今日は医療問題となると、巷でよく話題になる「セカンドオピニオン」について。
今や「セカンドオピニオン」という言葉は一般常識となっていると思いますので、もはや説明は不要かと思いますが、一応簡単に。
「セカンドオピニオン」とは、難しい病気や病態の際に、治療方針が複数存在するような可能性がある場合に、主治医だけでなく、他の医療機関の専門医の意見を聞くという紹介方法です。
他の病院や他科の専門医に紹介するということは、日常診療において、ごく当たり前に行われていることですが、この「セカンドオピニオン」というのは、「専門医から専門医」へ、「患者さんの希望」により行われるものということで、一般的な紹介とは別扱いし、セカンドオピニオン専用の外来は、通常よりもかなり長い時間かけて行われ、今後については、その意見をもとに、主治医と相談して、引き続き同じ主治医で診てもらうか、セカンドオピニオン先で診てもらうかを決めてもらうということです。
現代医療において、「セカンドオピニオン」が最もよく行われているのは、私が専門としない癌の領域です。
しかし、私達の専門であるリウマチ膠原病も難しい病気で、治療選択肢も複数存在することもあるため、セカンドオピニオンを希望される患者さんはいらっしゃります。
ただ、おそらくほとんどの患者さんが思うことは、セカンドオピニオンを希望すると、主治医との関係が悪くなるのではないか、ということを心配されるかと思います
それについて、ここに書こうと思います。
まず、患者さんがセカンドオピニオンを希望される場合は、どういう場合でしょうか。
治療がうまくいき経過が良好な患者さんが、セカンドオピニオンを希望することはありません。
セカンドオピニオンを希望される場合は、治療がうまくいかない時に限ります。
実は主治医としては、セカンドオピニオンは「大歓迎」なのです。
なぜなら、治療がうまくいっていない時は、主治医も困っているからです。
そういう時は、主治医も他の専門医の意見も聞いてみたいと思っているものです。
私の場合は、本当に困っている時は、大学病院の他の先生に相談したり、入院させたりしますので、その場でセカンドオピニオンを求められることは、あまりありませんが、それでもうまくいかない場合は、私達も非常に悩んでいるものです。
困っているのであれば、こちらからセカンドオピニオンを提案してみるのもありではないかと思われるかもしれませんが、多くの場合でそれはとても難しいことです。
例えば、治療がうまくいかなくても、主治医のことをとても信頼している場合があり、その時にこちらからセカンドオピニオンを提案した場合、これでセカンドオピニオン先の方が明らかに患者さんにとってよければいいのですが、もしセカンドオピニオン先で不親切な対応をされた場合、患者さんは路頭に迷うことになる恐れがあるのです。
なので、主治医のことを信頼しているが、治療に難渋している場合、むしろ患者さんの方から積極的に、セカンドオピニオンの希望を出した方がいいと思います。
セカンドオピニオン先の意見を元に、再び信頼している専門医に診てもらえれば、患者さんにとっても主治医にとっても、必ずプラスになりますので。
しかし、一つ注意事項があります。
確かにセカンドオピニオンは時として非常に有効な手段なのですが、「乱用」はよくないと思います。
特に慢性疾患であれば、山あり谷ありで、うまくいかないこともあります。
医療において、最も重要なことは、お互いの信頼関係です。
信頼出来る先生は、うまく行かない時も、必ず納得いくように説明し、その次の方針や予想される結果についても、しっかりと説明出来るはずです。
もしちゃんとそういう説明出来れば、主治医も困っている訳でなく、信頼していいものだと思います。
それでも、うまくいかない状態が続く場合、どのタイミングでセカンドオピニオンを希望するのがよいでしょうか?
一つは、説明が曖昧になった時です。
これは本来であってはあってはならないことですが、医者も人間なので、困っている時は説明が曖昧になることが多いです。
もう一つは、治療方針が変わらなかった時です。
それは、時に限界であることもありますが、それを納得することにより、現状を受け入れられ、結果的に病気とうまく向き合えることも期待出来ます。
そういう時に、セカンドオピニオンは非常に力を発揮します。
いい方針が見つかればいいのですが、そうでなくても、現状をしっかり理解することで、前に進むことは出来るはずです。
最後に、セカンドオピニオンを希望される場合に、絶対にやって欲しいことがあります。
それは、セカンドオピニオン先を決めた場合に、それを主治医に伝えることです。
実は、宛先空欄の紹介状を持って、自分の好きな医療機関を受診することは、可能です。
とりあえずセカンドオピニオンを希望だけ出して、どこにするかは家でゆっくり考える、という方もいらっしゃります。
しかし、そのセカンドオピニオン先が、明らかに問題のある所である可能性も少なくないのです。
基本的には、セカンドオピニオンは患者さんの希望が優先なので、それを拒否することは私達は出来ませんが、絶対にオススメ出来ないような所は、患者さんのためにも考えを改めるよう、しっかりと説明する義務はあると思います。
なので、一番現実的な方法は、セカンドオピニオンの選択肢を予め考えておいて、外来で具体的な希望先を伝えることだと思います。
以上、セカンドオピニオンについては、世間ではよく言われているものの、患者さんにとっては未だ敷居が高い印象であり、お互いにとって良好な関係を保てるセカンドオピニオンを実践するノウハウが普及すればいいと思いますし、私達も努力が必要だと思います。