私の住む地方は、まだ梅雨に入っていない。今のうちに大山(弥山)登山に行こうと思い立った。大山に行くのは6年ぶりのことである。以前行った時はNHKの「グレートトラバース3」で田中陽希さんが登った10日後くらいだった。「グレートトラバース」を熱心に見ていた私は、大山に陽希さんが来たと知り、ぜひ同じ頃に登りたいと思った。あの時も今回と同じ6月半ばだった。

 6時前に自宅を出発した。高速道路を乗り継いで大山の麓に着いたのは8時過ぎだった。以前は下山キャンプ場の駐車場に車を止めた。しかし、今回行ってみると有料駐車場に変わっていた。無料で登山口に一番近い南光河原駐車場は、当然ながら満車だった。仕方がないので、少し離れた第4駐車場まで移動した。

 車から出ると、私と同じ目的で来ている多くの人が出発の準備をしていた。この日は数日前まで雨の天気予報だった。しかし、いいように予報が外れてくれて、見上げると青空が広がっていた。のんびり歩いて南光河原駐車場に行き、トイレを使わせてもらった。登山届を書いている人がいたが、私はネットで出している。

 駐車場では男女数人の若者のグループが出発の準備をしていた。みんな真新しい登山服を着ていて、まぶしいくらいだった。私のように薄汚れたザックを背負っている人などいない。そういえば、以前来た時もこのザックと一緒だったことを思い出した。

 夏山登山道に入ったのは8時26分だった。木漏れ日の中を登っていく。阿弥陀堂に寄り道をして登山道に戻ると、前を二人の女性が歩いていた。すぐに追い越して先に進んだ。この辺りは出会う人が少なかった。しかし、蒸し暑くて、汗が噴き出してくるのを感じていた。

 木段を汗を流しながら登って行った。四合目を通過し、標高も1200mになる辺りから徐々に人が多くなった。4人の高校生の男の子のグループがいた。大きな声で会話をしていて、最初はうるさいくらいだった。しかし、しんどくなったのか、徐々に会話が少なくなった。この高校生のグループとは、下山するまで、ほぼ行動を一緒にすることになる。

 五合目の「山の神さん」に登山の無事を祈願し、さらに登って行った。ところどころ樹林の切れ目から景色が見え始めるのはこの辺りからである。

 六合目の避難小屋に着いたのは9時40分ころだった。15人くらいが休憩していた。弥山~剣ヶ峰~ユートピア避難小屋~三鈷峰~甲ヶ山へと続く稜線がきれいに見えた。剣ヶ峰への縦走は禁止だが、三鈷峰や甲ヶ山へはいつか登ってみたいものである。

 七合目を過ぎると、徐々に高い樹木が少なくなった。下山してくる人が多くなったのもこの辺りからである。遠く日本海の景色が見えるので、休憩を兼ねて何度も立ち止まった。

 八合目を過ぎて、いよいよ木道になった。有名な大山キャラボクの間を縫うように木道が続いている。気持ちがいいのだが、風が強くなって寒く感じるくらいだった。以前行った石室への道は工事中のため、立ち入りが禁止されていた。

 頂上までもう少しという辺りまで来た時、木道から鉄板道へ変わった。本来の木道は補修工事が行われていた。工事をしている人が一人だけいたが、この人は工事のために毎日ここまで登って来ているのだろうか?

 避難小屋の横を通り、頂上に着いたのは10時半を過ぎた頃だった。2時間ちょっとで登頂できた。頂上広場には30人以上がひしめいていた。ホッとして「大山頂上1709M」という碑の近くにザックを下ろした。しばらくすると、高校生の男の子のグループもやって来た。

(後編へ続く)