ネットのニュースで、「患者と医師がすれ違ってしまう本質的な理由」という記事を見つけました。

http://toyokeizai.net/articles/-/169870

 

この記事では最終的に、患者さんが医療に関心を持ち、医療側の事情を理解することが大事だ、というような感じでまとめられているようです。

 

私のように医療側の人間からしてみれば、納得いく部分もあります(この記事を書いた方も医師ということですので)。

 

しかし、それは果たして可能でしょうか?

 

私は無理だと思います。

 

なぜなら、この記事に書かれている「医療の仕組みや体制」は、医療経済や病院経営を第一に考慮して築き上げられてきたシステムであり、その結果、残念ながら患者さんが受け入れがたい内容が多く含まれるからです。

 

この内容にある、急性期病院からリハビリ専門病院への転院については、その典型です。

 

ですので、知れば知るほど、すれ違いが大きくなる可能性があるのです。

 

実は私達にとっても、患者さんにどうやって説明すれば納得してもらえるか、非常に悩ましいことは沢山あるのです。

 

勤務医の立場から言わせてもらえば、医療経済や病院経営は、自分の直に影響を及ぼすことはほとんどありませんので。

 

結局、根本的な「医療の仕組みや体制」自体が、医者(特に勤務医)にとっても患者さんにとってもすれ違いが生じるから、結果的にお互いすれ違いが起こってしまう訳です。

 

それを改善させることは非常に重要な問題だと思いますが、残念ながらこの現状がすぐに変わるとは到底思えません。

 

であればどうすればよいか。

 

この記事には「症状など困っていることをまとめておく」ことや「わからないことや説明に不満があることはどんどん言うべき」という風に書かれています。

 

しかし、冒頭にある「3分診療」に患者さんが不満を持たれている場合は、医者としては早く捌こうとし、患者さんの話を聞くのを嫌がり、雑な診療になっているのが原因のはずです。

 

だから、まとめてはいるものの、症状が多彩な場合や説明するのが面倒な質問だった場合や、さっさと終わらせたいのに質問が多かったりすると、さらに雑な対応になり、余計にすれ違いが生じる可能性もあります。

 

これは完全に医者の問題であり、そもそも診察室で自分の症状をうまく説明出来なかったり、処方や検査の内容に疑問を持っていたことを医者に質問するのを躊躇する患者さんに問題があるとは思えません。

 

その一方で、患者さんに理解してもらいたいこともあります。

 

例えば、タクシー代わりに救急車を呼んだり、過去に問題ないと診断された同じ症状で、頻繁に夜間に病院を受診したり、夜間に緊急時の対応を超えた検査や処方を要求してきたり。

 

そういったことについては、別に機会があれば記事に書こうと思います。

 

でも、これらに関しても、実はほとんどの場合で医者や看護師の対応の仕方次第で、状況は大きく改善するものだと思っています。

 

 

この記事にある、急性期病院からリハビリ病院や療養型病院への転院の場合。

 

私の場合は、入院したその日に本人と家族にしっかり説明するようにしております。

 

どのような説明をするかは、話しが長くなるのでここには書きませんが、入院した時の状態が安定していなくても、転院を含めてよくなった時の予定をしっかり話した方が、逆に信頼して話しを聞いてくれて、転院もスムーズに行きやすいことは、経験から分かっています。

 

急性期の状態が悪い時に転院の話をすることに抵抗を感じ、よくなってから急に転院の話しにもっていく医者も多いですが、記事の内容にあるようなもめ事になりやすい思っています。

 

 

問診については、患者さんから積極的に話す内容を重視しますが、こちらから聞き出す技術は、医者としての必要な技術です。

 

そして、インフルエンザやノロウイルスの検査をせずに診断をつけることや、下痢止めを処方しない理由を患者さんに納得いくように説明することは、それほど難しい技術だとは思いませんし、当たり前のことだと思います。

 

 

個人的な意見としては、医者は患者さんとすれ違いが生じるような内容に予めアンテナを張って、誤解が生じないように先回りして、必要以上に丁寧かつ強調して説明して対応することは、私達が努力すべきことだと思います。

 

なぜ私がこういうことを強調するかというと、なかなかそういう風に考える医者が少ないからです。

 

その結果、それを指導出来る医者も少なく、いつまで経ってもこのすれ違いを改善出来る能力を持った医者が育たないことを懸念しているのです。

 

すれ違いは医者が解決すること。

 

これが原則だと思います。