☆エクソシスト 信じる者

 第1作目の「エクソシスト」が公開された時、世の中は大変な騒ぎだった。何しろ、アメリカでは映画を観た人の中で失神者が続出したというのだから。そんなに怖い映画があるのかと思ったものだ。怖いけれど観たい。友人を誘って映画館に行ったことが懐かしい。

 結果、まあ怖いといえば怖いけれど、よく分からなかったというのが正直な感想だった。悪魔祓いという宗教的な儀式が腑に落ちなかったのだろう。印象に残ったのは美しい音楽、エレン・バースティンとマックス・フォン・シドーの熱演、それにリンダ・ブレアの可愛らしさだった。その後、続編っぽい作品が2作作られたが、テレビで放送された時に見た記憶があるくらいである。今回の「信じる者」は、第1作の正統的な続編だという前宣伝だったので期待していた。

 ネット上のレビューは芳しくないが、私は悪くない作品だと思った。2人の少女が出てくるので、それぞれの家庭の事情を描くことになる。よって、前半がちょっと間延びした感があるが、後半の悪魔祓いの儀式のシーンは、現代の映像技術によって見ごたえのあるものに仕上がっている。悪魔に憑りつかれた少女の様子、吐き出す液体など、1作目のリスペクトも感じられた。神父の運命は予想通りだが、相変わらず宗教的なことは分からない。

 エレン・バースティンが懐かしい。「アリスの恋」を思い出した。ラストは、まさかまさかの展開。なるほど、そうならないとこの映画は完結しないのかと納得。半世紀を経た時間は無駄ではない。1作目を観てから本作を観た方がいいだろう。音楽はやはりこれしかないね。私は満足したが、観客はびっくりするほど少なかった。

 

☆あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

 特攻隊とタイムスリップを描いた映画なんて、今まで何度観たことか。でも、予告で観た福原遥の高校生の制服姿が可愛かったので劇場へ。

 予想をいい方に裏切る展開で、なかなか見ごたえのある作品に仕上がっていた。原作は未読だが、脚本と演出にかなりの力量を感じた。

 こういう映画は賛否が分かれるが、素直に観ればいいと思う。戦時中の街の雰囲気もうまく再現されているし、特攻隊の日常の描き方も悪くない。特攻を離脱したい隊員の気持ちも素直に理解できる。

 主役の百合を演じた福原遥はなかなかの熱演で、朝ドラからの成長を感じた。しかし、一番印象に残ったのは水上恒司の演技である。もともとバタ臭い顔つきなので、現代の若者は似合わない。戦時中だからこその雰囲気をよく表現していた。キャリアの中で最高の演技ではないだろうか。同時代を描いた朝ドラ「ブギウギ」に出演しているのも納得。また、千代を演じた出口夏希が印象に残った。福原遥に代わって主役でもよかったと思ったくらいである。伊藤健太郎がやっと復帰していた。

 ラストの知覧特攻平和祈念館のシーンで、劇場内は号泣する人が続出した。ここを見せるために今までのストーリーがあったと思えるくらいだ。しかし、映画を見慣れた人なら、このシーンは予測できたはず。冒頭で提示された母と娘の葛藤の解消、百合の将来なども予想通り。私はこの程度では泣けない。

 テーマに沿って丁寧に作られた映画であることは間違いない。観る価値は十分にあると言っていい。デート映画としても最適かも。劇場内はほぼ満員だった。

 

☆ウィッシュ

 ウォルト・ディズニー・カンパニーの創立100周年を記念して製作された作品とか。監督は「アナと雪の女王」のクリス・バック。これだけで期待値が大きい。主役のアーシャの声を日本語吹き替え版では生田絵梨花が務めている。オリジナル版と日本語吹き替え版と、どっちにしようかと悩んだ末、オリジナル版を観に行くことに。

 作画の美しさはさすがにディズニー品質。アリアナ・デボーズの歌唱力も素晴らしい。それなら映画全体の出来もいいのかと問われれば、「?」としか言いようがない。多少設定が変わっているだけで、またこのパターンかという気持ちで観ていた。

 王様のキャラも、主人公に対して無理に悪者に仕上げられたという感じ。その悪に対して、主役の女の子がポジティブに立ち向かうという設定は何度も観ている。周りの人を巻き込んで悪を倒す。ストーリーは定型から一歩も外れない。100周年記念の作品なら、今後のディズニー映画を示唆するような何か斬新さが欲しかった。結局、主人公の女の子に感情移入できないまま映画は終了した。

 ディズニー映画が好きでたまらないという人はどうぞ。本編前に上映された短編作品の方が印象に残った。これぞディズニーという気がした。

 昨年夏に観たディズニー&ピクサーの「マイ・エレメント」には遥かに及ばない。これなら生田絵梨花の声が聴ける日本語吹き替え版を観た方が良かったかな。