3カ月前、NHK‐BSで放送された「ダークサイドミステリー」を見ていた。その回は、昔、心霊写真の鑑定で有名だった中岡俊哉先生を取り上げていた。「ああ、懐かしい!」と思いながら見た。

 実をいうと、私は心霊写真大好き少年だった。中岡先生が「これは浮遊霊です」とか「地縛霊です」と、テレビで解説しているところを熱心に見ていた。我が家のアルバムを開き、霊が写っている写真はないかと探したりした。木の葉の重なりや光の具合によって、人の顔のように見える写真が何枚かあった。これは心霊写真だと確信した。私が勉強ができなかったり女性にモテなかったりするのは、この霊の仕業に違いないと勝手に解釈していた。

 また、高校時代、中岡先生が書いた「恐怖の心霊写真集」の全巻を持っている友人がいた。その本を順番に借りて、勉強もしないで真夜中に見ていた。思わず背筋がゾッとして、自分の周りに霊が漂っているのではないかと思ったものだ。今思い出すと笑ってしまうが、当時はそれだけ心霊ブームだった。いや、心霊だけでなく、UFOや超能力などを扱うテレビ番組が多かった。今ならCGでどんな画像だって作れるだろう。

 今年もいくつかの心霊番組を見た。芸能人が霊が出るという廃屋を訪ねるというお決まりのパターンだが、それはそれで面白かった。何時の時代になっても、科学で解明できないものや、怖いものを見たいという人の気持ちがあるのだろう。私は映画ファンだが、ホラー映画やスプラッター映画も大好きである。

 前置きが長くなったが、先日、私を含めた男4人で父親のお墓参りに行った。父親と書いたが、大人の事情で私が物心つく前に我が家の籍から外れている。4年前、その父親が病死したということを、没して1カ月くらい経って親戚筋から聞いた。死の報を聞き、何の感情も動かなかったと言えば嘘になる。しかし、一緒に暮らしたこともなければ、何十年も会っていないので、「遂に死んだのか」と思ったくらいだった。

 兄の娘のTは、子どもの頃から霊能力というか、不思議な力があるという噂だった。そのTのところに、最近になって父親の霊が現れるという。そして、男ばかり4人でお墓参りに来てほしいと訴えているということだった。どうして男だけなのかは不明だが、とにかく早くお墓参りに行った方がいいとTは言っているらしい。私はTの話を信用していなくて、乗り気ではなかった。しかし、兄はTの話を信用しているのか、早くお墓参りに行こうと言い張った。東京に住む兄の息子もわざわざ帰ってくるという。仕方がないので付き合うことにした。そして、私、兄、兄の息子、私の息子の男4人で父親のお墓参りに行くことになった。この4人が集合するのは、3年前の母親のお葬式以来である。

 父親の実家の近くにお墓がある。私の実家から車で30分くらいだろうか。父親の親族も出迎えてくれて、大勢でお墓参りをすることになった。さぞかし父親も喜んでくれたことだろう。お墓参りの後、父親の実家でお茶を一杯だけ飲み、そそくさと退散することにした。帰りしな、親族の方が「また来てね」と声をかけてくれたが、もう来ないような気がしていた。

 父親のお墓参りの4日後、兄から電話があった。兄の娘のTのところに、父親の霊が再び現れたという。そして、お墓参りに来てくれたことが嬉しくて、おいおいと泣いているとのことだった。「それは良かったじゃないか」と言って電話を切った。

 もう一度言っておくが、私はTの話を信用していない。どうしてTのところに父親の霊が出るのか?出るのなら私のところに出てほしい。出てきたら、言いたい文句がいっぱいあるのだ。霊が出るどころか、私は子どもの時から父親の夢さえ一度も見たことがない。Tと直接話をしていないので分からないが、一体どういう形で父親の霊を感じるのだろう。夢に出てくるのか、それとも姿が見えるのか。姿があるのなら、動画に撮って見せてほしいものだ。

 前述の中岡俊哉先生のことで思い出したことがある。中岡先生が50年近く前にテレビで話をしていた。それは、中岡先生のお母様が亡くなられた時のこと。自分は心霊研究をしている。研究の参考にしたいので、霊となって現れてほしいと、お母様のご遺体に向かって何度もお願いしたとのことだった。結果、何も現れなかった。中岡先生でも親の霊を感じないのだ。私が父親の霊を感じないのも当たり前だろう。

 何年か前、このブログに書いたが、私はUFOを信じていない。霊もそうである。しかし、信じている人を笑ったりはしない。私はUFOや霊を信じたいのだ。しかし、実際に見たことがないので信じられないだけのことである。

 次回は、私が今まで経験した唯一の不思議なエピソードを紹介したい。

                                 (次週に続く)