実家の母、

八人兄弟の長女。

 

弟妹の面倒をみて

苦労してきたけど

時代が時代だし

貧しさや不自由さについて

そんなもんだろうなあ、と

飄々としたところある。

 

ただ中学生の頃

部活(まさかの演劇部)に

入りたかったのに

親からそれは無理、

帰って来てすぐに手伝ってもらわないと、と

叶わなかったことは

心残りだったようで

そのことを思い出した後は

しばらくぼやいておりました。

 

 

 

結婚してから

面倒をみる相手が父だけで

いきなり楽になったのでは。

 

とはいうものの、

その後四姉妹が順次誕生。

 

わたしが幼稚園の頃に

今の実家に引っ越して来た時は

まだ開発途中のニュータウンだったから

スーパーは

坂をくだってけっこう遠く。

 

 

買い物に行くのも

カート引いて

子供達連れて歩かせて

ぞろぞろと

ご一行様状態だけれども

母としては遠足気分で

たまには遠回りして

よそのおうちの植木を見たり

それなりに楽しんでいたそう。

 

 

そんなある日

いつものように

母が一番下の妹を

おぶって

あとの三人を歩かせていると、

すーーーっ、と

タクシーが止まったそう。

 

ウインドウがするするするっと下がって

母は

道でも聞かれるのかな、と思ったら

 

「奥さん、

区役所に行けば

生活保護っていうものがあるから、

申請したら楽になりますよ。

 

隣の駅だから

今度行って相談してごらんなさい」と

話しかけられたそう。

 

 

母は

「よっぽど

くたびれて見えたのかしらね。

お恥ずかしいわ」と

そのことにコメント。

 

 

親切な運転手さんだなあ。

 

見るに見かねたんでしょうね。

 

これ、父に話さなかったみたいだけど

聞いたらびっくりしただろうし

がっくりしそう。