『キクさん、おいくつでしたっけ?』



『私?19歳よ』



『私より年下だったんですね。
ここに住んでどれくらいなんですか?』



『ここには住んでないわよ。
私の家は小平だからね。』



昭和6年生まれの彼女に出会って3年目。



何度会っても



『初めまして』



たまに排便で大変な事になっている時もあるけど



彼女はとても明るく、可愛らしく、優しい。



築40年位の彼女の家は、私の癒しの空間です。



今日もデイサービスから、帰宅のお迎えで訪問しました。



『初めまして、キクさん』



そう言うと彼女が



『あら、なに言ってるのよ。
あなたこの間来たじゃない。』



3年目にして、初めて私の事を覚えてくれていたみたいでした。



こんなに嬉しい日があるから、やめられない仕事です。



明日行ったら


もしかして私の事をまた忘れてしまっているかもしれません。



でも良いじゃないかそんな事。



たまに訪れる嬉しい一時の為に、私は日々を過ごしているのだと思います。



だから続けて行けるのだと思います。




明日もいつものように



『キクさん、初めましてこんにちは』