5月 紀伊半島 貫禄の滝をめぐる⑩

大台ヶ原駐車場での過酷な車中泊。
夜、風で相棒が揺れて丸まっていないと寒い。

それでも、うとうとしながら明け方の3時頃、ヘッデン持ってお手洗いに。

え?………駐車場はほぼ満車、停められない車と早発ちの方々の往来で賑やか。

遠征の最終日、大台ヶ原の中の滝・西の滝に行ってきました。

いや………滝見尾根から会ってきました。

西大台利用調整地区は自然保護のため、入るためには事前申請と30分の講習が必要です。中ノ滝、西の滝はその区域にあるのですが、滝見尾根はその外と判断しました。ルートは昔の道を辿りますが、現在は公式なものではなく自己責任での行動となります。
行程を書くか迷いましたが、自分達も先人の方々の情報を参考にさせていただき入山しましたので、記載することにしました。

寒さと風は事前に情報を得ていたので、出発を遅らせて気温が上がってから行動開始。

準備して8:10頃に出発。風が強く雲の流れがすごく速い、そして寒い。

シオカラ谷の吊り橋まではずっと下り。帰りのことは考えません。

僕は沢筋を歩くことが多いので、こういう山の風景はとても新鮮です。靴も沢靴ではなく登山靴ですし。

緑の濃い季節を想像しながら歩きます。

途中、とてつもなく長い、一直線の下り石段があり更に下ると………

シオカラ谷の吊り橋。

橋を渡り登り返すとネットで見た倒木が。

尾根の下りは緩やかですが痕跡が全くなく、ルートを見極め帰路をイメージしながら進みます。

尾根で見かけるすべすべの木。艶かしい。

おお!彼方に中の滝がチラッと見えました。

実はこの辺りの、ちょっとした急な斜面で、ルートを失いました。

更に追い討ちをかけるように………

パラパラ………パラ………
空が暗くなり、なんと霙が………

お互い少し不安になって「どうしましょう?」
一応、自分の眼(まなこ)で中の滝は見たし。

ここは冷静になってあらゆる情報を整理して協議、もう少し先に進んでみることに。

ルートとは思えない斜面をクリアすると………

信号のような目印が ( *´艸`)。

たくさんの目印が突然現れ、踏み跡も認識できるくらいになり、以降はルートに迷うことはありませんでした。

こんなところは左右どちらかに。

予報通り天気も回復し尾根を快適に下っていきます。

時々見える中の滝は、進むべき方向と、どれだけ下降したかの目安になります。

難所と予測していた岩場の下降。手掛かりもあり何だか楽しい。

あっ! 西の滝も見えてきました。

どんどん下ります。人通りの無い道を歩くのは気持ち良いものです。

随分、下ったことがわかります。

滝の高さと向きと地形図を合わせて、そろそろでは………とイチカメさん

そして、ようやく10:50頃………

滝見尾根に到着、所要時間は2時間40分でした。フリーズするイチカメさん

中の滝と西の滝
ほかに類を見ない絶景。北中さんの日本の滝② 176ページの写真が現実のものとして目の前にあります。

滝見尾根は風をまともに受けるので、とにかく寒い。雲の流れは異常に速く、晴れたり曇ったり………だから素人な自分でもいろんな写真を撮ることができます。

中の滝

落差は250m。水は別れたり再会したり、何段にもなって落ちていきます。

前々日の雨で増水し、一日開けて空気がクリアになる………と、イチカメさんの読み通り。


ここだけで100mはあるでしょう。複雑な岩盤によって水が翻弄されています。

落ち口。


滝の道には小さな滝がたくさん。

水は生きています。滝も生きています。

雄大な景色。

滝見尾根は風がまともに当り体温を奪われます。"替わりばんこ" で滝を閲覧し、冷えたら風を避けて日光から暖をとります。

西の滝
中の滝が高過ぎるので低く見えますが、西の滝の上部は木々に隠れた滝だそうで、匹敵するほどの滝なのです。

西の滝も水量も多くて、遠望であってもしっかり滝として認識できます。

細い落ち口から放たれた水は真っ二つに別れ、


岩の両側を流れ落ちたあと合流します。

合流したあとの下部は強風に煽られてクネクネと落下していました。

雲間からお日様が出ると虹🌈が。

きっと滝下は凄い水飛沫なのでしょう。


虹🌈のスケールもでっかいです。

谷底の滝前から見上げる西の滝はどんな景色なのでしょう?

深い谷に西の滝。

そう言えば、世界100名瀑には中の滝と西の滝が二つ合わせて選ばれています。


寒い、寒いと言いながら………。

滝見尾根の特等席。


中の滝と千石嵓。

千石嵓の大岩壁の下に見える滝、お気付きですか?

木々の間から、なんとか見えたこの滝。

千石滝
一枚岩の大スラブである千石嵓を従えているので、そう呼んだ………秘瀑 川崎実著 山と渓谷社より。

一生懸命に、精一杯に。


滝見尾根の先には滝前への下降ルートを示すピンクテープがありました。ここから先は一流の人の世界です。

滝見尾根には約2時間滞在して、同じようでありながら微妙に変化する景観を堪能させていただきました。


世界基準の中の滝と西の滝に、最高のコンディションで会うことができて感無量です。

さあ、大台ヶ原駐車場まで、ずっと、ずうっと、ひたすら上りの帰り道。

頑張らなくては (^-^)v。
体力は温存していたつもりだけど………。


今を煌めく木。

風化した木。

朽ちた木。

少しずつ確実に登っていきます。

心もとない丸太橋。

もう、必死に歩きました。

でも上りは覚悟していましたし、往路で一度歩いたルートを見極めながら進むのは気が紛れました。

そして何よりも………

振り返れば中の滝が時折見えて、いつまでも手を振ってくれていました。

綺麗な水………

あれ?
行くとき見ましたっけ?

目印のテープは所々ついていて、まだ先に延びています。

どこで (往路の) ルートを外れたんだろう?

更に進むと………
現在地を示す案内板が。そこは東の滝の落ち口を通る、もうひとつのルートだったのです。

結果オーライではありますが、予定のルートをいつしか外れて彷徨していたことになります。

シオカラ谷のナメ。

東の滝 (落ち口)
落差25mの落ち口です。

目の前を流れる水は、中の滝、西の滝と出会い、やがて坂本ダム、池原ダムに注がれる………そう思うととても不思議な気持ちです。

落ちていく水の先に見える、切れ落ちた景色が想像を働かせます。

この川を遡行すればシオカラ吊り橋に出る………ホッとしました。

ただ僕の "ホッ" はルートに乗った安堵ではなく、川沿いを進み、何十メートルかの登りをショートカットできたことによるもの。

川沿いには踏み跡がついていて濡れずに歩けますが、登山靴で来たことを後悔しました。

沢靴で水際をナメを歩きたかった (T_T)。

やがてシオカラ吊り橋が見えてくると現実に引き戻された。

カラフルな格好いいウェアを纏った男子、モデルさんのような女子、家族連れ………。

賑やかな人間の声は、ずっと滝音と風切る音の中にいた自分にとって刺激が強すぎました。

唯一、メットを被った、場違いな自分達。
橋を渡って標高差150mをあと一頑張りです。

いつの間にか風は弱まり、暑がりな自分には清々しい山歩き。

ただ………
心臓破りのこの石段は、揶揄ではなく本当に破裂しそうでした。

どうにか登りきりましたが、活力と言うか、もう何も残っておらず、カラカラになってしまい、最後のなだらかな登りは、多分、ゾンビのようだったと………。

それでも………
それでも前を向いて一歩ずつ、一生懸命に歩いていくと到達 (ゴール) できるものです。

人生のようです。 大袈裟かなぁ。

滝見尾根を出発してから2時間50分で到着。

中の滝は本州で唯一未訪問だった100選の滝、どうにか会うことができました。

大台ヶ原から今度は200からカウントダウンしていきます。

行きは夜道だったので相棒を停めて………。

関西のブロ友さん達が愛する紀伊半島の屋根………僕も少しだけ、でも存分に楽しませていただきました。

最後に〆として滝遠征の余韻を楽しむ。

蜻蛉の滝
余韻のためには絶好のシチュエーション。

相変わらずの神秘。

神秘のからくり。

蜻蛉の滝の駐車場で装備を解いて、道の駅に隣接する大宇陀温泉 あきののゆ♨️に。
とても混んでいて食堂に並ぶこと20分。空腹を満たしてお風呂に入り、三日間ご一緒いただいたイチカメさんと解散しました。

自宅にナビをセットすると470kmで7時間。

連休の中日のため名物の渋滞もなく、途中、仮眠をして、明け方、無事に帰着しました。

【まとめ】
◯2018.5.4 イチカメさんと。
◯天気は晴れ時々曇り。強風。
◯大台ヶ原で過酷な車中泊。
◯貫禄の、中の滝、西の滝。
◯滝見尾根へのルートを楽しむ。
◯〆な蜻蛉の滝。

◯訪れた滝
○中の滝:奈良県 吉野郡 上北山村
○西の滝:同上
○東の滝:同上
○千石の滝:同上
●蜻蛉の滝:奈良県 吉野郡 川上村

○○○総括○○○
今年、二度目の紀伊半島への滝遠征。3月は和歌山県に絞り込んで巡ったのに対して、今回は奈良県、三重県、和歌山県を縦横無尽に巡りました。天気の影響で行けなかった滝もありましたが、臨機応変に上手く対応して、約30の滝の素晴らしい姿に会うことができました。
"貫禄"という表現をしたのは、自分の中で"この滝にはどうしても会いたい" という大滝があって、その滝を中心に計画を立てたからです。
1日目:布引の滝、中津谷の滝
2日目:ナル谷大滝
3日目:琵琶の滝、笹の滝
4日目:中の滝、西の滝

1日目は二年後越しに実現した運命のめめめめさんと。滝での振る舞い、斜面の下降、魔法のような黒いロープ(笑)、学ばせていただきました。ご案内いただいた地元の滝は、味わい深く、心底、楽しかったです。

2日目からはイチカメさんと。折角、一日早く合流いただいたのに、天気が悪く、申し訳なかったです。でも、ナル谷大滝や琵琶の滝に、あれほど長時間滞在する人も滅多にいないと思うので、お互いに幸せな時間を過ごすことができたのでは (^-^)v。
そして過酷な条件のなか、あの突風に震えながら、滝見尾根から見た増水の中の滝、西の滝は、ずっと忘れることは無いと思います。

ご一緒いただいたお二人に導かれ、素晴らしい滝めぐりとなりました。ありがとうございました。

紀伊半島は来る度に会いたい滝が増えていく、滝の聖地。すでに遠征二回分くらいのイメージはできているので、あとはいつ行くかだなぁ。

長~いブログを、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。