど、禁煙をしようという気にはなれませんでした。
しかし、その一方で、仕事には集中出来ず、疲れやすくなるし、何もいいことはありません。
どこかのタイミングで辞めようと思っても、辞めることが出来ない。
しかも、タバコが嫌いな先生が多いから、自分がタバコを吸っていることも、必死に隠そうとしていたし、何よりも患者さんに対してはなおさらです。
さらに、院内では形式的にはタバコを吸える場所はないことになっていたため、実は一目に触れない秘密の場所で吸っていた訳です。
しかし、仕事の合間を見てコソコソとタバコを吸いに行き、なおかつ臭いが残らないように徹底的に手を洗ったり、消臭スプレーをかけたりと、本当に馬鹿みたいです。
結局、タバコを吸わない人にとっては、医者でありながらタバコを吸うのは白い目で見られて当然であり、時間も取られるし、形見の狭い想いをするし、本当に踏んだり蹴ったりでした。
そして、もしタバコが止められたら、絶対にもっと仕事も出来るようになるし、体の調子もよくなるし、いいこと尽くしなんだろうなと思っていました。
そんな最中、ちょうど研修医時代に朗報が入ってきたのです。
それが、チャンピックスという禁煙治療薬の登場です。
それを実際に使った先生がいて、非常に楽に禁煙出来ることを知りました。
その先生が、私のことを批判することなく、チャンピックスを使うことを私に勧めてくれたのは、非常に大きかったことです。
私は辛かった研修医生活を終え、リウマチ科に入局すると同時に、禁煙外来に通ってチャンピックスを試す決意をしました。
その結果、今までのがウソのように、非常に楽に禁煙出来たのです。
チャンピックスは、簡単に言えばタバコを不味くする薬なのだが、それだけでなく、ニコチン類似作用もあるため、禁煙に伴うストレスも緩和出来る優れものです。
この禁煙外来は非常にうまく出来ています。
まず禁煙外来に際して、毎回呼気CO測定を行います。
そこに出てくる値は、偶然にも一日の本数に近い値を示すのです。
最初の値は確か30くらいだったと思います。
ここで大事なことは、チャンピックス服用中も、タバコは吸い続けてもいいということです。
なぜなら、タバコが不味くなるため、嫌でも不味くなるからです。
その結果、私は1週間で完全にゼロに出来、呼気COの値も同時にゼロになりました。
この禁煙外来の優れているもう一つの点は、もし1年以内に禁煙に失敗した場合、禁煙治療の保険が効かないということです。
こうすることで、心理的に再発を防止出来るのです。
あれから結構経ちましたが、もう完全に禁煙に成功したと断言出来ます。
今まで、このブログでも自分がここまで酷いニコチン中毒者であったことは、隠してきました。
その理由はやはり自分が医者であり、皆さんを失望させてしまうのでは、というのはありました。
ただ、今回それを明かそうと思ったのは、上述したリンク記事を読んでのことでした。
実は患者さんに対しても、禁煙を勧める時に、自分が元喫煙者であり、禁煙外来により禁煙出来たことを話すことがあります。
多分、禁煙指導は元喫煙者じゃないと、本当の意味でちゃんと出来ないと思います。
非喫煙者は喫煙者には頭ごなしに禁煙を勧めることしか出来ないと思います。
今でこそ、禁煙外来はかなり普及してきましたが、喫煙者を取り巻く環境の問題点や、それが禁煙を阻む要因になっていることに気づいている人は、非常に少ないのではないかと思います。
まず大事なことは、タバコを止められない自分は決して悪い訳ではないこと、根性で禁煙出来ないのは自分が人間として弱いからではないこと、そして今は幸いなことに、治療すれば禁煙出来ること、禁煙外来で薬で治療するのは適切な方法であること。
こういう理解が禁煙を推進するには、絶対に重要なことです。
私は思いきって過去のことをここでさらけ出しましたが、これにより一人でも多く禁煙に対して前向きになる人がいてくれたら、とても嬉しいことです。