☆エイリアン ロムルス
「エイリアン」シリーズは全て観ている。第1作はリドリー・スコット監督が作った伝説的な作品。個人的にはジェームズ・キャメロン監督の「エイリアン2」が最高傑作だと思っている。もう何度観たことか。今回は1作目の「その後の物語」が展開される。
主な出演者が若者というのがミソ。以前の作品に比べたら大幅にアップした最新VFX技術により、宇宙空間や宇宙船の内部、エイリアンの細部まで驚くような映像の連続。特に進化したと思ったのは音である。劇場で観ていると音の恐怖が凄い。
古くからのファンなら、1作目と2作目を思い出させるシーンにニヤリとしたのでは。過去作をリスペクトしながら新しい作品を作ろうとしている姿勢には好感が持てた。ラストはああなることは分かっていながら、思わず「ホゥ~!」と唸ってしまった。
主役のレインを演じたケイリー・スピーニーは熱演で、誰もが共感しただろう。しかし、エイリアンと戦う女性といったら、シガニー・ウィーバーのリプリーを思い出してしまう。貫禄不足は仕方ないので、今後の作品に期待しよう。
文句を言う人もいるだろうが、個人的には面白かった。新作が出来たらまた観るだろう。
☆スオミの話をしよう
「三谷幸喜・最高傑作」で「極上のミステリー・コメディ」とか。三谷幸喜と主演の長澤まさみがテレビに何度も出演して、宣伝に熱が入っていた。公開前から「最高傑作」などというのは何ともうさん臭い。
さすがの三谷脚本だけあって、スオミを取り巻く5人の夫たちの描き分けはうまく出来ている。中でも現在の夫・寒川を演じた坂東彌十郎は貫禄の演技。大河ドラマでファンになった人も多いのでは。西島秀俊のコメディ演技もいい感じ。三谷作品常連の宮沢エマや、若い戸塚純貴の配置も考えられている。
しかし、ちょっと大げさにやり過ぎた感あり。私が観た回では、コメディなのに劇場内で笑っている人はいなかった。映画が終わって明るくなったら、「どうだった?」といった微妙な雰囲気で、観客同士が顔を見合わせていた。
三谷幸喜が長澤まさみの大ファンで、「長澤まさみの、長澤まさみによる、長澤まさみのための映画」を作ったという感じ。舞台作品として観たら、もっと楽しめたと思える内容である。
長回しのカメラは、三谷幸喜の監督としての力量を十分に感じることができる。三谷テイストを十分に理解して観ることをお勧めする。
☆あの人が消えた
「交換ウソ日記」や「からかい上手の高木さん」に出演し、今、ノリにノッテいる高橋文哉が主演。「次々と人が消えるマンションを舞台に、完全オリジナルストーリーで描くミステリー・エンターテインメント!!」だとか。
この映画を面白いと言う人もいるだろうが、個人的には刺さらなかった。テレビのミステリードラマでいいのではと思ってしまった。ほぼマンションだけを舞台にして、お金をかけずに作りましたという感じ。
脚本をかなり練ったのだろう。観客を終始ミスリードしている。確かにラストで「あの人」も消えたので、そこを面白いとするかどうか。逆に言えば「あの人」を消すために脚本を組み立てたのだろう。
個人情報を詮索するような、あんな宅配の配達員がいるだろうか。アホな交番の警察官に相談するより、早く110番通報すればいいじゃないと思ってしまった。
染谷将太はいいにしても、菊地凛子はあの程度の役で出演する必要があったのか。中村倫也に至っては、ほんのゲスト出演程度。私が持っている映画のチラシには、中村倫也の名前すら載っていない。昨年の大河ドラマで存在感を発揮した北香那の美しさだけが好印象。
このテの映画がお好きな人はどうぞ。観客はパラパラ程度だった。
☆Cloud クラウド
菅田将暉と黒沢清監督がタッグを組み、共演が古川琴音とくれば観るしかないと思い劇場へ。ヴェネチア国際映画祭正式出品作品とか。
「転売ヤー」として働く主人公の吉井(菅田将暉)は、知らず知らずのうちに憎悪をばら撒き、被害を受けた人たちはネット社会によって「狂気集団」へとエスカレートしていく。やがて「狩りゲーム」の標的となった吉井の日常は破壊される。命を狙われる吉井、逃げ切ることができるのか。
何だか気持ちの悪いシーンが連続する。これが黒澤清監督の世界観だと言われて納得するかどうか。いくらネット社会の闇を描くとはいえ、強引にストーリーを進め過ぎた気がした。説明のつかない人物が多すぎる。
目をかけていた会社の部下が突然退社をし、居留守を使ったからといって殺意まで感じるだろうか。転売ヤーの後輩に先を越され、事業への投資を断られたからといって恨みを感じるだろうか。健康器具会社の社長は、吉井に売れ残り商品を渡すことに同意したのでは。吉井に解雇された佐野だが、なぜか吉井を助け、電話一本で銃の手配から死体処理まで依頼することができる。裏社会とのつながりが想像できるが、コイツは一体誰なの。窪田正孝演じる村岡が「助けてやる」と言っているのだから、とりあえず助かった方がいいのでは。あのラストはどういう意味?あれこれ指摘し始めるときりがない。
全く共感できない吉井だが、菅田将暉はさすがの演技。黒澤清監督の世界と菅田将暉のファンならどうぞ。