今日はオハイオ州立大学病院の病棟の見学を行いました。

 

オハイオ州立大学病院は、リウマチ膠原病科の常勤医がいないことから、他の病院に拠点を置いている、私が所属しているラボの臨床部門の先生が週から月単位で、交代で入院管理を行う(つまりそうでない先生は外来だけ)という、おそらく日本には存在しないと思われるシステムで動いています。

 

ちょうど最近は、仲良くなった中国人の先生がその担当であり、一緒について回りました。

 

アメリカと日本の医療現場の違いなどについては、おそらく山ほど書くことがあると思いますので、今後少しずつ書いていこうと思います。

 

 

今日非常に痛感させられたのは、「診療科の垣根を越えた議論の場があること」です。

 

ひとり、非常に難しい患者さんが入院しておりました。

 

詳細は書けませんが、非常に多くの合併症を抱えており、全身状態も不良です。

 

そして、その病態には、数多く存在する合併症がとても複雑に絡んでいることが考えられ、病態を把握することに加えて、治療をどうするかも、困難を極めていた症例です。

 

私も日本では似たような症例を経験したことがありましたが、こういう患者さんを診療することは、本当に難しいです。

 

複数の専門疾患が複雑に絡み合っているため、リウマチ膠原病科だけでは対応は困難なので、当然色んな科の先生に相談する訳です。

 

しかし、このようなケースの場合、日本では電子カルテ上に他科依頼を出して、たまに電話でのやり取りもあるものの、ほとんど電子カルテ上で返事して終わり、あとはそちらの判断に任せます、という感じです。

 

そのため、ある診療科はあっちに聞いてくれ、もう一方の診療科はもう片方に聞いてくれ、そんなことばかりです。

 

3つ以上の診療科が集まって、患者さんのことについて議論されることは、少なくとも私が所属している日本の大学病院では、皆無と言っていいです。

 

なので、それぞれの意見を下に、担当科が総合的に解釈して方針を決めるということになります。

 

ことさらリウマチ膠原病科は疾患の特殊性から、そういう役回りになることがほとんどです。

 

もっとも、自身の診療技能も上がるので、それはそれでいいのだが、本当の意味でベストの診療を行うには、決して好ましくないことだと思います。

 

 

そこで、今日はリウマチ膠原病科と血液内科とのやり取りの過程で、このままでは埒が明かないので、関わっている診療科の先生達を集めようという話しになったようです。

 

その結果、その患者さんの方針について議論するために、各診療科の先生方が沢山集まり、議論が行われました。

 

とはいっても、ガチガチのお堅いカンファではなく、何となく雑談みたいな感じで、非常にラフな雰囲気で行われていました。

 

このようなことは、決して頻繁にある訳ではなく、今回は難しい症例のため特殊なケースであるみたいですが、珍しいことでもないようです。

 

もともと予定されている合同カンファや、他科のカンファに参加して相談したりということは、日本の大学病院でも行われていましたが、このようにラフな感じに3つ以上の診療科の先生達が複数集まるような風景は、日本にはまずない光景です。

 

これこそが、チーム医療のあるべき姿だと感じました。

 

日本の病院、特に大学病院は、未だ診療科間に壁があります。

 

私自身、何だかんだ言って10年くらい大学病院にいたわけであり、他の科の知り合いは沢山います。

 

とはいっても、みんな忙しいこともあってか、まだまだ理想とはほど遠い感じです。

 

アメリカは、本心はどうであれ、基本的にはフレンドリーな文化なので、そういう風になりやすいものかと思います。

 

「絆」から来る「助け合いの精神」は、日本の文化そのものだったはずなのですが、医療の現場、特に診療科間においては、どうしてもその連携がスムーズに行かないケースが多々あります。

 

これでも、ガチガチの医局制度によるナンバー診療科(第一内科など)の時代に比べれば、かなり改善したかもしれませんが、まだまだだと思います。

 

 

「診療科の垣根を越えた議論の場があること」により、どれだけ診療がうまくいくか、ひとりひとりの先生方が理解してもらえれたらと思っています。