以前、蒜山三座縦走をしたのは2018年10月のことである。下蒜山から登り、中蒜山、上蒜山へと縦走した。あれから何度か蒜山に登ったが、三座縦走はしていない。中蒜山と上蒜山をピストンしただけである。次に三座縦走するなら、逆に上蒜山からスタートしようと思っていた。

 5月下旬の晴天の日、気候もいいし、6年ぶりに縦走しようと思い立った。6時前に自宅を出発し、高速道路を乗り継ぎ、上蒜山駐車場に着いたのは7時40分頃だった。もう15台くらいの車があった。車外に出ると空気が冷たくて寒く感じるくらいだった。

 隣の車の方が出発の準備をしていた。30代のご夫婦のようである。車から自転車を降ろしていたので、「サイクリングをされるのですか?」と声をかけた。すると、自転車で下蒜山の登山口まで行き、三座縦走をするという。先週、中蒜山に登ったので、今度は縦走をしようと思ったとのことだった。以前、下蒜山から縦走した時のことを話していると、続々と他の登山者の車も到着していた。

 ご夫婦に「途中、どこかでお会いしましょう」と声をかけて歩き始めたのは7時50分くらいだった。体力のことを考えて、最初はゆっくり歩こうと思っていた。ジャージー牛を横目に見ながら牧場の中を歩き、上蒜山登山口に到着した。

 杉林の中の木段を上っていく。ゆっくりゆっくりと自分に言い聞かせた。二合目でストックを準備した。ストックを使うのも久しぶりである。歩いているうちに寒さはなくなり、むしろ汗ばんできた。

 五合目辺りまで来て立ち止まった。振り返ると、遠く新庄村の毛無山から続く稜線がきれいに見えた。六号目を過ぎたあたりで、初めて人とすれ違った。トレイルランをしている男性で、あっという間に通り過ぎてしまった。その後も何人か下山している人と会った。トレイルランをしている若い女性もいた。

 八合目の槍ヶ峰に着いたのは9時頃だった。上蒜山の登山道の中で一番のビューポイントだが、誰もいない。ザックを下ろして休憩した。吹き抜ける風が気持ち良かった。烏ヶ山から大山が見えた。大山の頂上付近には雲がかかっていた。反対方向には、これから歩く中蒜山、下蒜山が見えた。再び歩き始めると、樹林帯の中に入った。日差しが強くなってきたので、日陰が心地よく感じられた。

 9時20分、上蒜山頂上に到着した。40代くらいの男性3人がいて、それぞれがバーナーでお湯を沸かしていた。一服した後、3人に「三角点まで行ってきます」と声をかけて奥に入って行った。ザックは置いたままにしておいた。

 6年前に初めて来た時、三角点への道はヤブに閉ざされていて、かすかに踏み跡がある程度だった。赤テープを頼りに20分くらいヤブコギの末、やっとたどり着いたものだ。今はヤブ刈られていて、5分も歩けば到着した。久しぶりに見る上蒜山の三角点の上には、撮影に使う小さな三脚が置いたままになっていた。誰かが忘れたのだろう。いつからあるのかわからないが、そのままにしておくことにした。

 ザックのところまで戻ると、さっきお湯を沸かしていた3人はカップラーメンを食べていた。その中の一人が、「奥に何があるのですか?」と聞いてきた。三角点のことを説明したが、どうやら三角点自体を3人とも知らないようだった。「せっかく来たので、三角点まで行ってみたらどうですか」と答えた。3人は下蒜山から縦走してきたと言っていた。

 3人に別れを告げ、中蒜山に向かって歩き始めたのは9時40分くらいだった。すぐに樹林帯の中の急な下りになった。何か所か鎖を垂らしているところもある。下から鎖を掴んで登ってくる人を立ち止まって待ったりした。ミレーのサースフェーのザックを背負った30歳くらいの女性に声をかけた。「上蒜山に行ってピストンするんですか?」と聞くと、「上蒜山から下山します」とのことだった。その他にも、大勢の人が中蒜山から上蒜山に向けて縦走しているようだった。以前来た時には、この辺りで滑って尻もちをついたことを思い出した。慎重に下って行った。

 樹林帯を抜けると、上蒜山へ向かうルートが見える。きれいな笹原が広がっていて気持ちがいい。また、日本海も遠望することができる。景色を楽しみながら登っていった。トレイルランで走りすぎる男性、男女の若者たちのグループとすれ違った。「お気をつけて」と声をかけると、みんなきちんと挨拶を返してくれた。

 再び樹林帯の中に入り、しばらくすると中蒜山の登山道と合流した。右折すると避難小屋である。気持ちの良い風に吹かれながら先に進んで行くと、中蒜山の頂上が見えてきた。20人くらいの登山者が休憩していた。時刻を確認すると10時半になっていた。1時間足らずで上蒜山から来ることができた。

(来週へ続く)