実はヴェノムであることが発覚しツイッターで一時話題となった『若おかみは小学生!』


なんか聞いたことあるタイトルだなあと思ってたら小学生の頃みんなが読んでいたフチが青っぽい『青い鳥文庫』の本だったんですね。


そんな知識の無さっぷりを存分に発揮したぼくは予告編を観ても『ほーん昔子供だった人たちが喜びそうじゃないの。盛り上がるといいねえ』と自分とは全く異なる世界であろうこの映画にまったく見向きもしなかった。

ところが。

なんだ。何かツイッターの様子がおかしい...
皆口々に『若おかみは小学生!』の絶賛レビューをあげている...

え?フィルマークス(映画の感想書くサイト)初日満足度1位????

これは大変だ。俺はミーハーじゃないから感をそれとなく振りまいておきながら、実は誰よりもミーハーなこの僕は早速『若おかみは小学生!』を観に行った。

どうだったか。




多幸感がすごかった。

なんだろう、この感じはなんだ...?
牛丼食べたいなあと思って牛丼食いに行ったら乗っかってる牛肉が松阪牛だったような...そんな贅沢感を感じた。

引くほど表現が下手だ。要所要所をかいつまんで感想を述べることにする。


(僕は映画の感想を言うときネタバレを極端に避けたがる癖があるため読んでてモヤモヤしてしまうかもしれませんがご了承いただけると幸いです。映画観ればモヤモヤしませんよ。)


幸せその1:作画

まず映画開始5秒くらいで水がピッチャピチャなのだ。さっそくネタバレを恐れて省略しすぎてしまった。少しネタバレをすると舞台は温泉街。だから別府みたいに温泉がそこら中で流れてるんだけど、そのお湯のしたたりがもうあまりに液体すぎてピッチャピチャなのだ。

作画監督を調べてみると『紅の豚』とか『千と千尋の神隠し』とかで作画監督を務めた賀川愛(かがわめぐみ)という方でした。どおりで水が滴りまくっていたわけだ。

そんな感じでこの映画では人物から小物までよく動く。動くとそれだけ画面が賑やかで楽しくて僕は大好きだ。かと思ったら重厚で精密な背景(書庫の場面が好き)がグワァーッと出てきたりするもんだから油断ならない。こんなに観てて楽しいものを映画館で観れて本当に良かった。


2:おっこの成長を支える人々

まずは主人公の「おっこ」だ。訳あって小学生ながら女将見習いとして頑張っているのだけどその「訳」が中々に辛い。(あ、この訳のおかげで幽霊が見えるようになりました)
お話としてはよくあるシチュエーションなんだけどあそこまで丁寧に描写されるとそりゃ感情移入せざるを得ませんよ。
それでもおっこは明るく気丈に生きている。でも映画を見ている側としては、おっこがとても危ないバランスで生きていることがわかってしまう。そこがなお一層辛い。

でもおっこには周りに支えてくれる人がいっぱいいるんです。ポスターに乗ってる幽霊2人、鬼、旅館で女将を務めているおばあちゃん、仲居さんに料理人のおっちゃん、そしてお客様、色んな人と出会うことでおっこは女将としても人間としても力強く成長していくんですね。

そしてそして何よりポスターの後ろでオホホホホな雰囲気を醸し出しているピンフリ真月様の存在はでかい。

真月様は温泉街の中でもダントツに豪華な旅館の経営者の一人娘。見かけどおり高飛車で偉そうでおっこの住む旅館をバカにする第一印象最悪の娘である。
まあ大方の人の予想どおり、真月様への好感度は最終的に跳ね上がる。といっても性格が激変し『私が悪うございました』と改心するとかそういう方向性ではない。
一見キツイ性格ながらも行動や発言には常に一本の芯が存在していてブレることはない、様々なアイディアをカタチにし、我が道を行くその姿は『大人が憧れる大人』の姿。(『王様ランキング』が好きな人は好きなキャラかもしれない)
これが真の真月様である、と見ていくうちに気がつく訳ですよ。小学生の段階ですでにそこまでの域に達しているとはおっそろしい。そんな真月様のカリスマぶりは必見だ。その服装は許されるよ。

3:ストーリー

それまでの人生とは全く異なる世界に放り込まれたおっこが様々な人と触れ合って成長していく一年間を丁寧に描いている。言ってしまえばかなり使い古された王道ストーリーだけど、最終的に王道が1番ってところはありますよね。中華料理屋のチャーハンみたいな。物語は様々なお客様と出会い、問題を一つずつ解決していくショートストーリーで構成されている感じだろうか。その話の一つ一つがとても温かく、問題解決の過程も見ていて楽しいのでとても幸せ。特に占い師の人の話が好きです。おっこのファッションショーが観れるぞっ。

また、終盤ではショッキングな事実を知ることになるのだけども、そのことに対するおっこの出した答えがまあ立派!!!!聖母なのか君は!!!
一部で冷血動物と囁かれているぼくでも泣きそうになっちゃいました。まあ実際に泣く事はないのですが。ぼくの涙腺は黒部ダムより頑丈なのでトイストーリー3並の災害じゃなければ泣きません。がはは。  

ただ、本作の大きな特徴である2人の幽霊の存在、あの2人はこの映画の物語においてそんなに重要な存在ではなかったなあ。女将となるキッカケになったぐらいだろうか。原作ではもう少し深掘りされているんだろうけど、少なくともこの映画では必要性があまり感じられなくて勿体無い気がした。不満点終わり。

ということで作画、登場人物、ストーリーとアニメ映画の基本...あれ?全てではないか?まあいいや、とにかく色々楽しめた幸せいっぱいの映画なのでした。




はい、じゃあここからが本題なのですが。

僕が映画館でこの映画を見た時、映画館には僕、おにーさん、おねーさんの3人しかいなかった。


3人しかいなかったのだ。


なんてこったい!!こんなに豊かな気持ちになれるいい映画の観客が3人!?!?

まあ平日のお昼という忙しい時間帯に見に行ったのが悪かったのかもしれないけれど、それにしたってもう少し観客がいてもいいじゃないか。

ということで皆さん、この映画は観なきゃ人生損する訳でも、話題についていけなくなる訳でもありません。

ただこの映画が埋もれてしまうのはもったいないから特にやることもなく暇な人は今すぐ街へ出て『若おかみは小学生!』を見て興行収入をあげてついでに話題にしてくれるととても嬉しい。

今回はそんな超長いお願いでした。さあ映画館へGOだ。こらこらそっちはプレデターだぞ。