久々の滝旅。

自分の集大成のような九州の滝旅のあと、自分はヌケガラでした。
更に公私ともにやるべき事がたくさんあって、気分的にも、現実的にも滝に行くことができませんでした。

丸々、2ヶ月も滝離れ。

流石にそろそろ滝に行きたくなって、どこに行こうか地図を見ながら夜な夜な悩みました。

一応、作りかけの "行きたい滝リスト" もありますが、未訪問の滝の探索といった気分でもないし。

時間をかけて、ゆっくりできる滝が良いなぁ。
水が綺麗で沢を歩き、水と戯れることができる滝が良いなぁ………と、いろいろと考えて、

群馬県みなかみの照葉峡 大沢の大瀑に決めました。大瀑は3度目、過去2回は春と晩秋の雪模様の日なので、夏は初めての訪問となります。

時間を気にせず一日一滝でも良いかなと。

早朝、自宅を出て、関越道を順調に北上し、すんなりと照葉峡に到着しました。

照葉峡の真ん中あたり、何時もの場所に相棒を停めました。

準備して出発する前に山の斜面に近づきます。
2015年に伐採された樹齢300年のブナ太郎。その切り株を見つけました。このまま自然に還るのか、新たに芽吹くのか………自分には生きているように感じます。

この季節は眩い限りの強烈な緑。

木漏れ日というより、夏の強い光が射し込みます。そして久々の熊の生息域、手を叩いたり大声をあげたり、熊鈴を鳴らしながら歩きます。

目印となる大沢にかかる橋。豊かな植生から発せられる濃い酸素のおかけで、運動不足の腰痛持ちでも、そこそこのペースで歩けました。九州で打撲した両足にも違和感はありません。

橋を渡ったら、比較的なだらかな笹藪を掻き分けて大沢に出ます。入り口の目印や踏み跡は見当たらず適当に突入するのですが、早すぎると急な斜面や深い渕に出てしまうので、斜めに上流に向かう意識で藪漕ぎです。

夏なので藪の密度を覚悟しましたが、思った程ではなく、地面は明らかに濡れていて一部はぐちゃぐちゃでした。

沢のせせらぎの音を頼りに「ここら辺で良いかな」と大沢に降り立ち、即、入渓。

沢靴の泥々を流しつつ、足から伝わる夏の沢のひんやり感が気持ちいいです。

あとは歩きやすいところを、故意にジャブジャブ水中を歩いたりして遡行していきます。

滝まで特に難所はありません。随分と磨り減ってしまったビブラムソールの沢靴は、そこそこグリップしていました。

日向では水も苔も草も、みんなキラキラと輝いています。

右岸の無名の滑滝は、逆光で良く見えません。

大瀑が近づくと両岸から水が降り注ぎ、まさに水の楽園の様相です。そしてこの先、左右を岩壁に挟まれて大沢は狭い水路となります。

ここまでは明るい渓相、青空は夏空です。

大瀑と石が見えてきました。太陽光は右岸(左側)の木々に遮られて、まだ渓に入ってきません。

滝前右岸の小滝の集合体。きっと増水時には個性的な景観なのでしょうけど、そもそもそんな時にここに立つことはできません。

左岸の滝は何時来ても水量が豊富です。上の方に光が当たり光芒が出ていました。

そして正面に大瀑。

紅葉の時期でなくても赤と緑の飾りです。

今の自分には登れそうで登れない左岸の滝。

滝前には深い所があったと思ったのですが、落石や落ちた木で埋まったのか、膝上くらいで近づくことができました。

右岸の滝を見上げます。霞んでいるのは滝つぼの水煙に光が反射しているものです。

オットセイの顔のような岩、髭のような白糸。

いよいよ大瀑と5年ぶりの再会です。その時は左岸が崩れて滝前は散らかっていましたが、スッキリしていました。

大沢の大瀑
ああ、石は無事でした。ここを訪れる多くの滝好きさんと同様に、石を見て安堵しました。

奥の狭い岩間に右手から落ちる高い滝と神秘の滝つぼ、溢れ出る小滝は青とも緑とも言える深い滝つぼを形成しています。

チラリと見える奥の滝と岩壁。

この石はどうやって引っ掛かったのでしょう。

2016年11月の大瀑の石です。
その時、滝つぼでお会いした方は「この石は1年で2mm位削れているので、もう何時落ちてもおかしくない」と言われていました。

5年で1cmかぁ………比較したところ変わり無く、安定しているように感じられましたが。

小滝までたかだか数メートル。うっすら底も見えますが、どれ程の深さがあるのでしょう。

右岸のあそこ。後で入ろうと思って忘れてしまいました。滝の裏から左岸の滝を見ることができますね。

滝前でウロウロしているうちに、太陽の位置が高くなってきました。

そして目論み通り大瀑の岩間に、夏の光が射し込んできました。

光芒に、暫く見とれてしまいました。

夏の強い日射しと、滝のミストが織り成す情景です。

岩間に石が引っ掛かっただけですが、それは奇跡です。

神々しい滝に、ありがとう。

眩いばかりの光が溢れてきました。凄いな。

左手のちょっと深いところに寄って、滝の本体を覗きました。

光の入り方が刻々と変わって、滝や渓の見え方もまた変化します。

この次に会いに来た時も、相変わらずここに存在していることでしょう。誰かがあの飛行石の呪文を唱えない限り。

岩間に反響する滝音、空間を舞う滝ミスト、そして自然の "気" 。

大沢の大瀑の大石は滝の核心。

刻々と変わる滝の姿を楽しんで、十分に満足して滝前から距離を置きます。

時を刻んだ地層の事実、自然の色使いの芸術に目を奪われました。

滝前の狭い流れを二本のクロスした倒木が塞き止めて、持ち堪えられればいずれ猿壺の滝のようになるのかもしれません。

近くでは石ばかりに目が行きがちですが、水量バッチリの滝も見事。

滝から50m位下流の川原で、ゆっくりと時を過ごします。特に、何をすることもなく。

行きと帰りで景観は異なります。

本当に久々の滝。
時間を気にすること無く、川原でゆっくりと寛いでいました。その時、ひゅーっと下流から上流に吹く風を感じました。そして、滝の落ち口方向の上空は、いつの間にか青空が濃い灰色の雲に変わっていました。

それを見て、そろそろ戻ることにしました。

無名の滑滝。

帰路はここで退渓します。

左岸の急斜面をよじ登ります。この時期は植物が繁っているので、手掛かり、足掛かりが豊富でした。

途中で一息いれて、一気に登りました。

林道に出ました。急斜面ではありますが、ピンクテープや薄い踏み跡もあり、入退渓に使われているのでしょう。

あとは林道を下って行くだけです。
無事、駐車場に帰着。

この後はノープラン。
久しぶりに裏見の滝に行くことにしました。

照葉峡には滝がたくさんあります。

翡翠の滝
特に本流の滝は水量が豊富で、水の色が綺麗です。

長く尾を引く水の泡。

滝が連続する照葉峡の流れを見ながら車道を下りました。

この時、武尊山の方角からはゴロゴロと雷鳴が聴こえていました。


【まとめ】
◯2021.7.21 ひとりで。
◯天気は晴れ。
◯5年ぶりの大沢大瀑。
◯石はまだ無事だった。
◯滝前で長時間過ごす。

◯訪れた滝
●大瀑:群馬県利根郡みなかみ町
●翡翠の滝:同上