かつて、「芸能人は歯が命」というテレビCMがあった。それは、歯磨き剤の中でもホワイトニングに重点を置いた最初のCMだったかもしれない。別に芸能人でなくても、歯が大切なのは当たり前のことだろう。「歯が命」とまでは言えないかもしれないが…。

 私にはちょっと自慢したいことがある。それは、この歳になっても歯が健康だということだ。

 私は今、3ヵ月に一度歯医者に行っている。ここの歯科医院に行くようになって、もう15年くらいになるだろうか。以前は別の歯科医院に行っていた。ここに変えたのは、職場に行く途中にあって便利だということ。当時、新しく開院したばかりで、どんな歯科医院だろうかと興味があったからである。予約して行ってみると、30代後半の男性の先生が一人、受付の女性(多分奥様)、歯科衛生士が3人というスタッフだった。

 最初に行ったのは虫歯の治療だったかもしれない。まずカウンセリングを受け、それから先生の治療になった。口の中全体の写真を何枚も撮られたりした。治療はすぐに終わった。その後の先生の説明がとても丁寧で感じが良かった。それ以後、他の歯科医院に行くことは全くない。歯のことは全てその歯科医院の先生に任せている。

 その先生から、歯の健康を保つには普段からのお手入れが大切だと言われた。自分でできることは、歯磨きを丁寧にすることくらいである。しかし、どんなに気を付けて歯磨きをしても、除ききれない歯垢や歯石が残ってしまう。それを定期的に除去することによって、いつまでも歯の健康を保てるということだった。それ以来、3カ月に一度その歯科医院に行き、クリーニングをしてもらっている。その甲斐があってか、以後、全く虫歯になったことがない。

 歯医者に行くのが好きという人は、まずいないだろう。歯を削る「キーン!」という音を聞くだけでゾッとする人もいるだろう。しかし、歯が痛くなって歯医者に行けば、治療のために時間もお金もかかってしまう。そして、何よりもあの痛みが襲ってくる。歯の治療は他の病気と違い、自然に治るということはない。薬を飲んで暖かくして寝ていれば治るというものでもない。歯科医院に行って、専門医に治してもらわないと絶対に良くなることはない。それなら、普段から歯の健康に気を付け、歯が悪くならないようにするしかないではないか。

 先日も歯科医院に行き、クリーニングをしてもらった。勿論、虫歯は一本もない。年齢と共に気になる歯周ポケットも、全て3ミリ以下である。歯ぐきからの出血も全くなし。担当の歯科衛生士の方に、「これくらいの年齢で、こんなに引き締まった歯ぐきの人はめったにいませんよ」と褒められてしまった。歯垢や歯石をつけないようにするため、デンタルフロスを勧められた。今までは歯間ブラシを使っていただけである。早速ドラッグストアに行き、2種類のデンタルフロスを買ってきた。今は朝と夜の歯磨きの後、歯の間にフロスを通して、しっかりと汚れを落としているつもりである。

 こんなに歯に気を付けているのは、子どもの頃から歯の痛さに悩まされたからである。以前もこのブログに書いたが、昔は歯の磨き方もいい加減だった。歯ブラシも歯磨き剤も、今のように種類も多くなかった。とにかく、磨いていればいいという感じだった。よって、子どもは虫歯があるのが当たり前だった。私も高校生の頃、虫歯になって奥歯の神経を何本か抜いたことがある。もう何十年も、被せものをしている歯もある。昔から今のような歯のケアの仕方を知っていたら、どんなに良かったろうかと思う。

 ある程度の年齢になると、人が笑った時の口元が気になるものである。明らかに歯が汚れていたり、迷惑な口臭を発している人もいる。本人は気が付いていないし、周囲の人も指摘することはない。それは、誰にとっても一つの小さな悲劇だろう。

 いくつになっても自分の歯で食事をすることができたら、何と素敵なことだろう。それには、日々のちょっとしたケアの積み重ねが大切である。きちんとした食事ができないと、体が衰えていくのは当たり前のことである。「歯が命」というキャッチコピーは、少し大げさかもしれないが、真実を突いているかもしれない。

 私は15年前に出会った、良き歯科開院に感謝したい思いで一杯である。これからも3カ月に一度お世話になります。