☆片思い世界

 脚本が坂元裕二、監督が土井裕泰、広瀬すず、清原果耶、杉咲花のトリプル主演ときたら、観るしかないでしょ。

 映画の冒頭、清原果耶演じるさくらが、夜の街の中をひょいひょいと人を交わしながら歩いている。このシーンで何だか面白そうだと思った。「あれ、どうしてバスの中やコンサート会場で大声を出しても誰も気が付かないの?」と思っていたら、成程、そういう設定かと納得。

 映画館では、かなり前から予告が流れていた。その中で、走っていた3人の少女が振り返るというスローモーション映像が美しくて気になっていた。どこで使われるのかと思っていたら、一番ポイントになるシーンだった。

 主役の3人はみんな熱演で、難しい役を楽しんで演じているように感じた。3人のファンなら必見。また、この映画は横浜流星の存在が光った作品でもある。映画の中で歌われた曲がとてもいい。今後、本当に合唱コンクールで使われるのでは。

 坂元裕二脚本の映画では、2月に公開された「ファーストキス」がある。どちらも甲乙つけがたいが、個人的には「ファーストキス」の方が好きかな。また、犯人が3人の少女の命を奪った理由は何なのか、今は更生して真面目に働いている犯人に対して、一人で包丁を持って会いに行く母親がいるだろうか、などということが気になったのは私だけ?

 

☆ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今

 レネー・ゼルウィガー主演の世界的ヒット作「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズの9年ぶりの新作となる4作目。

 4年前、最愛の夫マークを亡くし、悲しみの中でシングルマザーとして2人の子どもを育てるブリジット。テレビ局の仕事に復帰したある日、年下のロクスターと出会って付き合うことに。その一方、厳しい理科教師ミスター・ウォーラカーが息子ビリーに対する優しさを知り、どこか気になる存在となる。さて、アラフィフになったブリジットは、この先をどう歩むのか。

 さすがに年齢を感じるレネー・ゼルウィガーだが、ブリジット・ジョーンズのキャラは以前のまま。それがまたいい。若い恋人に胸をときめかせるブリジットが何とも可愛い。しかし、ブリジットのことを真剣に考えているのは別の男性。その人との距離が徐々に縮まっていくシーンが素敵だ。観ているこちらもドキドキしてしまった。

 レネー・ゼルウィガーの熱演は言うに及ばず、脚本の出来が素晴らしい。「サイテー最高な私の今」というサブタイトルの通りの展開。この作品だけを観ても楽しめるが、できれば過去作を知って鑑賞した方がいいだろう。続編もありと思ったが、エンドロールの映像を見るとこれが最後かも。

 

☆名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)

 国民的大ヒットアニメシリーズ「名探偵コナン」の劇場版28作目。長野県警の隻眼の警部・大和敢助がキーパーソンとなり、長野の雪山を舞台に巻き起こる過去と現在の事件を描く。

 毛利小五郎に焦点が当たり、全体的に大人の事情が入り乱れたストーリーという感じがした。雪山が舞台だったり、天文台が出てくるのは面白いが、いくらアニメとはいえ、ちょっと無理がある設定なのでは。特にラスト近く、雪上で犯人を追いかけるシーンはやり過ぎの感あり。しかし、そこを突っ込んだらこのアニメはストーリーが成り立たない。その他の伏線回収は、映画としては当然だろう。

 証人保護プログラムの国内導入の議論を取り込んでいることには感心した。しかし、壮大な犯人の計画があるわけでもなく、結局、私怨での犯罪だというのにはガッカリ。第一、犯人に魅力がない。

 登場人物が多く、人間関係が複雑なので、小さなお子さんが観て面白いのだろうかと思ってしまった。派手な仕掛けを楽しみたい人は文句がないのかもしれないが、コナン映画の出来としては中の上くらいといったところ。2年前の「黒鉄の魚影(サブマリン)」には遥かに及ばない。監督と脚本は交代してもいいのでは。

 公開2日目の朝8時台の上映回だったが、観客はほぼ満員だった。上映後、ロビーには人が溢れていた。この人たちのほとんどがコナン映画を観るのだろうと思った。さすがに今年も大ヒットになるに違いない。また来年の作品を楽しみにしよう。

 

☆花まんま

 第133回直木賞を受賞した朱川湊人の小説を、鈴木亮平と有村架純の初共演で映画化。早くに両親を亡くし、たったひとりの妹の親代わりとして生きる熱血漢の兄・俊樹を鈴木、奇妙な記憶と秘密を抱えた妹・フミ子を有村が演じた。

 大阪の下町を舞台にした、妹思いの兄と、しっかり者の妹の、よくある人情もののストーリー。ちょっとスパイスを加えているのは、フミ子には亡くなった別の人の記憶が入っていて、兄に内緒でその家族とやり取りを続けているというところ。

 妹の結婚式で感動的なスピーチをするというのもありがちなパターン。そこを承知でウルッとくるかどうか。ミエミエの感動の押し付けだと引いてしまう人がいてもおかしくない。私は兄がどんなスピーチをするのか興味があった。一番いいと思ったのは、射的のお店の人が、当たっていないのにぬいぐるみをくれたというところ。「そんな周りの人に今まで支えられて生きてきた…」の言葉にぐっときた。

 酒向芳、キムラ緑子、六角精児などのベテラン勢の中で、わが街出身の鈴鹿央士君が頑張っていた。烏の言葉が分かるというのがいい。また、ファーストサマーウイカが、抜群の存在感を発揮していた。昨年の大河ドラマでも感心したが、今後も役者として活躍するだろう。目立った存在ではないが、亡くなった繁田喜代美役を演じた南琴奈が美しかった。これから出てくる人かも。

 メガホンを取ったのは、ベテランの前田哲監督。堅実な演出で、この人の作品は外れがない。これからも良質の映画を作り続けてほしい。