声真っ二つに折れた体から剥がれ落ちた、いくつもの鱗は、ゆっくりと下降して行った。そして、とらえたはずの声は泡となって上昇して行った。奪われた時間は、別の水槽のガラスの向こう側で泳いでいる。いくら叩いても、この小さなヒレでは何の役にも立たない。体をぶつけたところで、鱗は剥がれ、時間が埋もれる海底へ下降して行くだけ。諦めの無い無意識は、やがて体に亀裂を入れた。時で埋れた海底の中に、あの日忘れた鱗がまだあるんだ。この折れた体と剥がれ落ちた鱗は、ゆっくりと下降し又無意識の中に身を委ねるだけだ。せめてこの声だけ、泡となって上昇してくれないだろうか。そして、あの月を目指してくれないだろうか。声声