☆夜明けのすべて

 NHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で夫婦役を演じた松村北斗と上白石萌音がW主演を務める。瀬尾まいこの原作小説を三宅唱監督が映画化した。PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなる藤沢さん役を上白石萌音が、パニック障害を抱えている山添くん役を松村北斗が演じている。

 主役二人の自然体の演技が何とも心地いい。また、光石研が社長を務める下町の会社の人たちもいい人ばかり。みんなそれぞれの事情を抱えて懸命に生きている。こんな会社が本当にあるなら、ぜひ働いてみたいと思うくらいだった。

 職場の人たちの理解に支えられながら、同士のような気持ちが芽生えてくる二人。自分の症状は改善されなくても、相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。二人の心境の変化の過程が、ほっこりとした感情のやり取りの中で進んでいく。こちらもほっこりとした気持ちになった。人それぞれいろいろな事情があるが、ささやかな日常を大切にしたい。

 いい映画を観たという満足感でいっぱいだった。バックに流れる音楽も雰囲気があった。三宅唱監督の演出も素晴らしく、大勢の人にお勧めできる一作。藤沢さんと山添くんとの間には恋愛感情はなかったのかな?

 

☆劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦

 もう遥か昔のことであるが、中学生の時、私はバレーボール部に所属していた。今でもサッカーよりもバレーボールの方が好きである。多少ではあるが、バレーボールの楽しさは知っているつもりだ。しかし、原作漫画を読んだこともなければ、テレビアニメも全く知らない。よって、予備知識ゼロで単純にこの映画を観た感想ということになる。

 春高バレーの音駒対烏野の「もう一回」がない試合を中心に、前後の人間関係と友情を描いている。音駒の弧爪研磨の精神的な成長と、バレーに惹かれていく過程が中心になっている気がした。幼馴染の黒尾に勧められてバレーを始めたところ、烏野の日向翔陽との関係性が回想シーンとして挿入されている。テレビアニメから見ている人は「今さら…」といった感じだっただろう。

 この映画の一番の魅力は、迫力ある試合シーンだ。試合中の選手の動き、飛び散る汗、落ちてくるボールなど、臨場感たっぷりだった。一試合をそのまま映画で観たという気分である。音楽もそれぞれのシーンを盛り上げている。

 原作漫画やテレビアニメのファンにとっては、大満足の映画化作品だったのでは。長過ぎない上映時間も好感が持てる。大ヒットしているのも納得だ。ただ、私のように初めて「ハイキュー!!」を観るという観客もいるので、もう少し尺を取って人間関係を描いてくれれば、もっと感情移入できた気がする。

 

☆マダム・ウェブ

 はっきり言ってマーベル映画は苦手である。コテコテのCG画像が嫌い。この作品も最初は観る気はなかった。しかし、予告が面白そうだったので鑑賞することに。

 チラシには「マーベル初の本格ミステリー・サスペンス」とある。仕事で生死を彷徨う大事故に巻き込まれたキャシー・ウェブは、未来を予知する能力を得る。偶然出会った3人の少女たちが、スパイダーマンのような男に殺される未来が見えてしまう。キャシーは何とか少女たちを助けようとするという話。

 ネットでは酷評が多い。宣伝文句のようにミステリーでもなくサスペンス要素も薄いが、1本の映画としては悪くない気がした。少なくても途中で眠くなることはない。

 主役のダコタ・ジョンソンが美しい。3人の少女たちのキャラクターも描き分けができている。コテコテのCGスペクタクルを期待した人はガッカリだろう。しかし、未来予知というシンプルな能力を持ったこういうヒーローも悪くないのでは。気になったのは、ベンとキャシーが何かありそうで何もないところ、スパイダーマンのような男が蜘蛛の糸を使えないところくらいか。

 マダム・ウェブが誕生するまでのストーリーでエピソード1という終わり方だった。これで3人の少女とマダム・ウェブが活躍する続編がなければ嘘だろう。私は続編があれば必ず観るつもりだ。