私の職場に、先月、飲み物の新しい自動販売機が入った。日本コカ・コーラの自動販売機である。私は普段、自動販売機で飲み物を買わない。自動販売機で買うと、スーパーで買うよりも高いからというケチな理由である。しかし、この新しい自動販売機には気になる表示があった。それは、スマホにCoke Onというアプリを入れて使えば、お金を入れなくても飲み物を買うことができるというものである。スマホを持っているだけの私は、Coke Onというアプリがあることなど全く知らなかった。

 気になったので、早速Coke Onアプリをスマホにインストールし、バーコード決済と紐づけて使えるようにした。ある日、誰も見ていないのを確認し、アプリを立ち上げて自動販売機に近づいた。そして、スマホの画面に出た飲み物を指定して上にタップした。すると、「ガタッ」という音がして、飲み物が自動販売機から出てきた。思わず「ホゥ!」という声が出た。

 以前からCoke Onというアプリを知っていて使っている人からすれば、単なる笑い話だろう。現金を持ち歩くのが嫌いな私にとって、コインを入れなくても飲み物を買うことができるというのは嬉しい限りである。しかし、何だか複雑な気持ちがしたのも事実である。

 Coke Onアプリは、一日に一回、日本コカ・コーラの飲み物のバーコードをスキャンすると、スタンプがもらえるようになっている。そのスタンプが15個たまると、飲み物を1本プレゼントしてくれる。私はもう3本のアクエリアスをスタンプと交換した。

 最初は新しい飲み物のバーコードをスキャンしなければいけないのかと思っていた。しかし、同じ飲み物のバーコードを毎日スキャンしてもいいようである。つまり、日本コカ・コーラの製品を1本持っていてスキャンを続ければ、15日に1本ずつ飲み物がもらえるということだ。こんなことをしていて、日本コカ・コーラは儲かるのだろうかと思った。しかし、一日に一度、日本コカ・コーラの製品を手にすることになり、否が応でも頭の中にインプットされる。それでかなりのCM効果があるということだろう。事実、私はCoke Onアプリを知って以来、街中を歩くと、コカ・コーラの自動販売機が、やたらに目につくようになった。術中にはまったと言うべきだろう。

 日本コカ・コーラといっても、コカ・コーラだけを売っているわけではない。アクエリアスも、ジョージアのコーヒーも、お茶も水も売っている。そこで気がついたのは、コカ・コーラを何年も飲んでいないということである。もう20年以上飲んでいないかもしれない。

 昔はコーラと言えばコカ・コーラだった。しかし、今は他の飲料メーカーも独自のコーラを作るようになった。何種類ものコーラを飲むことができる。私くらいの年齢の者からすれば、それは嬉しくもあり、ちょっと悲しくもある。「スカッと爽やかコカ・コーラ!」というテレビCMを、今の若い人は知らないのではないか。髪の毛がフサフサだった頃の松山千春がCMに出て、「Sing a Song」と歌っていたのが懐かしい。その頃のコーラは、全て瓶に入っていた。

 コーラと言えば、ペプシコーラがあった。もしかしたら、私が初めて飲んだコーラはペプシコーラだったかもしれない。その昔、ペプシコーラの王冠を取って裏をめくると、「当たり」が出ることがあった。「当たり」の王冠とお金が交換出来たり、コーラをもう一本もらえたような気がするのだが、記憶が定かでない。私が住んでいた田舎では、あの頃、コカ・コーラよりもペプシコーラの方が売れていたことだけは確かである。以前はペプシコーラの自動販売機も街中に多くあったが、今はとんと見かけない。

 コカ・コーラとペプシコーラ、飲み比べると明らかに味が違った。私はもしかしたらペプシ派だったかもしれないと思ったりした。久しぶりにペプシコーラを買って飲んでみようかな…。