☆パストライブス/再会

 この日、別の映画を観る予定だった。しかし、テレビの「王様のブランチ」で、LiLiCoがこの映画を推していたので、急遽変更して劇場に急いだ。そして、この選択は正解だった。久しぶりに本格的な大人の恋愛映画を観た気がした。

 韓国・ソウルに暮らす少女ノラ(ナヨン)と少年ヘソンは、お互いに恋心を抱いている。しかし、ノラの海外移住によって離れ離れになってしまう。その2人が12年経ってオンラインで再会する。しかし、またすれ違ってしまう。さらに12年経って2人はノラの住むニューヨークで再会するが、ノラは作家のアーサーと結婚していた。さて、二人の運命は…。

 最近、歳をとったせいか、私は初恋の人を思い出すことが多い。今、あの人はどこでどんな生活をしているのだろうか。もしも初恋の人と再会することができたなら、どんな気持ちになるのだろうかと。そんな私にぴったりの映画だった。

 この映画のヘソンのように、男はいつまでも過去の思いの中で生きている。女性は過去を大切にしながらも現実を生きる。ノラはもう少女時代のナヨンではない。ノラはヘソンの気持ちが分かっている。しかし、もう24年の月日を元には戻せない。そして、これしかないというラストが待っている。

 ノラ、ヘソン、アーサーと、どの登場人物にも感情移入ができてしまう。私はアーサーがノラとヘソンに嫉妬するが、どうしようもないという描き方が興味深かった。初恋の相手には、やはり会わない方がいいのかもしれない。初恋の少女ナヨンは、もうヘソンの思い出の中にしかいないのだから。

 よく練られた脚本と的確な演出に何度もうなった。主役二人の熱演も見応え十分。これぞ大人の恋愛映画である。

 

☆名探偵コナン 100万ドルの五稜星

 大ヒットシリーズ「名探偵コナン」の劇場版27作目。毎年、公開を楽しみにしている人も多いのでは。私もその一人だ。昨年の「黒鉄の魚影」は傑作だった。しかし、今年はちょっと不安要素があった。それは、永岡智佳監督だったから。この人が監督した「紺青の拳」は不満足な作品だったし、「緋色の弾丸」に至ってはガッカリもいいところ。さて、今年はどうなのかと思いながら、公開されてすぐに劇場へ。

 結論から言うと、まずまずの作品だった。コナンが活躍するし、平次と和葉のラブコメ展開も微笑ましい。ラストで「怪盗キッドの秘密」が明かされるのも、ファンなら見逃せないところ。ただ、土方歳三にまつわる日本刀と、戦時中の軍需産業に関係する辺りのストーリーがやや複雑。頭の中で整理していないと混乱してしまう。私の隣に座っていた3人の男子高校生は、ストーリー展開についていけなかったのか、途中で飽きていた様子だった。

 ネット記事によると、5月3日までに興行収入が105億円を突破したとか。何度も映画館に足を運ぶ観客がいるということか。確かに、ミステリー、アクション、ラブコメという3要素がうまくミックスされている。「黒鉄の魚影」ほどの傑作ではないものの、ファンを魅了する作品になっているのは間違いない。

 

☆ゴジラ×コング 新たなる帝国

 2014年の「GODZILLA ゴジラ」から始まったハリウッド版「ゴジラ」シリーズと、「キングコング:髑髏島の巨神」(2017年)の世界観をクロスオーバーさせた「モンスター・ヴァース」シリーズの通算5作目。

 前作の「ゴジラVSコング」もそうだったが、この2大モンスターが出るというだけでストーリーは読めるというもの。観たいような観たくないような複雑な気分。しかし、私は過去の4作品を全て観ている。さて、今回はどんなバトルが展開されるのか。

 ほぼ予想通りのストーリーだった。スクリーンの迫力に圧倒されたものの、結局何だったのか、後に残るものはない。一番見どころのバトルも、もうそれくらいでやめてほしいと思ったくらいだった。ゴジラが全力で走り出すところは、真のゴジラファンなら観ない方がいいかも。いくらゴジラが活躍しても、そこはハリウッド映画、キングコングが主役になっている。一番かっこよかったのはモスラだろう。

 ハリウッド版のゴジラを観るたびに思うのだが、東宝はもっとゴジラを大切にしてほしい。せっかく「ゴジラ-1.0」で盛り上がったのに、何だか水を差された気分になる。やっぱりゴジラ映画は日本人が作らないとダメだね。伊福部昭作曲の「ゴジラメインテーマ」を聞かないと、ゴジラ映画を観た気にならないのは私だけ?ゴジラはキングコングの引き立て役ではない。山崎貴監督の次作のゴジラ映画を期待したい。