居合道の形はある特定の状況における対処の方法を示したものである。
その状況に対応するための先人の知恵が詰め込まれて一つの形となっている。それは単に人の動きだけのものではない。周囲の状況さえも考えて作られているのである。
このような知恵や知識は上級の技になるにつれて増えていく。刀を大きく振ることができない場所での刀の振り方や、敵が複数いる場合にどう対処するかといったこと、さらには暗闇での対処法など限られた型の中で多くの事が示されている。また、不安定な状況で効率的に力を伝える方法や、刀を効率的に抜く方法なども伝わっている。
それらの考えが同じ流派の中でも人によって違う事が伝わっている。同じ流派の同じ技も伝わった系統によって変化が出てくる。おそらくそれらはどれもが正しく江戸時代にはそのようなことを全て考慮した上で形が作られ、継承されてきたのだろう。だから、どれが正しいというのではなく、それぞれがそれぞれに正しいのだと思う。
このような事を考えて作られた形はすごいものだと思う。現代日本の我々がこのようなものを考え出すことはできないだろう。真剣を持ち、常に戦いを意識していた時代の人だからこそできたものだろう。そこには伝えられてきた知恵や知識があらゆる形で込められている。形として表されているものから、形とともに口伝で伝えられたものまで全てに意味があるのである。
先人の深く広い試行錯誤の末に今日の武道が形作られているのである。