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スコットランド生まれの哲学者ヒュームの歴史家としての顔が見られる評伝。『イングランド史』について概ね肯定的に論じられています。


しかし、ヒュームに限らずですが、啓蒙思想時代の人種主義(白人至上主義)については、どう乗り越えていくのか、批判的に論じる必要があるでしょう。

その問題はあとで触れるとして、彼の交友関係から。

ヒュームの親友であったアダム・スミスの道徳哲学に影響を与え、有名な『国富論』が形成されていく、というエピソードは重要。

スミスには、『道徳情操(感情)論』という主著もあります。
実は彼ら2人を結ぶのが、「共感(sympathy)」という概念。
人間性の根底には、他者への「共感」がある、と彼らは見ています。

ここで、ちょっと脱線。
イギリス哲学と一口に言っても、ベンサムやミル、スペンサーらとは、派閥が違う気がします。

ぼくの印象では、「人間」への深い洞察を行ったのがヒュームとスミス、「社会(政治・経済)」を総合的に捉えようとしたのがベンサム、ミル、スペンサー。(もちろん一面的な見方ではありますが)

共感理論(ヒューム・スミス)vs功利主義(ベンサム・ミル)

品川哲彦先生の著作(『倫理学入門』中公新書、2020)からは、そう分類できます。
※スペンサーは、社会進化論や生物学、天文学その他ジャンル(守備範囲)が広すぎて、一個の立場、主義には収まらないと思いますので、とりあえず除外します。

さて、ヒュームに戻れば、彼については、主に哲学者や倫理学者、ときに社会学者や政治(哲学)者、法(哲)学者が注目してきました。

しかし、同じ人文・社会系のなかでも、歴史学者はあまり注目してこなかったのではないかと思います。
その影には、啓蒙思想時代の「人種主義」(白人至上主義)があったことは、否めないでしょう。ただ、批判的に検討する必要はあると感じます。(藤川隆男編『白人とは何か?』刀水書房、2005など)

イギリスの哲学者でいえば他にもホッブズやロックらが人権の基礎づけの議論で引用されます。
しかしながら、「基本的人権」が目指されるとき、結局のところ、白人至上主義が前提になってはいないのか、ここはreflective(自省的)に考察しなおすべきではないでしょうか。