☆マッドマックス フュリオサ

 傑作だった前作「怒りのデス・ロード」から9年、新作の「フュリオサ」がやっと公開された。私も含め、「怒りのデス・ロード」に度肝を抜かれた人なら絶対に観たくなる作品である。

 主人公のフュリオサが10歳で連れ去られ、母親を殺されてからの成長と復讐の物語である。今回もド派手なぶっ飛びアクションシーンが繰り返される。確かに観ている間はワクワクするのだが、何か物足りなさを感じていたのも確かだ。「怒りのデス・ロード」ほどではないし、スケールが小さくなったような気がした。

 フュリオサの少女時代からの成長を描く内容なので、最初から強くないのは当たり前だろう。フュリオサを演じたアニャ・テイラー=ジョイは大変な力演だと思う。美人だしセクシーでもある。個人的には好みなのだが、前作のシャーリーズ・セロンと比べると見劣りするのは仕方がない。また、CGの出来も前作ほどではない気がした。

 目新しさはないものの、「怒りのデス・ロード」への繋ぎは見事だった。ファンならば、ラストでニヤリとしたことだろう。

 楽しく観たが、「怒りのデス・ロード」には及ばないというのが正直な感想である。世界的には興行面で不振だという。これで終わってしまったら、多くファンが許さないだろう。ぜひ次回作で「怒りのデス・ロード」以上のぶっ飛び映画を期待したい。

 

☆からかい上手の高木さん

 原作の人気コミックもアニメ映画も知らない。単純にこの映画の感想となる。高橋文哉は嫌いではないし、永野芽郁のファンなので観に行くことに。

 からかいというのは、一歩間違うといじめになってしまう。しかし、好きな人をわざとからかったりするというのは、いつの時代でもあるもの。その辺りの微妙な関係をどう描いているのか気になって観ていた。

 結果は、大成功と言える。これはもう主役二人が、高木さんと西片になりきっているからだろう。いじめどころか、観ている方は何とも微笑ましくてまどろっこしい。しかし、そこが面白い。

 永野芽郁の魅力が爆発している。この高木さんの雰囲気は、永野芽郁のキャラがよく似合っている。全編を小豆島で撮影したらしいが、特に観光スポットが強調されて出てくるわけではない。日常の島の風景を上手く映画の中に取り入れているのがかえって良かった。長回しの告白シーンは見ものだが、もう少し短くてもいいのでは。「一気に結婚まで行くか」と思った。

 大関みき役を演じた白鳥玉季ちゃんの美少女ぶりにも目を奪われた。子役の時から注目しているが、今後の活躍が楽しみだ。

 デート映画として最適なのか、劇場は若者でほぼ満員だった。私くらいの年齢の男が一人で観るにはちょっと勇気が必要だ。

 

☆ディア・ファミリー

 世界で16万人の命を救ったバルーンカテーテル誕生の実話に基づく物語。心臓疾患を抱える娘の命を救うため、人工心臓を作ると立ち上がる父親の坪井役を大泉洋が演じている。

 坪井は小さな町工場の経営者で医療にはズブの素人。「娘の命を救いたい」の一心で心臓の勉強に励み、有識者に頭を下げ、資金を用意する。その間にも「余命10年」のタイムリミットが迫ってくるというストーリー。

 娘のために奔走する父親を演じた大泉洋が見事だ。大泉洋のワンマンショーと言ってもいい。妻の陽子役の菅野美穂の献身ぶりも見応えあり。ただ、心臓疾患を抱える娘・佳美役を福本莉子が演じているが、あまりにもきれい過ぎて病気の女の子に見えない。高校生役もちょっと無理あり。川栄李奈はもっと無理。三女の寿美を演じた新井美羽だけが年齢相当の役に見えた。

 単なるお涙頂戴映画ではないところは好感が持てる。ラスト近く、坪井が開発したバルーンカテーテルが、他の国の子どもの命を救うというシーンが印象に残った。

 有村架純がどうしてこの役で出演しているのだろうと思っていたが、ラストで納得。私が一番感動したのは、実を言うと有村架純とのエピソードである。

 

☆言えない秘密

 アジア圏で大ヒットした同名の台湾映画があるらしいが全く未見。古川琴音のファンなので観に行くことに。

 若い二人が音楽を通じて知り合って愛を深めるというのはよくあるパターン。事情を抱えた主人公が、恋する人に巡り会うことによって癒され、立ち直るというのもありがちだ。おまけに相手の女の子を見ると、すぐにこの娘は病気で亡くなることが読めてしまう。その辺りを脚本でどううまく処理するかがポイントだろう。

 主役の湊人を演じた京本大我は予想以上の熱演だった。役者でも十分にやっていけそうだ。相手役の雪乃を演じた古川琴音は、こういうミステリアスな役がよく似合う。昨年の大河ドラマでファンになった人も多いのでは。

 いつもの病気もののラブストーリーかと思って観ていた。すると、なるほどそうきたかという感じでちょっとびっくり。それで「言えない秘密」だったのかと納得した。トイピアノが懐かしかった。ストーリーの中でもうまく使われていた。

 ただ、例の曲を演奏することによって風景が一変するところのCG処理はちょっとやり過ぎの感あり。また、うまく演じているように見えて、やはり別の人がピアノを弾いていることがバレバレなのも残念だった。

 京本大我と古川琴音のファンならば必見だろう。私はこの程度では泣けないが、館内ではあちこちからすすり泣きの音が聞こえた。この手の恋愛映画を観たい人ならお勧めだ。