新庄村の毛無山にカタクリの花を見に行ってきた。この時季にカタクリを見るために登山をするのは3年連続である。一昨年は丁度見頃だった。昨年はゴールデンウィークに行ったが、もう遅くてしおれた花が多かった。果たして今年はどんなカタクリを見ることができるのか。今回は2年半ぶりに家人と一緒の登山である。家人は私と違って植物に興味がある。ぜひカタクリの花を見たいというので同行することになった。

 田浪駐車場は満車かと思ったが、意外と空いていた。歩き始めたのは9時20分である。登山道に入ってすぐにミヤマカタバミを発見。しかも群生している。家人は大喜びで写真を撮っていた。ミヤマカタバミは頂上近くまで咲き続けていた。家人はこの後もハシリドコロやエンレイソウ、ミヤマキケマンなどを見つけていた。また、オオカメノキの花も咲いていた。

 私はいつも山に早く登ることを心掛けている。今回のように植物を探しながら歩いていると、ゆっくりとした登山になる。しかし、これが本来の自然の楽しみ方だろう。7合目辺りからのブナの森に癒されながら、この日はあくまで家人のペースに合わせて登って行った。

 頂上に着いたのは10時55分だった。10人くらいの登山者がいた。360度の大展望はいつものことである。しかし、黄砂の影響からか、遠くが霞んでいる。それでも大山から烏ヶ山、蒜山三座まで確認することができた。

 ザックからおにぎりを取り出して食べた。いい天気だが、風が強くて寒い。何度もキャップを飛ばされそうになって頭を押さえた。汗をかいたらウインドブレーカーを脱ぐつもりだった。しかし、寒くて汗冷えを気にしなければならないくらいだ。

 登山者が続々と頂上にやってくる。頂上広場はすぐに人で一杯になった。私と家人は15分くらい頂上に滞在した後、白馬山への縦走路に入った。カタクリの花はここからが本番である。

 咲いていた。カタクリの花は、今年も見事に咲いて出迎えてくれた。あっちにもこっちにも、登山道の周りに群生している。家人はあまりに多く咲いているので驚いていた。

 ぜひ見つけたいと思っていたのは、白いカタクリの花である。一昨年は発見したが、昨年は見つけることができなかった。今年も白っぽい花はいくつかあるものの、完全に白色ではない。諦めかけていると、前方から「白いカタクリがあったよ」という大きな声が聞こえた。急いで行ってみると、60代くらいのご夫婦が立ち止まっている。その視線の先に、見事に白いカタクリの花が可憐に咲いていた。この花を見ただけで、今日、毛無山に来た甲斐があったというものだ。家人は白いカタクリを見るのは初めてである。私以上に感激していた。

 毛無山から白馬山への縦走路は森が美しい。花よりも、私はこんな森を歩くのが大好きだ。ちらちらと、左手に大山を見ながら歩いた。心なしか、先程よりもくっきりと見えるようである。振り返ると、毛無山の頂上を仰ぎ見ることができた。毛無山から白馬山までの縦走路で大勢の登山者とすれ違った。立ち止まって話をすると、朝早く来て、どこかの稜線上でひと眠りをしていたという御仁もいた。

 白馬山に着いたのは12時15分だった。20人くらいの人がいて、人口密度が高い。ほとんどの人は座って食事をしていた。ここにもカタクリは咲いている。踏まないように気を付けなければならない。少し休憩した後、金ヶ谷山への縦走路を300mくらい先に進んでみた。この先に行ってみようと昨年も思ったが、いまだに実現できないでいる。

 下山にかかったのは12時28分である。ちらほらと咲いているヤマザクラを見ながらの下山となった。やはり家人に合わせてゆっくり歩いた。前を行く家人は、いつの間にか山での歩き方が身に付いていた。以前のように危なっかしい雰囲気がなくなっている。友人と出かけている県南の低山歩きで身に付けたものだろう。家人の後ろ姿に何だか感慨深いものを感じながら下山して行った。

 駐車場に戻ったのは13時15分だった。この後、道の駅に移動して買い物をした。そして、「がいせん桜」の通りを歩いた。家人はこの通りに来るのは初めてである。桜はもう完全に散ってしまっている。人通りが全くない通りを歩きながら、満開の桜を想像して楽しんだ。

 車の中で「また来ようね」と家人と話をしながら帰路についた。私が毛無山に来たのは今回が6度目である。季節を変えて何度来ても期待を裏切らない、それが新庄村の毛無山の魅力である。