まだ暑さが残る9月中旬、吉備中央町の本宮山(582m)に登山に行った。元岡山藩池田候の御料林で、備前の最高峰である。

 国道429号線にある「道の駅 かもがわ円城」の先を右折し、総合スポーツ公園前を通った。きれいなスポーツ公園で、野球場では試合をしていた。広域農道を左折、少し先の「チロリン村」の看板を右折して林道に入った。登りの道を少し行くと「船ヶ乢」に着く。ここが登山口となる。

 パイプの柵があり、「一般車両通行禁止」と書いてある。「本宮山登山口 山頂迄3,200m」という案内が小さく取り付けられていた。車の置き場所に困った。しかし、この日は日曜日だし、このパイプを開けて通る車はないだろうと勝手に解釈して、柵の前に駐車させてもらった。林道は時おり車が通る程度である。

 柵の下をくぐって歩き始めたのは9時40分頃である。森の中の道が延々と続いている。広い道であり、4WDの車なら十分通ることができる。この道は歩きやすいと言えば聞こえがいいが、変化がなくて面白くも何ともない。樹木に囲まれて景色も見えない。

 分岐を右に行き、歩き始めて35分経った頃、やっと抜けるような空が見えてきた。林道からせり出したところがあったので、一番先のところまで行ってみた。すると、いい眺望が開けていた。遠く中国山地の山々が見える。少し霞んでいるが、大山が確認できた。目を転じると、2月に登った二上山が見える。ここが頂上だったらいいのにと思った。

 再び林道歩きである。少し道幅が狭くなり、山道らしくなってきた。頂上へ向けての分岐標識が、草に覆われて見えなくなっていた。YAMAPで確認しなければ、危うく見落とすところだった。最後のところだけ、多少急登だと感じた。

 10時25分、本宮山の山頂に到着した。まずは二等三角点にタッチした。山頂には小祠「竜王宮・山神宮・海神社」が並んでいた。開けたところだが、樹林が邪魔をして眺望は全くなし。ゆっくりおにぎりでも食べようかと思ったが、虫がうるさく飛び回っていて落ち着かない。水分補給だけして下山することにした。

 来た道の反対側に下山道が見えた。ここを下りることにした。しかし、歩き始めてすぐに後悔した。踏み跡程度しかなく、道がはっきりしない。ところどころにテープがあるが、それも途切れがちである。おまけに倒木が行く手を阻んでいる。引き返そうかと何度も思った。久しぶりに道に迷いそうな気配を感じた。

 15分くらいかけて、やっと面倒くさいところを抜けることができた。はっきりとした道があったのでホッとした気分だった。ここは「新 岡山の山百選」という本によると、十字路ということになっている。しかし、私には三叉路としか思えなかった。当初の計画では「新 岡山の山百選」に記載されている「正法寺跡・灯明台跡」というところにまで足を伸ばすつもりだった。行くか行かないか考えた末、道を右手に折れて出発地点に戻ることにした。この道は「新 岡山の山百選」では破線になっていて、サブコースとして表示されている。

 道ははっきりしていて迷う心配はなさそうだった。難儀だったのはクモの巣である。何度も顔に張り付いて気持ちが悪い。途中から木切れを持って、クモの巣を打ち払い続けた。また、棘のある植物が体に絡まってきた。登山ズボンをはいていても、チクチクと何度も足を刺された。

 行く先が明るく見えたと思ったら、いきなり林道に出た。左右に舗装された道が伸びている。左が下っているので、少し左に歩いた。しかし、何だか違う気がしてYAMAPで確認すると、逆の右方向に行かなければならなかった。そこからまた延々と変化のない道を歩いた。

 11時35分、登山口まで戻って来た。YAMAPによると1時間55分の山行だった。登山と考えると、もの足りないものがある。家族で自然を楽しむハイキングコースと思えばいいだろう。家族連れだったりヤブが嫌いなら、来た道を引き返した方がいい。今回も山の中で誰にも会わなかった。6月以降、登山者に会っていない。

 帰りに「道の駅 かもがわ円城」に寄ってみた。ライダーの聖地ということで、バイクが何台も止まっていた。こんな大きなカボチャも売っていた。誰が買うのだろうか?